現在も完全開通を目指して建設中の新東名だが、未開通部分の完成はかなりの難工事となっており、今年度に開通予定の個所があるものの、それ以外はめどが立っていない。
とはいえ現時点で御殿場インターより西方向は開通の効果でかなり渋滞が緩和されている。今回は清水草一氏で現時点の新東名および東名高速の問題点を分析してもらった。
文/清水草一
写真/清水草一、ベストカー編集部
[gallink]
■高速道路インフラの老朽化問題
高速道路インフラの老朽化が深刻である
高速道路インフラの老朽化が深刻だ。完成から半世紀以上経つ区間に関しては、当然といえば当然である。
これがマンションなら、取り壊して建て替えということになるわけだが、高速道路の重要路線は、常に稼働させる必要があり、交通を確保したまま修繕工事を行わなければならないから大変だ。
東京と名古屋を結ぶ東名高速道路が全線開通したのは、1969年。ちょうど半世紀を超えたところだ。管理するNEXCO中日本は、「東名リニューアル」を謳い、老朽化対策工事を進めている。
今年の9月6日から12月24日までは、大井松田IC―清水JCT間で、車線規制を伴うリニューアル工事が行われた。
このうち、新東名が開通済みの御殿場JCT以西は、新東名に迂回することができるので、渋滞発生などの問題は少ないが、新東名が未開通の御殿場JCTより東京寄りは、車線規制を行えば、渋滞の発生は避けられない。
東名下り線では、12月17日まで、大井松田IC-御殿場IC間右ルート(左右それぞれ2車線、計4車線のうち、右ルートの2車線)の閉鎖が実行された。その影響により、大井松田ICを先頭に、週末を中心として深刻な渋滞が発生した。
この区間(御殿場JCT―伊勢原JCT間)の新東名は、本来2020年度中に開通する予定だったが、用地取得の難航や埋蔵文化財の発掘調査、そして山間部の橋梁工事の難航のため、開通は「2023年度中」と3年間延期されている。予定通り開通していれば、左ルート閉鎖による影響はほとんどなかったはずだ。
■新東名開通による渋滞問題はどうなる?
建設中の新東名・河内川橋
工事現場を見てみると、たとえば山北町の河内川にかかる橋梁は、現在もまだ橋脚の建設中で、橋げたが姿を現していない。この状態で、約2年後(2024年3月まで)に本当に完成するのか? と不安になる。再度延期の可能性もあるだろう。
と言ってもこの区間、工事や事故による車線規制でもない限り、渋滞が発生することは少ないので、開通がさらに延期になっても、それほどの実害はない。逆に、日本一の渋滞ポイントである大和トンネル付近は、新東名の全線開通によって、さらに渋滞が悪化する懸念もある。
大和トンネル付近は、上下線ともに、サグ(くぼ地)効果による自然渋滞の発生ポイントとして名高いが、NEXCO中日本はその対策として、付加車線の建設を進めてきた。そのうち大和バス停よりも西寄りの区間(計画の半分程度)が、2021年7月に部分開通。これによって、上り線の渋滞は解消された。
大和トンネル付近の自然渋滞対策として、付加車線の建設を進めてきた。2021年7月に大和バス停よりも西寄りの区間が部分開通した
と言っても現実には、渋滞の先頭が4キロほど西の綾瀬スマートIC付近に移っただけで、相変わらず渋滞は続いている。大和トンネル付近では渋滞しなくなったので、以前に比べれば渋滞中の通過速度が向上するなどの効果はあったと思われるが、最近は新型コロナの鎮静化もあって交通量が増大し、週末に限らず、日常的に渋滞している。
この付加車線、大和トンネルの前後4~5キロに限って、片側3車線から4車線に拡幅するという設計で、最初から渋滞解消は無理ではないかとの疑念があったが、フタを開けたらその通りだった。
綾瀬スマートIC先頭の渋滞
実際、この付近の付加車線の設計は不可解だ。上り線に関しては、海老名JCTから綾瀬スマートICまで付加車線アリ(合計4車線)だが、そこで付加車線が一旦途切れ、約1キロ先で再び付加車線が登場して4車線になるというデコボコ設計。私は以前から、「これでは渋滞の解消は不可能。海老名JCTから横浜町田ICまで、上下線ともに全線4車線にすべき」と主張していたが、それを実行しない限り、渋滞の解消はないだろう。
この状態で、新東名の御殿場JCT―伊勢原JCT間が開通すると、現在、交通集中期に山間部で発生している渋滞が解消するなど、伊勢原JCTより西寄りの交通はまったくスムーズになる。その分、上り線に関しては、すべての渋滞が綾瀬スマートIC先頭に集約されてしまう。
結果的に渋滞量は変わらないわけだが、伊勢原JCTから海老名JCTにかけては、圏央道や小田原厚木道路との分合流があるため、その合流抵抗で速度が大きく落ちる。新東名が伊勢原JCTまで開通すると、そのまま海老名南JCTまで直進も可能になり、そこから圏央道経由で海老名JCTから東名に合流する交通が増加して、渋滞に拍車をかけることになるだろう。
■完全開通はいつになるのだろうか
大和トンネルの拡幅が終わったことを表示した横断幕
一方下り線はというと、大和トンネルの拡幅は完成したが、サグ(くぼ地)はトンネルよりわずかに東寄りにあるため、現状、渋滞緩和効果はほとんどゼロである。
本来、付加車線は現在よりも約3キロ手前から始まる計画で、工事も進んでいるのだが、途中にある2か所の高架部の拡幅がまったく未着手で、設計すら決まっていない。その背後にどんな問題があるのか、「設計について地権者等と協議中」としか公表されていないが、とにかく完成のメドすら立っていない。
が、最近の下り線に関しては、大和トンネル付近を先頭にした渋滞よりも、横浜町田ICを先頭にした合流渋滞のほうが、深刻になっている。
原因は、2020年3月に開通した首都高横浜北西線だ。この横浜北西線、2020年度の平日平均交通量は3万3450台だったが、周知が進むにつれて交通量は増えており、コロナ明け後は顕著に増加。最近は1日あたり4万台を超えていると推測される(予定交通量は4万6900台/日)。
まだ未開通の部分では難易度の高い工事が行われている
横浜市中心部と東名とは、これまで保土ヶ谷バイパスを使うしかなかったが、そこに横浜北西線が加わったことで、保土ヶ谷バイパスの負担は軽くなり、交通量が微減して渋滞も緩和された。
その一方で、ルートが2本になったことで、東名下り線に合流できる交通量は増加した。下り線の場合、横浜青葉JCTで横浜北西線が合流して交通量が増えたところに、その先の横浜町田ICで保土ヶ谷バイパスから大量のクルマが合流してくるため、この合流を先頭に恒常的な渋滞が発生するようになったのだ。いいことしかないように思われるネットワークの充実だが、それによって新たな渋滞も生まれる。
これを緩和するためには、やはり東名の横浜町田IC-海老名JCT間を、全線片側4車線に拡幅するしかない。国交省は、大和トンネル付近のデコボコ付加車線では足りなかったことを認め、全面拡幅を決断していただきたい。なにしろ東名は、日本の物流の脊梁。海老名JCTより東寄りには、新東名の計画もないのだから。
工事が完成するのはいつなのだろうか……
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みんなのコメント
トラックが車列組んで80キロの追い越し合戦をやること考えると、開通しても3車線ある東名の方が流れが良さそうな気がします。
そもそも、現東名が2車線で足りずに苦肉の索のとして、新道まで作って3車線、右ルート左ルートの4車線化したのに、なぜ新東名を2車線にしてしまったのか
ましてや、キャパが足りないと3車線化の調査が入っていますが、開通すらしないうちからトンネルを掘り直して右ルート左ルート化の計画すら出始めています
右ルート左ルートに分けるのは結構苦肉の策ですが、それを開通前から計画が始まるのは前代未聞です
ただ・・・この2ルート方式、片方で事故あっても通行止めにならないのはありがたいですが