これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、伝説の日産パイクカーシリーズから、2ドアクーペモデルのフィガロを取り上げる。
こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】 癒しデザインの先駆車となったフィガロは今も人気沸騰中!
文/フォッケウルフ、写真/日産
■リバイバルしてほしいクルマナンバーワン!?
新しい技術を用いた自動車に触れると、しみじみと便利になったことを実感するが、こうした技術を採用しつつ、かつて人気を集めたクルマがリバイバルしたら……と、夢想するクルマ好きは少なくないはず。
たとえば、日産が市場に導入して話題を集めただけでなく、販売面でも成功した一連の「パイクカー」なんて格好の素材ではないだろうか。先進的な機能を搭載して、あらゆる能力が高められ、便利で安全になったものの、やや没個性化している昨今の新型車をみるたびに、パイクカーのようなクルマの誕生が許された時代をあらためて回顧してみようと思う。
日産がリリースしたパイクカーといえば、「Be-1(ビーワン)」に始まり、「PAO(パオ)」、「エスカルゴ」と、いずれも独自の個性を主張して人気を博した。そんなパイクカーのシリーズ4作目となったのが、2ドアパーソナルクーペとして登場したフィガロだ。
フィガロは「日常のなかのちょっとしたお酒落、優雅な気分を気軽に楽しめる個性的なパーソナルクーペ」をテーマに開発されたモデルで、快適で遊び心を満たす仕様・装備などにより、見て、触れて、運転して、そして所有することで充実した気分になるようなクルマとしている。
初めてお披露目されたのは、1989年に開催された第28回東京モーターショーである。それまでのパイクカーと同様に、マーチのシャシーコンポーネンツを流用していたが、ボディ全体をおおらかな曲面と自然なラインで構成し、適所にクロームメッキパーツをあしらった味のあるスタイルは、1950年代のクラシックカーを彷彿とさせるもので、見る者に大きなインパクトを与えた。
第28回東京モーターショーに出展された2年後の1991年に発売となる。写真はコンセプトモデルだが、内外装のデザインや作り込みは他のパイクカーと同じく、ほぼショー出展時の造形を踏襲していることがわかる
一見すると愛らしさ満点の2ドアクーペだが、フィガロのトピックはオープンエアの楽しさを気軽に味わえるというところ。ルーフの中央部分はキャンバス部分だけを手動で折り畳むことが可能で、ボディサイドを残してルーフからリアウインドウ部分までをオープンにできるという独特の構造を採用していた。
これによりボディデザインを損なわないうえに、走行中の風の巻き込みやノイズの侵入を抑えることができた。また、幌の上げ下げは操作性が考慮されているため女性でも開閉がスムースに行えるのも大きな特徴のひとつだ。
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みんなのコメント
フィガロを再販したら売れると思う。