現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 680psの燃料電池コンセプト ヒョンデNビジョン74へ試乗 記憶が曖昧になる加速力

ここから本文です

680psの燃料電池コンセプト ヒョンデNビジョン74へ試乗 記憶が曖昧になる加速力

掲載 41
680psの燃料電池コンセプト ヒョンデNビジョン74へ試乗 記憶が曖昧になる加速力

最高出力680psの燃料電池コンセプト

驚くほどの勢いで、電動化技術の開発を進める韓国のヒョンデ。彼らは、環境対策だけに注力しているわけではない。

【画像】680psのFCVコンセプト ヒョンデNビジョン74 トヨタ・ミライとホンダ・クラリティも 全122枚

水素で電気を生み出して走行する、燃料電池車のヒョンデix35を筆者が試乗させてもらったのは9年前。極低温水素タンク、LH2の自動車利用を検証するためのプロトタイプだった。

その時は英国の高速道路を走ったが、流れへついていくのに十分なパワーは発揮していたものの、余裕を感じられたわけではなかった。燃料電池の出力は低く、短時間の加速時以外は非力感が常に漂っていた。

しかし、それは過去の話。今回試乗したNビジョン74の最高出力は680psもある。走る実験室という性格ではix35と同じだが、今回は思う存分サーキットを走り回れるという。望めば、痛快なドリフトも決められるらしい。

直線的なシルエットに、ヘッドライトを包む四角いフロントグリル。レトロな雰囲気のNビジョン74だが、見どころは外観だけではない。

ドイツ北西部、ビルスター・ベルク・サーキットで開かれたNデイと呼ばれるイベントの、主役を務めるのに不足ない。コンセプトカーだが運転も可能だ。

2022年初頭にヒョンデが画像を公開すると、筋肉質なデザインがインターネット上で話題になった。デロリアンへ似ているように感じるが、仕上がりには訴求力がある。実際、このスタイリングが生まれた理由はデロリアンへリンクしているという。

ベースはキア・スティンガーでツインモーター

会場に来ていた技術者のアルバート・ビアマン氏に直接お会いでき、裏話を聞かせてもらった。BMW M社からヒョンデ・グループへ移籍した66歳のドイツ人エンジニアは、既に開発部門トップの地位を退いている。

それでもまだ同社には属しており、エグゼクティブ・テクニカル・アドバイザーという役職にある。彼によれば、本来、Nビジョン74はヒョンデとして生み出されたわけではないらしい。

「これのベース車は、キア・スティンガーでした」。と笑みを浮かべながらビアマンが説明する。

「(デロリアン風の)デザインは、ずっと後になって与えられています。アイデアは別のブランドが発端で、(ヒョンデの高性能ブランドの)Nではなく、上級ブランドのジェネシスのためでした」

「新システムの開発に向けて、実際に機能するメカニズムを搭載したプロトタイプを作る必要がありました。既存モデルをベースにすることになり、キアのスティンガーがグループ内で最も求めるサイズへ近いとわかったんです」

その結果、キア・スティンガーをベースに、高出力の燃料電池システムを搭載したプロトタイプが3台誕生した。駆動用バッテリーは既存のヒョンデ・ネッソと呼ばれるSUVと同じ、62.4kWhの容量を持つ。駆動用モーターは340psのものが2基載っている。

モーターの位置は、前後ではなくリア側の左右。ボディは写真の通りクーペをまとった。

記憶が曖昧になるほど激しい加速

ビアマンによれば、プロジェクトの主な目的は左右に搭載された駆動用モーターを同時に制御し、仮想的なリミテッドスリップ・デフを検証すること。ヒョンデは、キアEV6 GTが発揮する585ps以上の最高出力を実現させたいと考えている。

「実働するプロトタイプが完成したのは2年前。ヒョンデのテストコースで初めて運転した時は少し不自然で、正直怖かったですね。しかし現在は、メカニカルLSDと同様なフィーリングを得ていますよ」

筆者は早速、Nビジョン74のステアリングホイールを握ることが許された。多くのコンセプトカーは運転可能だといっても低速域に限られ、運転席に座った印象を確かめられる程度に過ぎない。しかしこのクルマは異なる。

ビルスター・ベルク・サーキットの高速コーナーを、全開で駆け抜けられるという。別のドライバーは、タイトコーナーでドリフトを披露させていた。筆者は、もう少し控えめにしておいたけれど。

助手席に座った技術者は、スタビリティコントロールをオンのまま、スポーツ・モードまで試していいと話す。車内にはロールケージが張り巡らされ、乗り込むのは少々大変。キア・スティンガーがだった面影はまったくない。

シートベルトを締めて発進。ピットレーンの出口からアクセルペダルを蹴飛ばした途端、激しい加速に襲われた。前後の記憶が曖昧になるほど。

オーバーステア状態へ自然に移行

ヒョンデによれば、0-100km/h加速を4.0秒以下でこなすそうだが、実際の感覚としてはそれより遥かに速い。アクセルペダルへのレスポンスも、極めて鋭い。

多くの燃料電池車とは異なり、水素から作られた電気は直接には駆動用モーターへ送られない。1度、駆動用バッテリーを介するという。

燃料電池の出力は85kWで、駆動用モーターが最高出力を発生させるのに充分な電気は供給できない。しかし、強力な出力を持つ駆動用バッテリーへ継続的に電気を供給してくれる。量産仕様とする場合、航続距離は595kmになるらしい。

Nビジョン74の車重は2t近いそうだが、ピレリPゼロ4Sタイヤが生み出すグリップ力は凄まじい。まったく不安感なく、高速コーナーをハイスピードで処理していく。低速コーナーでは、不満ないトラクションで加速させる。

リアタイヤ左右の挙動は、ソフトウエアによって制御されているという感覚がない。速度やタイヤへ掛かる負荷が高まると、オーバーステア状態へ自然に移行していく。

燃料電池の技術もさることながら、トラクション管理の巧妙さにも唸らされる。サーキットを4周走り込んで気になった点といえば、感触の曖昧なブレーキペダルくらい。パワフルな駆動用モーターが生み出すスピードに、すっかり夢中になってしまった。

デザインはジウジアーロのポニーが原点

さて、このNビジョン74のクラシカルなスタイリングだが、創業間もない頃のモデルから影響を受けたのだという。1974年のトリノ自動車ショーに出展された、ヒョンデ・ポニーだ。

量産化されたのは4ドアサルーンのみだったが、クーペボディのコンセプトモデルも並んでいた。スタイリングを手掛けたのは、イタルデザイン社に在籍していたジョルジェット・ジウジアーロ氏だった。

クーペのポニーは生産に至らなかったものの、スタイリングは悪くなかった。ジウジアーロは、後に依頼を受けたデロリアンDMC-12へ、そのデザインを展開させるほど。

ヒョンデのデザイン部門を率いるイ・サンヨプ氏は、ポニー・クーペのスタイリングがNビジョン74の原点にあると説明する。ルーフからリアガラスへのシャープな面展開や四角いグラスエリア、奥まったフロントグリルなどが、その特徴だという。

かなり注目度の高いコンセプトモデルであることは間違いないが、Nビジョン74が量産化されることはないようだ。ビアマンは次のように話す。

「EGMPプラットフォーム上で、このプロポーションを維持することはできません。デザインを変えるか、新しいバッテリーを開発する必要があるんです」

ヒョンデNビジョン74 コンセプトのスペック

英国価格:−
全長:−
全幅:−
全高:−
最高速度:249km/h以上
0-100km/h加速:4.0秒以下
航続距離:643km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:−
パワートレイン:−
駆動用バッテリー:62.4kWh
急速充電能力:−
最高出力:680ps
最大トルク:91.6kg-m
ギアボックス:−

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

アロンソとその父親、マクラーレンのザク・ブラウンの招待でヴィンテージレーシングカーをドライブ。セナのMP4/5も!
アロンソとその父親、マクラーレンのザク・ブラウンの招待でヴィンテージレーシングカーをドライブ。セナのMP4/5も!
motorsport.com 日本版
ちょっと丸くなった? メルセデスベンツ『GLB』次期型…EV仕様の登場で EQB は消滅へ!
ちょっと丸くなった? メルセデスベンツ『GLB』次期型…EV仕様の登場で EQB は消滅へ!
レスポンス
AGC、「CES 2025」に次世代コックピット技術を出展へ
AGC、「CES 2025」に次世代コックピット技術を出展へ
レスポンス
オフロードレース=モトクロスだけではありません! 「エンデューロ」とは?【バイク用語辞典】
オフロードレース=モトクロスだけではありません! 「エンデューロ」とは?【バイク用語辞典】
バイクのニュース
ホンダと日産、経営統合へ協議開始 「資本の論理」で主導権はホンダ ブランドは継続
ホンダと日産、経営統合へ協議開始 「資本の論理」で主導権はホンダ ブランドは継続
日刊自動車新聞
いまのご時世「200万円」は安い! 「人がたくさん乗れるトヨタ車」なぜ人気? 5人&7人仕様の「シエンタ X」どんな人が買う? 販売店に聞いてみた!
いまのご時世「200万円」は安い! 「人がたくさん乗れるトヨタ車」なぜ人気? 5人&7人仕様の「シエンタ X」どんな人が買う? 販売店に聞いてみた!
くるまのニュース
【名車復活!】アイコンモデルが帰って来る!早ければ2025年に公式発表か?トヨタ製スポーツクーペ セリカ復活!最新情報!
【名車復活!】アイコンモデルが帰って来る!早ければ2025年に公式発表か?トヨタ製スポーツクーペ セリカ復活!最新情報!
AutoBild Japan
ホンダ『N-VAN e:』リコール…サイドカーテンエアバッグが正常に展開できないおそれ
ホンダ『N-VAN e:』リコール…サイドカーテンエアバッグが正常に展開できないおそれ
レスポンス
伝説のレーシングポルシェ“ナナサンカレラ”風のダックテールがテーブルに! 157万円の落札価格は「レース史を体現したアート」としては格安か
伝説のレーシングポルシェ“ナナサンカレラ”風のダックテールがテーブルに! 157万円の落札価格は「レース史を体現したアート」としては格安か
VAGUE
ガソリン1Lで「約28km」も走れる「軽」あった! 「ガソリン価格“10円値上げ”」だから低燃費がイイ! 新車「90万円台」から買えるモデルも! エコな軽自動車“トップ5”とは?
ガソリン1Lで「約28km」も走れる「軽」あった! 「ガソリン価格“10円値上げ”」だから低燃費がイイ! 新車「90万円台」から買えるモデルも! エコな軽自動車“トップ5”とは?
くるまのニュース
東南アジアでは珍しい自国自動車ブランド「プロトン」「プロドゥア」をもつマレーシア! どちらも「どこかで見たような……」なクルマが多いワケ
東南アジアでは珍しい自国自動車ブランド「プロトン」「プロドゥア」をもつマレーシア! どちらも「どこかで見たような……」なクルマが多いワケ
WEB CARTOP
「こんなに政治的になるとは」ラッセル、GPDA理事のお仕事にボヤき漏らす。FIAには協力姿勢維持
「こんなに政治的になるとは」ラッセル、GPDA理事のお仕事にボヤき漏らす。FIAには協力姿勢維持
motorsport.com 日本版
2年連続3度目の快挙! 「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」が第7回 日本バイクオブザイヤー2024大賞を受賞
2年連続3度目の快挙! 「Ninja ZX-25R SE KRT EDITION」が第7回 日本バイクオブザイヤー2024大賞を受賞
バイクのニュース
大宮~東北道が「信号ゼロ」に!? 悲願の「埼玉新都心線」延伸計画が進行中 「埼玉スタジアム直結」の可能性も!? ルート決定間近の「核都市広域幹線道路」のスゴさとは
大宮~東北道が「信号ゼロ」に!? 悲願の「埼玉新都心線」延伸計画が進行中 「埼玉スタジアム直結」の可能性も!? ルート決定間近の「核都市広域幹線道路」のスゴさとは
くるまのニュース
メルセデス-AMG E53 ハイブリッド 4マティック+【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
メルセデス-AMG E53 ハイブリッド 4マティック+【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
11月SUVマーケット、首位はヤリスクロスが復活、4位にはランドクルーザーがランクイン!(24年11月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
11月SUVマーケット、首位はヤリスクロスが復活、4位にはランドクルーザーがランクイン!(24年11月の軽自動車を含むSUV車販売登録ランキングTOP20)
カー・アンド・ドライバー
1000万円超え! トヨタ新「アルファード/ヴェルファイア」発表! “300馬力超え”モデル登場に「馬力えぐい」「きたあああ」の声! 待望の「PHEVモデル」が話題に
1000万円超え! トヨタ新「アルファード/ヴェルファイア」発表! “300馬力超え”モデル登場に「馬力えぐい」「きたあああ」の声! 待望の「PHEVモデル」が話題に
くるまのニュース
カワサキ名車「シェルパ」“17年ぶり復活”「発売延期だった?」「やっと発売!」 ツーリングに最適な新型「KLX230シェルパ」 25日(クリスマス)に発売!
カワサキ名車「シェルパ」“17年ぶり復活”「発売延期だった?」「やっと発売!」 ツーリングに最適な新型「KLX230シェルパ」 25日(クリスマス)に発売!
くるまのニュース

みんなのコメント

41件
  • 正直コイツだけはかっこいいと思う
  • カッケーな。
    デロリアンよりデロリアンっぽさがある。
    グローバル開発が中心の海外メーカーはいいね。
    貧困アジアばかり見てるメーカーはどんどんチープになる
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

379.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索
ビジョンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

379.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

-万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村