もくじ
ー 水素燃料電池の将来
ー とても単純な運転方法
ー 普及には時間も
ー 燃料代は同等
ー 洗練された乗り味
ー コストとインフラは要改善
ー 今後の普及に期待
ー 需要増大でコスト低減
ー テストデータ
長期テスト トヨタ・ミライ(4) EVの魅力を深める燃料電池 シートは難
水素燃料電池の将来
AUTOCARでは数カ月にわたって、トヨタ・ミライならびにヒュンダイix35 FCVという水素燃料電池車(HFCV)2台の長期テストをおこなった。
現状における課題とその解決策について理解を深めようと、容赦なく日常の用に供してきた。
いま英国で市販されるHFCVも、この2台だけだ。そこへ全ヨーロッパ水素補給ステーション普及計画の一環としてホンダから新型クラリティが登場し、英国ウェールズではリバーシンプルという新企業が自製のHFCV「ラサ」の年内発売をめざしている。
そこで今回、ミライとix35 FCVをそれぞれ担当してきたAUTOCAR編集部のスティーブ・クロプリー編集長(SC)とジム・ホルダー(JH)に、HFCVの美点ならびに燃料としての水素の展望についてじっくり語ってもらうことにした。
とても単純な運転方法
SC「まず乗ってみてびっくりしたのは、FCVの運転が本質的にとても単純だったことだね」
JH「いままでのクルマとはまるでちがうけど、とても真っとうな感じだね。とくにバッテリー式の電気自動車に慣れてるひとなら。個人的には長所ばかりで、ネガは感じられないね。とくに、音もなく即座にトルクを出してくれる動力系はいい。15分かかる水素の補給だけは骨だけど、これも慣れで片づく話だからね」
JH「ほかには、技術としても持続可能だし、その技術を楽しく学びながらゆったりと恩恵を受けられる。ふだんの生活にもすんなりとけ込めるんだから、とてもユルい神のお告げといってもいいね」
SC「でも、ちょっと手を出しかねるところもあるだろう?」
JH「いまとなっては笑い話なんだけど、はじめ無意識のうちに編集部のひとをミライとix35から遠ざけてしまうようなことをしていたんだよ」
JH「編集部のみんなが運転する長期テスト車だからと思って、近所の(ロンドン郊外のテディントンにある国立物理学研究所近くの)水素ステーションの補給のしかたをまとめて書いたんだ。ところが、それが15項目にもなったものだからみんな恐れをなしてしまって、かえって借りだすのにそうとうな覚悟を強いることになってしまったんだよ」
普及には時間も
JH「でも一度でも体験したら、あのグダグダならんだ注意書きはいったい何だったんだということになるんだね。実際は水素の補給よりもカードをスワイプする支払いのほうがややこしいくらいだったんだけど、まあみんなはじめは新しいことを怖がるものだからね」
SC「そう。はじめはみんなHFCVを怖がっていたことを思えば、ここまで進んだのが不思議なくらいだよ。変速機もない単純な電動動力系は普通のバッテリー駆動のEVと同じだけど、補給はふつうのガソリンスタンドと同じように3分で済むし、700気圧の水素5kgの満タンでミライなら450km近く走れる。宇宙時代の話みたいだけど、もう現実なんだからね」
JH「みんなそれを見落としているのが、ゆゆしき問題だね。補給のやり方も直観的で、いままでとなんら変わりない。新しく覚えることだって何もないし、おまけにあっという間に満タンだ。それにもちろん、ポンプを使って補充するということは課税もしやすいわけだし」
SC「いまのところコストについては実験的なところもあるけど、HFCVがある一定レベル普及するまではたぶんそうだろう。まだ補給施設も限られるから、あと数年はこのままだろうね」
燃料代は同等
SC「ミライとix35が主に使ってきたステーションでは、700気圧の水素1kgあたりの価格は9.99ポンド(1400円)だった。満タンにしたら50ポンド(7000円)の計算になるけど、それで435kmは十分走れた。燃費12.4km/ℓのガソリン車だと同じ距離を走るのに35ℓほど必要なことになるから、いまの価格だと40ポンド(5600円)強になる」
SC「だから現時点では、燃料代はガソリンとだいたい同じくらいとみていいだろうね。でもまあ、環境への優しさを考えたら少しくらい余分に払ってもいいというひとも多いんじゃないかな。クルマが出すものといえば純粋な水だけなんだから」
JH「プラグインを含むハイブリッドやバッテリー式EV、そしてPHEVその他の間でどれが最も環境に貢献するかという論争がさかんだけど、それと同時に個人的には『どれがいちばん普及させやすいか』ということも気に留めたほうがいいとは思う。『させやすい』といっても単純というわけではないけど」
JH「というのは、政府はこれから石油燃料に課してきた税金の分をいかに転嫁するかに血眼になると思うんだ。一般家庭のコンセントからの充電に課税するのはまあ不可能だろうけど、タンクに充填する燃料なら話は簡単だろう? なぜ財務大臣が水素を推すのか、いまにみんなわかるよ」
洗練された乗り味
SC「わたしはミライ、ix35、クラリティには全部乗ったけど、これらには共通点もあればことなる点もあるね。どれもすばらしく洗練された感じだし、滑らかで運転も簡単だ。ギアを変えたりクラッチを踏まなくてもいいからね。それに望むだけのトルクをピタリと出してくれるし、良くできたバッテリー式EVから乗りかえても違和感がない」
SC「3台ともとても静かでスムーズだから、ロールス・ロイスのリムジンに動力系をそのまま載せてもぜんぜんおかしくないね。あえていえば、ミライはわずかに騒音が気になったかな。コンプレッサーのうなり音とか、あとは異常ではないけど始動時にかすかにパスンパスンという音もする。でも水素自動車が常識になれば、動力系の音や振動は問題にはならなくなるだろうがね」
JH「わたしはクラリティには乗っていないけど、ミライとix35 FCVは期待にそってくれたね。ミライは十分目的にかなう出来具合だけど、ix35 FCVには少しばかり欠点もあった。まあどれもささいなことだし、もとのモデルの設計の古さとか左ハンドルに起因するものばかりだ」
JH「たとえば質感や空間設計はちょっと時代遅れだし、左ハンドルと足踏み式のパーキングブレーキには慣れが必要、というところだね」
コストとインフラは要改善
JH「でもミライだって、ちょっと後れをとるところはあるよ。よく耳を澄ませると動力系のガラガラいう音はix35 FCVよりもあきらかによく聞こえたし、全長が4890mmもあるから時々取り回しがおっくうだったかな」
SC「どうして将来HFCVに乗ることになるとみんな想像もできないのか、わたしにはどうしてもわからない。不思議な話だけど、あえてひとつ難を挙げればお世辞にもスポーティに感じられないことくらいだよ」
SC「まあ、重量配分の面では利点があるんだけどね。ホイールベースは長くなるから高速安定性も高くなるし、自前で電気をつくる燃料電池車でも重くて高価なバッテリーは依然必要だけども、とても低い位置に置けるからこちらも安定性では有利だ」
SC「まあ静粛性を優先するとなると幅広のタイヤは使いにくいし、活発に走りたいひとには刺激的な音とかクルマとの一体感なんかがもっと欲しくなるかもしれないけどね」
JH「今の問題はコストとインフラだね。ほとんど6万ポンド(847万円)という車両価格はあまりに高すぎるよ。技術が進歩すれば劇的に下がるだろうけどね」
今後の普及に期待
JH「インフラのほうもただただ投資するしかないね。いまだって(イングランド中部の)シェフィールドから(スコットランドの)エディンバラまでの空白区間をのぞけば水素ステーションは英国全土をほぼカバーするから、それらがちゃんと稼働する限りは航続距離の不安は物理的というより心理的な問題といえるね」
JH「ix35に6カ月ほぼ毎日乗ってきたけど、予定をあきらめたのはたったの1回だけだよ。それも予想外の修理でステーションが使えなかったからだからね」
SC「こういう水素自動車がそのうち当たり前になるかな? 論争の両極には、賢明なひとと裕福なひとがいる。(現状ではクルマに補給するそのものの炭化水素から分離生成する)水素の製造コストや、水素自動車が大量にふえたときに必要となるインフラの莫大な建設費用にばかり関心はむきがちだね」
SC「シェフィールドのITMパワー社が風力による電気分解で水素をつくろうと頑張っているのを知っているわれわれからすれば、アクセルペダルに足をのせたとたんにおおきなトルクを生む、しかも走りはどんな状況でもすばらしく洗練されていて、おまけに水しか排出しない移動手段を無視するなんてできないね。あらゆる意味で、水素燃料電池は夢の解決策といえるんじゃないかな」
需要増大でコスト低減
水素燃料ステーションは徐々に英国のあちこちであらわれており、これまたわずかながらも徐々に増えつつある利用者に向けてほぼ全土を網羅できるまでになってきた。水素は体積でなく重量単位で販売され、1kgあたりの単価はだいたい10ポンド(1400円)というところだ。ミライもix35 FCVも、満タン約5kgの水素で現実的に435km程度走ることができる。
つまりだいたい1kmあたり20円前後ということで、ディーゼルよりも燃料コストはかさむ計算になる(いま、17.7km/ℓのディーゼル車なら燃料代はだいたい10円/kmだ)。むろん台数すなわち利用者が増えれば値段はさがるし、水素使い放題のカーリースプランだってあるのだ。
水素自動車にはほかにも、とくに税制面で経済的な利点がある。政府の新車購入補助金も満額の4500ポンド(63万5000円)受けられるし、道路税や渋滞税もかからないうえに石油燃料車よりも可動部品が少ないので修理整備費用も少なくて済むのは大きい。
現状では稀少車好きが「見つけた!」と喜ぶくらい数はすくないが、水素自動車が根づく基盤はもう整っているのだ。需要が増せば、購入ならびに維持の費用もさがるに違いない。肝心なのは、補給インフラの整備をつづけていくことだろう。
水素は1kgあたり10ポンド(1400円)。ミライは満タン5kgだ。
テストデータ
トヨタ・ミライ
テスト開始時積算距離:3716km
テスト終了時積算距離:6622km
新車価格:6万6000ポンド(931万円)
オプション:なし
燃料コスト:18.4円/km
航続距離:435km
0-100km/h加速:9.0秒
最高速度:179km/h
エンジン:154ps燃料電池スタック、ニッケル水素バッテリー
最高出力:154ps
最大トルク:34.1kg-m
ギアボックス:1段オートマティック
燃料費:399.12ポンド(5万6300円)
ほか費用:なし
ヒュンダイix35フューエルセル
テスト開始時積算距離:7491km
テスト終了時積算距離:1万195km
新車価格:5万3105ポンド(749万円)
オプション:なし
燃料コスト:18.4円/km
航続距離:370km
0-100km/h加速:12.5秒
最高速度:161km/h
エンジン:136ps燃料電池スタック、33psハイブリッドバッテリー
最高出力:136ps
最大トルク:30.6kg-m
ギアボックス:1段オートマティック
燃料費:350.91ポンド(4万9500円)
ほか費用:なし
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