11月2日に行われたWEC世界耐久選手権第8戦バーレーン8時間レースでは、トヨタGAZOO Racing8号車GR010ハイブリッドのセバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮組が優勝。これによりトヨタはコストラクターズ・タイトルを防衛した。
一方、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車ポルシェ963のケビン・エストーレ/アンドレ・ロッテラー/ローレンス・ファントールは、ドライバーズ・タイトルを獲得した。
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決勝後のバーレーン・インターナショナル・サーキットのパドックから、各種トピックスをお届けする。
■「厳しい一年に、努力を重ねた結果」と一貴副会長
最終戦でブエミ/ハートレー/平川の8号車クルーが勝利したトヨタは、このサーキットでの8連勝を記録。同時に2018/19年の『スーパーシーズン』から続く、ハイパーカー/LMP1のマニュファクチャラーおよびチームのタイトル獲得記録を伸ばした。
姉妹車の7号車トヨタGR010ハイブリッドが燃料ポンプの重大な問題に見舞われた後にトヨタが逆転勝利を収めたことについて、トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ副会長の中嶋一貴は、Sportscar365に対して次のように語った。
「満足感と安堵感が入り混じった気持ちです。最終的には戦略のおかげでペースを保つことができました」
「8号車の戦略は、レースのかなり終盤までうまくいかないようでした。最後のセーフティカーは我々にとって非常に良いもので、戦略をうまく機能させたと言わざるを得ません。運は良かったですがが、シーズンを通して浮き沈みが多くありました。今年は厳しい時期が多かったですが、チームとして戦い続け、努力を重ねた結果、最終的に幸運がもたらされたのかもしれません」
一貴副会長はまた、スーパーGTとスーパーフォーミュラでの元チームメイトであるロッテラーを含む6号車がドライバーズタイトルを獲得したポルシェにも敬意を表した。
「今年のチャンピオンシップは我々にとって非常に厳しいものでしたが、それが我々を強くしてくれたと思います。だから、ライバルたちには本当に感謝しています。6号車、とくにアンドレに心からの祝福を伝えたいですね。彼の勝利を嬉しく思います!」
■26勝目を達成したブエミ
ブエミはWEC通算26勝目、ハートレーは23勝目を記録しマイク・コンウェイを抜いて歴代優勝者リストで2位となった。平川は、初めて同一サーキットでの2勝目となる6勝目を挙げた。
また、これにより8号車のクルーは最終的なドライバーズランキングで7位から4位に躍進。最終的に109ポイントを獲得し、姉妹車7号車トヨタの小林可夢偉とニック・デ・フリースにわずか4ポイント差となった。
■フェラーリ296 GT3が見せた終盤戦の猛チャージ
LMGT3では、姉妹車54号車のクルーの富士での勝利に続き、アレッシオ・ロベラ/フランソワ・エリオー/サイモン・マンの55号車フェラーリ296 GT3が優勝を飾った。この2台は、それ以前のレースでは表彰台にさえ登壇できていなかった。
ロベラのクラス優勝は通算5度目であり、2023年スパでのGTEアマでの勝利以来のものとなった。一方、エリオーとマンはWEC初優勝を遂げている。これにより55号車のクルーは、2台のマンタイ・ポルシェ911 GT3 Rに次ぐ、LMGT3ランキング3位でシーズンを終えることとなった。
ロベラは、バーレーンおよびシーズン全体で、ダブルスティントでの最速アベレージをマークしたドライバーに贈られる『グッドイヤー・ウィングフット・アワード』も受賞している。このイタリア人ドライバーは、最終ランキングで最も近いライバルであるチームWRTのアウグスト・ファーフスを17ポイント上回った。
■初のベルギー人王者が誕生
6号車ポルシェのエストーレ/ロッテラー/ファントールは、51号車のフェラーリのペナルティにより、最終的に10位で2ポイントを獲得した。これにより、6号車のクルーと50号車のフェラーリのアントニオ・フォコ/ミゲル・モリーナ/ニクラス・ニールセンとの最終的なポイント差は37となった。
ロッテラーはアウディで初めてドライバーズタイトルを獲得してから12年を経て、2度目のWECドライバーズタイトルを獲得。ハートレーに続き、ふたつの異なるメーカーでタイトルを獲得したふたり目のドライバーとなった。
また、エストーレは2018/19シーズンにGTEプロクラスを制しており、ふたつの異なるクラスでタイトルを獲得した初のポルシェドライバーとなった。
ファントールは最高峰クラスのタイトルを果たした初のベルギー人とった。全クラスで見ると、2013年のLMP2チャンピオンで現在はスーパーGTに参戦するベルトラン・バゲットに続く、ふたり目のベルギー人チャンピオンとなった。
■バーレーンでは“完敗”のポルシェ
ポルシェ・ペンスキーのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドは、レース後半の2度のセーフティカー・ピリオドで順位が入れ替わるまで、5号車が優勝の好位置に見えたため、チームを「一日中素晴らしい仕事をした」と称賛するとともに、ファントールの困難なオープニングスティントから立ち直ってタイトルを獲得した6号車のクルーを称賛した。
「かなり慌ただしいスタートだった。ただぶつからないようにしていた。(6号車は)最初のラップを終えて、16番手だったと思う。バーチャル・セーフティカーが出る前に、コントロールできる位置にまで持っていけたのは、最終的には素晴らしい偉業だったと思う」
「我々にはトヨタ、そして最終的には(最終ラップで5号車のマット・キャンベルを追い抜いた)51号車フェラーリと戦うだけのペースはなかったのだ」
5号車が最後のピットストップで4本ではなく3本の新品タイヤしか与えられず、キャンベルがブエミの攻撃に対して脆弱になった理由について、ディウグイドは次のように付け加えた。
「もっとたくさん(タイヤは)残っていたのだが、そのうちの1本は酷使されていたので、使いたくなかった。数周の間、彼らは1周ごとに3秒ずつ追い上げてきた。戦う状況ではなかったのだ。他に何かできることはなかったと思う」
ディウグイドはまた、6号車のクルーがシーズン最終戦で苦戦したことにも失望を表明しなかった。
「今日は全力を尽くして臨んだ。結局、(上位で戦うためには)充分ではなかった。誇れることはたくさんある。うつむいたり、悲しんだりすることはない。最後の10%を逃したかもしれないが、それ以外は90%成功したのだ。素晴らしい1年だった」
■アルピーヌが『ベスト・オブ・ザ・レスト』に
フェラーリの耐久レースカー部門責任者フェルディナンド・カニッツォは、ドライバーズタイトルを争う50号車がモリーナの最初のダブルスティント中の序盤に接触して過度のデグラデーションを引き起こしたが、永続的な損傷には至らなかったと説明した。
「接触で何かが損傷したようだ。ダウンフォースが減ったため、タイヤに過度のストレスがかかった。タイヤは最初のスティントで大きなデグラデーションに見舞われ、2番目のスティントは明らかにその影響を受けた。ノーズを交換したが、タイヤにダメージがあった。タイヤを交換するとペースが戻った」
フェラーリ50号車がフィニッシュ時に11位となった事故について、彼は次のように付け加えた。「アルピーヌの(シャルル・)ミレッシがスナップしてパンクしたため、彼らは不運だった。当時のペースを考えると、3位になれたかもしれないものを失った」。
一方ミレッシは、50号車フェラーリとの接触を避ける方法はなかったと考えている。
「フェラーリを追い抜こうとしたとき、突然リヤがロックした」と、彼はSportscar365に語った。
「ブレーキが原因か、エンジンの何かが原因かは分からないが、完全にスピンしてしまった。理解するのは難しいが、ブレーキを極端に遅らせたわけではない。リヤに奇妙な現象が起こり、そこからフロントにダメージが入った」
この挫折にもかかわらず、アルピーヌはBMWとの戦いに勝利し、ポール・ループ・シャタン/フェルディナンド・ハプスブルク/ジュール・グーノンが35号車で4位を獲得したことで、マニュファクチャラーズ・ランキングで非公式の『ベスト・オブ・ザ・レスト』(トヨタ、ポルシェ、フェラーリを除く最上位)の栄誉を獲得した。
奇妙なことに、今年初めに怪我で2レースを欠場したにもかかわらず、ハプスブルクは最終ランキングで43ポイントを獲得し、アルピーヌの最高得点ドライバーとなった。バーレーンの最終戦で35号車から36号車に移ったミレッシは30ポイントを獲得し、グーノンにさらなる経験を積ませるために富士ラウンドで出場を辞退したシャタンは29ポイントを手にしている。
■テストに向けてエンジン交換
BMW Mモータースポーツのディレクター、アンドレアス・ルースは、エンジンの致命的なトラブルにより、20号車BMW Mハイブリッド V8がリタイアしたと明かした。
その後チームはエンジン交換を完了し、レース終了前に暖機運転を行い、日曜日のルーキーテストに向けてマシンを準備した。
■「とてもポジティブ」な今回初表彰台
フェラーリのペナルティにより、3位の座はプジョー9X8へと転がり込んだ。プジョーにとっては2024年初の表彰台、そして昨年のモンツァラウンド以来の表彰台となったが、マニュファクチャラー・ランキングでBMWを追い抜いて5位に浮上するには至らなかった。
プジョー・スポールのテクニカルディレクター、オリビエ・ジャンソニーは、ハイブリッドシステムトラブルにより94号車がリタイアしたと明かした。
「彼らのペースは非常に速く、ある時点では93号車よりも速かったので残念だ。それがなければもっと良い結果が期待できただろう。しかし、14番手と18番手からスタートしたことを考えれば、とてもポジティブなことだった」
93号車プジョーが表彰台に上がったことで、シーズンを戦い抜いた8つのハイパーカーメーカーのうち、トップ3フィニッシュを達成できなかったのはキャデラックとランボルギーニの2社だけとなった。ランボルギーニSC63の有望な走りは、最後の1時間で水圧の問題により終わりを迎えていた。
また、アレックス・リンは、2号車のキャデラックVシリーズ.Rのハンドルを握ったのは1スティントのみだったため、レースでポイントを獲得したとは認められなかった。彼はチェッカーフラッグまでマシンを走らせる予定だったが、レース終盤のセーフティカー2台が出た後、チームはタイヤの割り当てと燃料補給のタイミングを考慮し、それを断念したと語った。
■プロトン、受難の一日
プロトン・コンペティションのニール・ジャニは、チームがペナルティでラップをロスし、好成績のチャンスがまたもや消えたことをただ嘆いた。ペナルティは、ジュリアン・アンドラウアーがダブルイエローで追い越したことと、ハリー・ティンクネルがアコーディスASPの87号車レクサスRC F GT3と接触したことによるものだった。
「今年最後のレースは、基本的に今年と同じだった。たくさんの『タラ・レバ』が、結局はうまくいかなかった」と予選で4番手につけたジャニは語っている。
最終的に12位でフィニッシュしたため、99号車のクルーはFIAハイパーカー・ワールドカップで4位と最下位に終わった。また、プロトンではフォード・マスタングGT3が2台ともメカニカルトラブルでリタイアしたため、チームにとって忘れたい1日となってしまった。
アコーディスASPでも、2台のレクサスがダブルリタイアを喫した。78号車はアーノルド・ロバンが運転中にリヤサスペンションの問題で早々に脱落し、姉妹車の87号車はスロットルの問題で脱落した。
■火曜日にはタイヤテストも
日曜日に行われたルーキーテスト、そして夜に行われた年間表彰式をもってWECパドックの大半のシーズンが終了となったが、ハイパーカーチームの多くは火曜日に行われるミシュランのテストで2026年型プロトタイプ・タイヤを試すため、サーキットに残った。
これは、フランスのメーカーが当初2025年に予定されていた新プロダクトの導入を延期することを決定したことを受けてのことだ。
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2025年のWECは2月、カタールのルサイル・インターナショナル・サーキットでの公式テストとそれに続く1812kmレースで開幕を迎える予定だ。
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