共通する「走り」の中に狙いが異なる各メーカーの狙い
走りを意識したグレードのクルマに掲げられる事の多い「RS」。ここ最近だと昨年末に登場したホンダ・N-ONEにあるターボ&6MT(CVTもあり)モデルがそれだ。ところでこのRS、どういう意味なのか。それが冠されているグレードは「速そう」「走ってくれそう」なイメージがあるが……。そこで今回、かつて世に放たれたRSの名車たちを紹介しつつ、その2文字に込められた意味を各メーカーに聞いてみた。
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ホンダ・シビック
RSという名称を車名に与えたのは、ホンダの初代シビックが早かった。1972年にシビックは誕生し、その2年後にRSという車種追加が行われた。世界で最初に排出ガス規制を「CVCC(複合渦流調整燃焼方式)」で達成したのもシビックである。
ただそのエンジンの動力性能はアクセル操作に対し加減速とも遅れが生じ、排出ガス規制がどれほどエンジンに負担を強いるのかを当時実感させた。一方でホンダはそうした排出ガス規制を乗り越え、RSという車種で走りの壮快さを取り戻そうとした。
RSとは「ロード・セーリング」の意味である。セイリングは「帆走」という意味で船に使われる言葉だが、そこから受ける印象はいかにも爽快に進む様子がうかがえる。道を爽快に走るクルマ、それがシビックRSということだろう。
ただし実際のシビックRSはまだ初期の前輪駆動(FWD)車特有の操舵の癖を持ち、それゆえに簡単には御し難い性格だったが、瞬発力に優れる勢いのある車種であったことは間違いない。その後フィットRSやヴェゼルRS、また軽自動車のN-ONEにもRSがあり、活気ある車種の称号といえる。
日産R30スカイライン
日産スカイラインの6代目で、通称「R30」と呼ばれる時代に、新車発売から2か月遅れでRSが車種追加された。1981年(昭和56年)はそこから約10年前の排出ガス規制導入が昭和53年度規制によってひと段落したあとで、再びエンジン性能が高出力化をしはじめるころだった。
日産では79年にセドリック/グロリアにターボエンジンがすでに搭載され、スカイラインにもターボエンジン車があったが、4バルブのDOHCエンジン搭載というエンジン本体の機構を高度化した車種の復活は、このRSがはじまりとなる。
当時R30スカイラインが発売された直後、DOHCエンジン車が追加されるようだとの噂が広がり、GT-R復活ではないかと期待を膨らませる声があった。しかしFJ型と名付けられたDOHCエンジンは直列4気筒であり、かつてGC10やGC110時代の直列6気筒ではなく、RSとして登場したのだった。
最初は自然吸気の150psで現れ、その4カ月後にはターボチャージャーを装備した190ps仕様が加わり、さらに1年後にはインタークーラーを装備することで205psに。これら相次ぐ高性能化により、ファンの熱気は覚める間のないほどであった。
RSの意味は「レーシング・スポーツ」であるといい、95年から国内で開催されたグループAレースに参戦した。R31ではGTS-Rが、そしてR32で遂にGT-Rが復活することになる。
三菱ランサー・エボリューション
三菱自動車工業は、1992年にランサー・エボリューションを発売した当時から、RSという車種をエボリューションXまで継続してきた。そしてRSは競技用のベース車両という位置づけだ。 装備はもちろん、軽量化のため防音材なども最小限とし、変速機はギヤ比が接近したクロスレシオを採用するなどが行われた。ラリーはもちろん、市販車を基にしたレースへの参戦などで活躍する。
スバル・レガシィ
スバルは初代レガシィにRSという車種がある。未舗装路での走行を主眼とした車種で、「RS-TypeRA」はラリーやダートトライアルの参戦を意識した車両だった。その後2~3代目にもRSがある。いずれの場合もRSは「ロード・スポーツ」の意味で、壮快な走りを目指した車種に位置づけられた。
マツダ・ロードスター
マツダのロードスターにもRSがある。ロードスターは「人馬一体」の走りを目指して世代を重ね、マツダ車共通の楽しさや走る喜びの価値を象徴するライトウェイトスポーツカーだ。 そのなかでもRSは、運転の楽しさをより深化させる車種と位置付けられる。ただ言葉そのものに具体的な意味はないという。
スズキ・スイフト
スズキ・スイフトに設定されているRSは「ロード・スポーツ」を意味する。 位置づけは速度域の高い欧州での走りを想定し、フラットでしっかりとした乗り味と直進安定性をより高める仕様として2011年に登場した。 具体的には欧州チューニングのダンパーやタイヤ、パワーステアリングを装備する。ダンパーは減衰を高めとして上下動を抑え、タイヤは剛性を高め操舵に対する応答と的確なグリップをもたらす。 パワーステアリングは操舵感覚と直進性を重視しながら操舵の手ごたえを高めている。2004年の2代目以降、国内外で評判の操縦性をいっそう充実させた車種といえる。
トヨタ・クラウン&GRヤリス
トヨタにもRSと名付けられた車種がある。かつてはヴィッツにRSがあったが、いまはクラウンにRSがある。 クラウンは現在ひとつの車種体系となっており、かつてのアスリートやロイヤル、あるいはマジェスタという特徴づけをやめているが、それでもRSはかつてのアスリートのようなより運転を楽しみたい消費者向けの車種といえるだろう。そのRSに込められた意味は「ランナバウト・スポーツ」だ。
そして走りに特化したGRヤリスにもRSがある。GRヤリスはモータースポーツ用の車両を市販化する発想で生まれたクルマであり、なかでもRSは1.5Lの直列3気筒エンジンとCVTを組み合わせた前輪駆動車(FWD)の廉価車種として、走りを気軽に楽しめる車種に位置づけられている。
ポルシェ911
RSと聞いてクルマ好きがまず思い浮かべるのが、ドイツのポルシェRSだろう。ドイツ語の「Renn Sport(レン・シュポルト)」の頭文字であり、英語であれば「レーシング・スポーツ」の意味になり、レーシングカー由来の一般公道用車種であることを指す。1972年にポルシェ911カレラRSとして誕生した。 ポルシェには他にRSRと名付けられる車種もあり、こちらはRSにレーシングカーを意味する「Rennenwagen(レネンワーゲン)」が追加された頭文字で、公道走行ができないレーシングカーを意味する。
各メーカーでその意味合いが微妙に異なるものの、基本的には「走り」を意識したグレードである事は確実。今回紹介した過去の名作に負けず劣らずの、2文字が冠されたモデルが登場することを期待したい。
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