成功者をターゲットとした上質な車内
執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
【画像】1970年代のライバル ローバーP6 3500Sとトライアンフ2.5 PI 全46枚
撮影:Luc Lacey(リュク・レーシー)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ライバル関係にあったトライアンフ2.5 PIのフェイスリフトを受け、ローバーも1970年にP6をリフレッシュ。スマートなメーターパネルと新しいテールライトを採用し、シリーズ2を発表する。
ボンネットのパワーバルジは、V8エンジン搭載車に限らずP6共通で与えられた。エアインテークも新しくなっている。ただ、基本的なスタイリングに変更はない。
さらに1971年、P6では定番となっていたボルグワーナー社製の3速ATに加え、4速MTが追加。3500Sの仕様では0-97km/h加速を約9秒でこなし、燃費も改善させている。
本来4気筒エンジンで始まった大型サルーンは高いパフォーマンスを獲得し、大きな反響を呼ぶが、トランスミッションは信頼性に欠けていた。そのおかげで、P6 3500の残存台数は非常に少ない。
今回ご協力願ったのは、ピーター・リーブ氏がオーナーの3500S。ベージュの見た目は大人しく、フロントに貼られたV8というエンブレムも、観察しなければ気付きにくいかもしれない。
しかし、重々しいドアを開き車内へ身体を滑らせると、3500のラグジュアリーな「S」であることが理解できる。当時のこのクラスとして、仕上がりは上級と呼べるものだ。
3500Sも2.5 PIも、戦後の英国での成功者をターゲットとしていた。インテリアの設えは、エンジンのパフォーマンスと同じくらい重要な要素だった。フォードや英国オペルのヴォグゾールより高水準で仕立ててある。
現代的で広々とした車内のトライアンフ
3500Sは、1974年式。ショールームに飾られていた時を彷彿とさせるほど、見事にレストアしてある。彫刻的なシートは、オプションのクロス張り。小物やスイッチ類に至るまで美しい。
磨き込まれたステアリングホイールに、ダークウッドのパネルと毛足の長いカーペット。ブラウンが印象的な車内は、全長4566mmあるだけに広々としていて居心地も良い。
半透明のプラスティックで造形されたグリーンのエアコン用スイッチなど、個性的なディテールにも興味が引かれる。眺めるほど、細部まで丁寧にデザインが施されていることに気付く。
他方、1972年製の真っ赤なトライアンフ2.5 PIを持ち込んでくれたのは、オーナーのルイジ・マイオ氏。シートはナイロン生地で仕立てられ、リアのベンチシートは広大。ダッシュボードやドアパネルには、ウッドパネルが贅沢に用いられている。
ダッシュボードの見やすいレイアウトや、グローブボックス下の荷物台など、ローバーP6よりやや現代的な雰囲気がある。ホイールベースは2692mmあり、P6の2625mmより長い。トレッドもワイドで、リアの足もと空間は70mmほど広い。
車内は巧妙にレイアウトされ、大きく四角いグラスエリアからの視界も良好。実際以上にゆとりを感じる。一方で、組み立て品質はローバーの方が高い。ウインカーレバーや三角窓の構造なども、ローバーの方が印象に優れる。
3.5L V8エンジンが生む余裕
車内の細かな部分に目がいってしまうが、トライアンフの直列6気筒エンジンのたくましさを引き出せば、そんなことは忘れられる。2000と2.5 PIとの違いが明確になる。
最高出力は、トライアンフTR6との部品共有を理由に、1972年に134psから125psへ引き下げられた。だが、しなやかなリアのサスペンション・スプリングを圧縮し、フロントノーズを持ち上げる勢いで2.5 PIは加速する。
オーバードライブ付き4速MTは、操るのが楽しい。レバーのストロークが長いのも、個性の1つだ。このクルマにはクリス・ウィター社製のスポーツエグゾーストが付き、回転数が高まるほどにサウンドがドライバーの心にも響いてくる。
ローバーP6の方は、より堂々とした印象。エンジンのお目覚めも静か。3.5LのV型8気筒らしい音響を楽しめるようになるのは、シフトダウンしてアクセルペダルを踏み込んだ時だけだ。
評判が良いとはいえなかった4速MTだが、リーブのクルマの場合は滑らかにシフトレバーを動かせ、ゲートへの入りも良い。社外品のサーボが付けられ、軽いクラッチペダルが印象を高めている。
トライアンフ2.5 PIより車重は40kgも重いが、P6 3500Sに積まれる3.5LのV8エンジンは余裕綽々。2速で80km/h位までの加速力は、ライバルより明らかに鋭い。
ファイナルレシオもショートながら、最高速度は201km/hとローバーの方が30km/h近く高い。太い低速トルクのおかげで、市街地でも扱いやすい。
過去1番のライバル関係にあったサルーン
これまでのトライアンフとローバーで、1番のライバル関係にあったのが、P6と2000だ。中間管理職の心を掴むべく、直接的な対決がサルーンを通じて繰り広げられた。1970年代後半に入り3500Sと2.5 PIへ進化しても、その競い合いは続いた。
動力性能や車内の豪華さはほぼ同等。信頼性に欠いたローバーのMTと、整備士の手を焼いたトライアンフの燃料インジェクションという、お互いに至らない部分もある。だが、それぞれが持つ魅力は否定できない。
スコットランドのシングルモルトとバーボンのブレンド・ウイスキーのように、それぞれの香りと味わいで、素晴らしい時間を楽しめるとでもいえようか。楽しみすぎて、頭痛を誘う時があるかもしれないけれど。
ローバーとトライアンフ 2台のスペック
ローバーP6 3500S(1971~1976年/英国仕様)のスペック
英国価格:1976ポンド(新車時)/2万ポンド(304万円)以下(現在)
生産台数:2715台
全長:4566mm
全幅:1676mm
全高:1422mm
最高速度:201km/h
0-97km/h加速:9.1秒
燃費:7.4km/L
CO2排出量:−
車両重量:1295kg
パワートレイン:V型8気筒3528cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:152ps/5000rpm
最大トルク:27.7kg-m/2750rpm
ギアボックス:4速マニュアル
トライアンフ2.5 PI Mk2(1969~1975年/英国仕様)のスペック
英国価格:1595ポンド(新車時)/1万5000ポンド(228万円)以下(現在)
生産台数:4万9742台
全長:4632mm
全幅:1651mm
全高:1422mm
最高速度:172km/h
0-97km/h加速:11.5秒
燃費:7.7km/L
CO2排出量:−
車両重量:1255kg
パワートレイン:直列6気筒2498cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:125ps/5500rpm
最大トルク:21.1kg-m/2000rpm
ギアボックス:4速マニュアル
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