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これでパンクの心配から解放される!? 空気いらずの「エアレスタイヤ」とは?

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これでパンクの心配から解放される!? 空気いらずの「エアレスタイヤ」とは?

 一般的な乗用車用タイヤは、中に空気が入っているのが当たり前だ。ランフラットタイヤといえでも例外ではないが、近年タイヤメーカーは空気の入っていないタイヤの開発を進めている。

 パンクをしない、走行抵抗が少ないなどの利点があるものの、すぐにすべてのクルマのタイヤが置き換わるものではないが、環境性能が重要なEVなどを中心に採用が増えそうだ。

スタッドレスタイヤの交換時期到来! ちょっと待て オールシーズンタイヤでもイケるのか?

 そこで、最新のエアレスタイヤ事情に迫りたい。

文/斎藤 聡、写真/ミシュラン、ブリヂストン、ダンロップ、トーヨータイヤ

[gallink]

■乗り物を劇的に進化させた空気入りタイヤの発明

世界で初めて空気入りタイヤを実用化したダンロップもエアレスタイヤを開発中だ

 空気入りタイヤの発明は、スコットランドの発明家ロバート・ウイリアム・トムソンによるもので1845年のことでした。ただこの時は特許のみで実用化には至らず、1888年にB.J.ダンロップが空気入りタイヤを実用化に成功します。これを契機にタイヤは急速な進化を遂げることになりました。

 ちなみに、ゴムの弾性を飛躍的に高める加硫法を発見したのはアメリカのチャールズ・グッドイヤーで、1839年のことでした。

 また、自動車用空気入りタイヤはフランスのアンドレ・ミシュランと・エドワール・ミシュランのミシュラン兄弟が、パリとボルドーを往復するパリ―ボルドーラリーに使ったのが始まりです。

 話は逸れますが、このラリーで空気入りタイヤのミシュランタイヤは100回近いパンクにもめげず、走り切ったのでした。

 ミシュランのキャラクターとして人気のビバンダム(ミシュランマン)は、当初釘や金属片を飲み込む怪物=タイヤ男として描かれた広告ポスターが始まりで、そこには「ヌンク・エスト・ビバンダム(いまこそ飲み干すとき)」と書かれていました。

 いまや、タイヤと言えば誰もが空気入りタイヤを想像するでしょう。実際のところ、この約120年間のタイヤの歴史はほぼ空気入りタイヤの歴史と言ってよく、改良を加えながら、進化してきたのでした。

■タイヤの常識を覆す「エアレスタイヤ」とは?

大型重機用として実用化されているミシュランXトゥイールSSL。巨大な重機の大重量をエアレスタイヤが受け止める

 ところが、今そんな常識が覆される新たなタイヤが登場しようとしています。それがエアレスタイヤです。

 空気入りタイヤのウイークポイントはパンクしてしまうことです。これまではパンク修理をすることで、これに対処してきました。エアレスタイヤが実用化されれば(一部産業用機械用タイヤはすでに実用化)クルマはパンクから解放されることになります。

 エアレスタイヤは夢のタイヤともいわれていて、パンクレス、スペアタイヤレスを実現することができます。

 現在各メーカーで試作されているエアレスタイヤの構造は、クッション部となるスポーク部の外周にトレッドゴムを張り付けるものになっています。またクッション部はホイールに組付けられるので、ホイールは残りそうです。ただ、クッション部と組付けるのでリムやフランジ形状は変わりそうです。

 もっともすべてのタイヤがエアレスタイヤに置き換わるわけではなく、発売されるようになって暫くは車重が軽くタイヤへの要求性能も比較的高くないコンパクトカーや軽自動車、マイクロカーなどが主流になるのではないかと思います。

 もっともミシュランの農業用重機は巨大で、その重量を楽々とエアレスタイヤが受け止めているのですから、実用化のための研究を進めていったら重量級サルーンとの相性が思いのほかよかったなんてこともあるかもしれません。

 また、クッション部やトレッドゴムに様々なチューニングの余地がありそうなので、フォーミュラE用のタイヤに採用なんてことが将来起こるかもしれません。だいぶ楽天的な発想ですが、未知な部分が多いだけに無限の可能性を感じます。

■エアレスタイヤの実用性はどの程度か

トーヨータイヤが開発中のエアレスタイヤ「noair(ノアイア)」。現在もっとも市販に近いと言われているエアレスタイヤのひとつだ

 では、現段階でエアレスタイヤの実用性はどの程度まで上がっているのでしょう。

 答えを急げば、乗用車用エアレスタイヤの実用化は秒読みと言っていいくらい近くまで来ています。

 いまもっとも市販に近いのはトーヨータイヤのnoair(ノアイア)でしょう。走行性能も、すでに乗用車に装着して高速走行が可能なレベルに達しているといいます。

 トーヨータイヤによれば、実用化に向けた製品技術は確立したため、実際の生産ラインでの量産テストに移る、と言っています。

 実際、グローバル・マザー工場である仙台工場にエアレスタイヤ用の生産ラインを導入して生産テストに移る段階に入ったそうです。2022年ころまでに量産体制を整えることを想定しています。

 またミシュランは、乗用車ではありませんが、すでにエアレスタイヤを実用化しています。

 大型重機であるスキッドステアローラー用のエアレスタイヤ「ミシュランXトゥイールSSL」は2018年から国内でも発売されています。これを見れば重量級車両との相性がいいことも分かります。タフネス性も期待できそうです。

 乗用車用エアレスタイヤでは、ミシュランとGMが共同で研究を進めているUptis(アプティス)があります。これは既報どおり2024年の実用化を目指して開発が進められています。

 このほかブリヂストンのエアフリーコンセプト、住友ゴムのGYROBLADE(ジャイロブレイド)など、ほかのメーカーもエアレスタイヤの開発は進めています。

■エアレスタイヤのこれから

ミシュランがGMと共同開発中の「Uptis」。シボレー ボルトEVに装着して実証実験を行なっている

 とはいうものの、国産タイヤメーカーの動きは急速と言えるほどスピード感がありません。それは道路運送車両法の保安基準がハードルになっているからです。現在のタイヤの保安基準では、クルマのタイヤは「空気入りタイヤ」であることが前提で、エアレスタイヤの概念がないのです。

 将来的にはエアレスタイヤが保安基準によって定められることになるのでしょうが、その基準がどのくらいのものになるのか、その「基準」が定まっていないのです。

 ちなみに、保安基準は、将来的にエアレスタイヤを装着した車両が輸出入される可能性が高いこともあって、日本だけの基準というわけにはいかず、空気入りタイヤ同様世界的に通用する基準になるはずなので、日本独自で決めてしまうというわけにはいきません。

 そのため、保安基準がいつ頃固まるのかというのは予想しにくいところがあります。

 環境問題がクローズアップされる昨今ですから、使用済みタイヤや故障タイヤの廃棄による資源ロスなども中も幾を集める問題です。そう考えれば優先順位は低くありません。すでにお手本となる空気入りタイヤの保安基準がありますから、案外あっさりと(骨子は)決まってしまうのかもしれません。

 市販直前のトーヨータイヤでは、最初はゴルフ場のカート用タイヤやテーマパークなどの移動用モビリティなど公道を走行しない車両用として販売される見込みです。

 では市販できるようになるのはいつ頃なのでしょうか。

 これは完全な憶測ですが、今後大きな問題が浮上しなければ2024年の市販を目指すとアナウンスしているミシュラン+GMのuptisの登場の少し前あたりにエアレスタイヤの世界的な保安基準ができ、市販車化につながっていくのではないでしょうか。そんなシナリオが思い浮かびます。

[gallink]

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みんなのコメント

24件
  • パンクより目詰まりに悩まされそう
  • これで泥んこ走行したら凄くまき散らしそうだね。

    子供がいたずらで石ころを挟みそう。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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