■もうエコだけじゃない! エコカーが速さを求める時代が到来!?
最近では、世界中の自動車市場で環境規制が強化されつつあり、今後ガソリン車の販売自体を禁止する地域も出てきました。
その動きに合わせるように自動車メーカーも電動化を進めていきましたが、これまでは単純に「環境性能(エコ)」を意識してそれを全面に押し出したモデルがほとんどでしたが、昨今ではその傾向に変化が出てきているといいます。電動モデルにどのような変化が見られるのでしょうか。
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電動車の先駆けといえば、トヨタが1997年に発売した世界初の量産ハイブリッド乗用車となる「プリウス」ですが、それ以降ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車などが続々と登場しました。
2020年現在、ハイブリッド車は定番化したモデルとして世界中で販売されていますが、プラグインハイブリッド車や電気自動車は、価格面や充電インフラなどの問題により、ハイブリッド車並みに普及はしていない状況です。
そんななか、2019年11月に開催されたロサンゼルスオートショーにおいて、トヨタ「RAV4」のプラグインハイブリッド車となる「RAV4 Prime」(米国名)を世界初披露。日本では、2020年6月に「RAV4 PHV」として発売されました。
トヨタのPHVモデルとして「プリウスPHV」に次ぐ第2弾となり、ベースとなるRAV4のハイブリッド車と同じ2.5リッターエンジンに大容量リチウムイオン電池や前後の2モーターを採用した、新たなプラグインハイブリッドシステム「THS II プラグイン」を採用。
プリウスPHVではエコなイメージを押し出すために、リアに装着される「PHV」のエンブレムは青が用いられていますが、RAV4 PHVではロゴを赤とすることでスポーティなイメージを付与。これは、「RAV4 PHVからプラグインハイブリッドの概念を変える」というトヨタの想いが込められているといいます。
RAV4 PHVは、システム最高出力306馬力を達成。モーターを最大限活用することで、瞬時に加減速することが可能となり、0-100km/h加速は6.0秒とスポーティで力強い走行が特徴です。
さらに、前後ショックアブソーバーの摩擦特性と減衰力特性を最適化し、コーナリング時の優れた操縦安定性や重厚感のあるしなやかな乗り心地を可能にするなど、単純に環境性能を追求したモデルではないことがわかります。
もちろん、電動車としてEVモードでの走行距離は、クラストップレベルの95kmを実現。ハイブリッド燃費は22.2km/Lで1300km以上の航続が可能になるなど、優れた環境性能も両立しています。
また、同じくトヨタが2020年末頃に発売を予定している燃料電池車「ミライ」も従来の電動車のイメージを覆すモデルです。
新型ミライは、初代ミライと比べて全長4975mm(+85mm)×全幅1885mm(+70mm)×全高1475mm(-65mm)となり、ロー&ワイドなスタイルを強調。
サイドビューもリアタイヤを起点にボディ前方へ向かって絞り込まれるスポーティなフォルムとし、空気の流れも考慮するなど、スポーツセダンのような佇まいとなりました。
重量物である水素タンクをはじめ、燃料電池ユニットを再配置し、前後の重量バランスを最適化。後輪駆動の採用も奏功し、重量配分は50:50を達成するなど欧州のプレミアムカーに匹敵します。
さらに駆動用モーター(最高出力182馬力)は高出力・高効率を実現したほか、モーターならではのアクセル応答性により、エコカーのイメージを塗り替えるほどの走る楽しさをドライバーに提供します。
このように、RAV4 PHVやミライは、従来のエコなイメージを払拭して、クルマ本来の「走り」を強調するもモデルとなりましたが、なぜエコのイメージとは真逆の速さを打ち出しているのでしょうか。
その理由のひとつとして、ミライの開発担当者は「燃料電池車といえばエコカーというイメージですが、燃料電池だってしっかり走れないと認められないと思いますので、魅力的なクルマを作りました」と説明してます。
また、RAV4 PHVについて販売店スタッフは次のように話しています。
「RAV4 PHVは、ガソリン車のエントリーグレードと比べてると200万円ほどの価格が高いことや、充電インフラが十分に整っていないなど、不安要素があった割には、予想以上の反響でした。
人気の理由は、ガソリンともハイブリッドとも異なる乗り心地や燃費の良さ、環境性能などさまざまですが、走行性能への評価が高い印象です。なかには、スポーツカーから乗り換えをされたお客さまもいらっしゃいました。
これは一部の何人かのお客さまから『電動車はエコばかり意識して面白くない。昔からクルマは性能が進化していたけど、いつも走行性能を意識していたので、RAV4 PHVみたいな速さも求めるモデルは良いと思う』といわれ、やはりクルマは基本的に運転して楽しいかがポイントなのかもしれません」
※ ※ ※
これまでもミニバンや軽自動車、SUVが流行った際には、各社がこぞって似たようなパッケージのモデルを発売してきましたが、そのなかでも快適性や使い勝手、安全面の進化は当然ながら、走行性能をライバルと競うこともおこなわれてきました。
幅広いものの電動車という新たなジャンルが開拓され、そのなかで、環境性能が良いことは当たり前となり、次に求められるのはクルマ本来の「走りの良さ(運転の楽しさ)」なのかもしれません。
その結果、RAV4 PHVやミライのような走りを意識したモデルが出てきたのだといえます。
■「走りの良さ」もイイけど…別の個性を主張するのはあのクルマ?
RAV4 PHVやミライは、走りを意識したモデルでしたが、別の方向性で個性を主張している電動車も存在します。
それは、ホンダが欧州や日本で販売する小型電気自動車「ホンダe」で、最近のクルマとはどこか違う懐かしさのあるデザインを採用しています。
内装においても、移動しているときから止まっているときの心地よさを重視。電気自動車ならではの先進装備を搭載しつつ、シンプルで心安らぐリビングのような空間を実現。
さらにインパネでは、左右にカメラミラーの映像用のモニターが配置され、中央部分には12.3インチのスクリーンを2画面並べた「ワイドスクリーン Honda CONNECT ディスプレー」が採用され、これまでのモニター操作とは違う感覚やアプリでヴァーチャルな魚が飼えるなど、遊び心も持ち合わせています。
ホンダeのボディサイズ全長3895mm×全幅1750mm×全高1510mmで4人乗りとなり、航続距離は、WLTCモードで283kmと昨今の電気自動車では短めな距離です。
開発責任者を務めた一瀬智史氏によると、新型ホンダeの開発にあたっては、「街なかベスト」というキーワードが重要だったといい、次のようにコメントします。
「都市間交通など、遠くへの移動は公共交通機関やハイブリッド車などに任せることによって、(電気自動車は)街なかでより使いやすいものになると考えました。
従来の電気自動車は、ガソリン車の性能を達成しようとして、大きくて重いバッテリーを搭載しています。街なかを考えたとき、本当にそれが合理的なのか、という疑問が湧いてきました。
適正なバッテリーサイズにすることによって、街なかベストのサイズや、人に優しいたたずまい、誰もがストレス無く運転できる取り回しなどが実現できます。
そこに新たな価値を付加することによって、ホンダeはより魅力的なものになると思い、開発してきました」
このように、これまでの電気自動車では1回の充電で走行出来る航続距離の長さが重要視されていましたが、ホンダeでは街中を中心に使う都市型コミューターという他社とは違う方向性を打ち出しました。
これにより、前述のデザインや内装も街中に溶け込むようなテイストに仕上げられているのです。
※ ※ ※
速さや運転の楽しさを求めるRAV4 PHVやミライに対して、街中ベストで可愛らしさを追求したホンダeは、どちらも共通してこれまでのエコカーが持っていたイメージを覆す新たな個性を持つモデルなのです。
そして、その個性を主張するモデルが増えてきたということは、電動車とくにプラグインハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車が一般化してきた現れなのかもしれません。
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