英国編集部が選ぶ至高の「M」
AUTOCARは、英国編集部のスタッフ(記者、編集者)たちに、BMW Mモデルの中で最も優れたものは何かと尋ねた。
【画像】選ぶならどれ?至高のBMW Mモデル【E46 M3や3.0 CSL、Z3 Mクーペなどを写真でじっくり見る】 全84枚
数時間の無駄な時間と、ちょっとした言い争い、生産性のない作業を経て、彼らが出した答えは以下の通り。
ジェームス・ディスデイル:BMW M5(E34)
E28の後継モデルであるE39が「最高のM5」として賞賛される一方で、E34は見過ごされがちだ。しかし、わたしにとっては、これまでで最も素晴らしいMモデルの1つである。
小さなフロントスポイラーとタービンホイールで強調された鮮明なボディライン。そのエレガンスには、最高出力319psの3.5L 直6という大きな筋肉が隠されている。後期型では345psの3.8Lエンジンと6速MTにより、さらに高速化された。ハンドリングは今日の基準からすると鈍く、シャシーはやや柔らかめだが、美しいバランスを保っており、ストレスを感じることはない。
タフに造られているが、現存する車両では錆が問題となるため、夕食のおかずにできるくらいの綺麗な個体を探す必要がある。E30 M3よりも安くE34 M5が手に入るのだから、エンターテイナーとしてだけでなく、日常の足としても満足できるはずだ。
アンドリュー・フランケル:BMW M3(E46)
候補が多すぎて困るが、ひとまずSUVは無視してもいいだろう。純粋なエンスージアストはクーペとセダンに注目するだろうし、よほど勇気のある人でない限りV10搭載車は敬遠すると思う。
Mモデルから得られる最良の教訓は、「過ぎたるは及ばざるがごとし」である。このようなクルマは、ハイパワーのオーバーウェイト車よりも安く、軽く、運転しやすいのだ。
今はどの中古車もとんでもなく高いが、5年落ちのBMW M2が2万7000ポンド(約440万円)というのは魅力的だし、E90世代のM3なら、2万ポンド(約320万円)もあれば素晴らしい自然吸気V8と肝心のMTを完備した個体を手に入れることができるだろう。
しかし、もし傑出した中古のMモデルがあるとすれば、それは2000年から2006年にかけて製造されたE46 M3に違いない。情熱的な直6を動力源とし、驚異のシャシーバランスを誇る、コストパフォーマンスとドライビングプレジャーを実現した、現時点で世界最高のMモデルだ。
長い目で見れば、少し高くても走行距離の少ない後期型のクーペを手に入れる方が安上がりかもしれない。SMGのトランスミッションは避けよう。
マイク・ダフ:BMW M3(E90)
Mモデルの中古車相場に期待しすぎると損をすることが多いが、2007年のM3が上昇気流に乗っていることは明らかだ。それは、超レアなE46 M3 GTRを除いて、唯一のV8エンジン搭載M3であるという事実が後押ししているのである。
このエンジンは、E60 M5の5.0L V10と密接な関係があり、同じリニアなレスポンスと回転を愛する、機械として驚異的なものだ。ピークパワーは8300rpmで発生する。
ロッドベアリングが空回りするなどの弱点もあるが、修理や部品供給のインフラが充実しており、積極的に交換するオーナーが多いようだ。
E60 M5が不機嫌でギクシャクしたAMTに悩まされるが、M3にはもっとスムーズでスマートなDCTが用意されている。このクルマに非常にマッチしたトランスミッションで、発売当時は多くの人がDCTを選んだが、6速MTはその希少性から現在では割高になっている。
ランニングコストは高いが、ドライビング・エクスペリエンスは十分に熟成されている。10km/l弱という燃費も、非常に良い数値と見なすことができるだろう。
E92クーペやE93クーペカブリオレなど、車種も豊富。E90セダンは希少かつ高価だが、わたしの個人的な考えでは最も見栄えのするものである。まともなトランスミッションを搭載したベイビーM5と考えてほしい。
リチャード・レーン:BMW 3.0 CSL(E9)
1973年の「バットモービル」は誰もが知っているが、その前のキャブレター仕様の3.0 CSLはあまり知られていない。わたしが思うにこの初期のCSLは、おそらくBMWロードレーサーの最も純粋な表現であり、燃料噴射装置とともに巨大なウィングとバンパーを追加して滑稽なほどハイレベルの存在となったバットモービルよりも、エレガントに感じられる。
キャブのCSLは、軽量化に重点を置いた、整然としたモデルであった。ドア、トランク、ボンネットはすべてアルミ製で、ウイングとルーフの鋼材は、ドナー車両であるCSよりも薄いもの。フロントバンパーはなく、リアサイドウインドウはアクリル製で、その他は薄いラミネート製である。
遮音材はほとんど使われず、トランクやボンネットのロックもラッチ式に変更された。さらにパワーステアリングもなく、直6とリミテッド・スリップ・デフが働く間はバケットシートが体を固定してくれるだけという最小限の仕上げ。こうして、実に約180kgの軽量化が図られたのだ(新型M4 CSLの約2倍)。
英国では、BMWの販売代理店が好んだ高級感が薄れたため正式には販売されず、わずか169台しか輸入されていない。
フェリックス・ペイジ:BMW M5(E39)
究極のMモデルを選ぶのは簡単だ。自分が思う最高のBMWを選び、リアエンドに「M」のバッジをつければいいのだから。
僕の場合は、E39型M5である。なぜなら、史上最高のハンサムボディと完璧なバランスを誇るセダンに、400psのV8エンジンを載せれば、偉大な存在以外の何ものでもないからだ。
僕の同僚であるマット・サンダースは、「そのシンプルさ、汎用性、メカの信頼性、そしてアナログの魅力の深さにおいて、現代の先達とは異なる。しかし、その小粋なドアミラーを置いていってしまうほどの速度で道路に飛び出す能力においては、全く変わらない」という最高の賛辞を送っている。
絶大な火力とドライビングの魅力を隠す繊細さとプロ意識こそが、時代を感じさせる要素であり、現代の文脈において無類のカルト的地位を与えているのである。
近年、BMW Mモデルは控えめな親しみやすさを失いつつあり(ほぼすべての点で大幅な進歩を遂げているとはいえ)、そのため比較的地味な旧型の方が洗練された選択肢に見えている。
マット・プライヤー:BMWターボ(E25)
これはMモデルなのか、それともニセモノなのだろうか?いやいや、これは背中にMのバッジを付けた、れっきとしたMモデルである。BMWが初めて世に送り出したMモデル「M1」のコンセプトカー、「ターボ」だ。
M1が発売されたのは1978年で、コンセプトのターボが公開されたのが1972年。つまり、M部門(BMWモータースポーツ社)の設立とともに生まれたクルマなのだ。ここからすべてが始まった。ということで、僕の一番のお気に入りである。
子供の頃に読んだスチュアート・ブラドン(元AUTOCARスタッフ)の本の表紙がM1だったが、僕の膝を震わせたのは、中に描かれたターボだった。グラデーションのかかったペイントはこれ以上ないほど70年代的で、クロームメッキのホイールやガルウィングドアなどは乗用車というよりパンサーモービル(ピンクパンサーの乗り物)に近かった。
M1のような直6ではなく4気筒ターボを搭載し、レースシリーズを生み出すこともなく、たった2台しか製造されなかった。そのどちらもショーカーだったことを考えると、おそらくハンドリングを重視して作られたものでもないのだろう。でも、10歳のときの僕はこのクルマが欲しくて仕方がなかったし、Mであろうとなかろうと、僕にとっては今でも夢のBMWなのだ。
マット・サンダース:BMW Z3 Mクーペ(E36/8)
Z3 Mクーペは見た目がいいとは言えないし、1998年に登場したときはハンドリングを絶賛されたわけでもない。しかし、当時10代の僕にはE39 M5やE46 M3を所有するなんて想像もつかなかったが、小さなE36/8には、手を伸ばせば届きそうな何かがあるように思えた。
その秘密めいた感じが魅力を引き立たせたのだろう。しかし、実際にこのクルマを見れば、エンジニアが既製品のパーツをいじくりまわして作ったものであることがわかる。プロポーションもちょっとおかしい。だが、走らせてみると、不思議とまとまりがあるように感じられるのだ。醜いけれど、愛おしい。BMWが誇るMエンジンを搭載し、全長4mの乗用車としては常識の範囲をはるかに超えたパワーを発揮する。
安価で売られることはほとんどないけれど、今でも僕の目には魅力的に映る。
イリヤ・バプラート:BMW M 535i(E12)
現代のMモデルはどれも印象的で、ときには恐ろしく感じられることもある。しかし、M部門の輝かしい歴史から1つを選ぶとしたら、わたしは初心に帰るだろう。M1ではない。M1が最初とはいえ、その後のMモデルの礎を築いたわけではないからだ。
わたしが「M」と聞いて連想するのは、外見的には抑制が効いていて、パンチの効いたハンドリングを持ったクルマ。BMW 5シリーズをベースとしたM 553iである。
モータースポーツ社のオリジナルエンジンは使用されていないが、他のほとんどの点で、Mモデルのレシピが確立されている。当時の評論家はこのクルマを「滅茶苦茶に速い」と表現し(実際、M 635 CSiよりも速かった)、ハンドリングはまったく信頼に値するものであると評している。
比較的低いグリップ、癖のあるマニュアル・トランスミッションと自然吸気の直6は、21世紀のグリップ&パワーモンスターに対する完璧な「解毒剤」となるだろう。
スタイリングもまた、重要なものだ。ポール・ブラックが手がけたE12のデザインは、1990年代までのほぼすべてのBMWに影響を与えた。ボクシーだが完全なるプロポーションを持ち、4灯の丸型ヘッドライトと前傾した「シャークノーズ」グリルが特徴的である。Mモデルでは、わずかではあるが明白な改良が加えられ、意識の高いスタンスになっている。
ピアス・ワード:BMW 1シリーズM(E82)
1シリーズ・クーペは、わたしにとっての最高のMモデルだ。往年のAUTOCAR編集者クリス・ハリスとスティーブ・サトクリフがE46 M3について書いた記事(ESPをオフにするために「ウィンストン」を吸った、という忘れられない一節がある)を貪るように読んで育ったわたしだが、どれか1つ選べと言われれば、迷うことなく1Mを挙げる。
人気のあるMモデルは他にもあるし、本稿でもたくさん紹介されている。もっと価値の高いものもたくさんある。しかし、わたしが1Mをここに紹介したのは、経済的にも運転面でも比較的手が届きやすいからだ。
最高出力340psのツインターボ直列6気筒、電子制御メカニカルロック式LSD、そして2つの駆動輪。以上。シンプルなエンジニアリングのクルマであり、わたしから見れば、これぞBMWの頂点である。今や、重くて複雑なドライブトレインやサスペンション調整用のボタンなど、BMW(その他多くのメーカー)は自縄自縛に陥っている。
もっと純粋なドライビング・エクスペリエンスを持つクルマもあるが、1Mのペースと落ち着き、そして毎日の移動手段としての使い勝手の良さは、ライバルに真似できるものではないだろう。だから、今こそ欲しいクルマである。ライフスタイルを変えることなく、移動がより良いものになる。それが、わたしの考える夢のクルマだ。
スティーブ・クロプリー:BMW M3 CSL(E46)
わたしがE46 M3 CSLを分類するなら、「ラディカル・オールラウンダー」となる。25年前、電動化によってガソリン車の進むべき方向が狂い始める前に、のんきに考え出されたこのクルマは、ICE車の頂点に立っている。でも、手に負えないほど特別なものではない。
BMWのレース狂のエンジニアが苦労して110kgも軽量化したM3 CSLは、その後に登場したどのクルマよりも小さく、すっきりしていて、低い。車両重量は1400kgを下回っているにも関わらず、ボンネットの下には、それまでドライバーズカー・メーカーとしてのBMWの名声を支えてきた直列6気筒エンジンが搭載されている(最高出力355ps)。
M3 CSLに乗ると、ドライビングのために慎重に構成されたクルマであることが実感できる。コントロールウェイトは肉厚だが美しくマッチしており、レスポンスは迅速かつ正確で、硬めのサスペンションも十分に減衰し、たくさん使うクルマとして才能を発揮する。
希少性の高さゆえに、たとえハンドルを握ることが多くても、その価値は決して消えない。もし自分が所有するとしたら、ずっと乗り続けるだろうと思っている。
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みんなのコメント
程度の良い個体に出会えたらそれは運命とは思って買うべきだと思います。
ゴテゴテした加飾も無く、それでいて只者ではない感が滲む佇まい。最近のBMWはどうした?と言わんばかり。
迷走状態のBMWがいつか辿り着く原点回帰。それがE46のM3。
雰囲気と速さの両立ならE39
濃厚なBMW Mを味わうならE34
自分なら、E34型とします。あの顔とリア周り、横から見たザ・セダンの形と運転席を向いたセンターコンソールが好きですね。