Porsche 718 Cayman GT4 Club Sport
ポルシェ 718 ケイマン GT4 クラブスポーツ
ポルシェ 718 ケイマン GT4 クラブスポーツ 初試乗! 田中哲也の全開テスト【動画レポート】
最新ポルシェ・クラブスポーツ、一気乗り第3弾!
2日間に渡りドイツ本国で開催された「ポルシェ トラックテストデイ」の模様をレポートする本稿。第3回目にあたる今回は、718ケイマンGT4クラブスポーツを取り上げる。
GENROQ Webの読者には、サーキット走行を趣味にする向きや、これからサーキット走行にチャレンジしたいと考えているスポーツドライビング愛好家が大勢いることと思う。そうした方々に広く紹介したいのが、この718ケイマンGT4クラブスポーツである。
サーキット専用にチューニングされたGT4 クラブスポーツ
718ケイマンGT4クラブスポーツは、ボディパーツに天然繊維を採り入れた複合素材を使った初のレーシングカーにして、現在、レースの世界で注目を集めているGT4クラスのマシンでもある。今年から日本で始まった新シリーズ「ポルシェ スプリント チャレンジ ジャパン」への参戦を前提とすることもあって注目の1台だ。
ミッドシップに積まれるのは3.8リッターの水平対向6気筒で、先代モデルを40hpも上回る最高出力425hpを発揮し、トランスミッションは6速PDKを採用。室内にはロールケージやレーシングバケットシート、6点式シートベルトなど、レーシングカーに必要な安全装置を完備する。しかもエアコン装備の状態で車両重量を1320kgに抑えたのは立派だ。
走行前にコクピットドリルを受ける。「ABS(アンチロックブレーキシステム)はダイヤル調整式だが3番か2番を試して欲しい。TC(トラクションコントロール)とESC(エレクトロニックスタビリティコントロール)はオン/オフ可能でこれも試してOK」とのこと。デジタルメーターに様々な情報が表示され、特にラップタイムとタイヤプレッシャーがわかるのは助かる。
さていよいよコースインの時間がきた。試乗車はミシュランの新品スリックを履いている。タイヤに熱が入っていないので、走り始めは気をつけるようにとのクルーの言葉に送られてピットロードから発進。
アウトラップはマシンとコースを確認しながらゆっくりと走った。PDKなのでスタートは簡単。エンストがないので非常に気分が楽だ。気温が高いことも影響して、くだんのスリックタイヤは思ったより早くからグリップを発揮したのはありがたい。タイヤの内圧が低すぎると構造破壊のリスクがあるので、内圧をしっかり確認しながら与えられた計測5ラップを思い切り堪能した。
レブリミットまできっちり使い切るタイプのエンジン
ピュアで癖のないレーシングカー。これが718ケイマンGT4クラブスポーツの第一印象だ。なによりPDKのお陰で、最初からドライビングに集中できる。正直に言って、このマシンはPDKを備えることでレーシングマシンとしての敷居がグンと低くなったと思う。
変速はスムーズでなんら不快感がなく、シフトスピードも十分。レーシングカーとして全く問題を感じない。それどころか、スタートやシフト操作が誰でも簡単にできるメリットは非常に大きいと思う。PDKの採用により、以前よりレーシングカーに気軽に乗れるようになったと断言できる。
425hpのエンジンはとても軽快。しかも力強い加速を感じられるので、レーシングカーとして十分満足できるレベルである。低回転域のトルクで走るのではなく、7800rpmのレブリミットまできっちり使い切るタイプ。PDKを駆使して回転数をパワーバンドにキープしつつ高回転で走ると軽快な走りを楽しめる。とても扱いやすい特性のエンジンだ。
よく曲がり動きが自然で唐突な挙動を見せない
次にマシンバランスを含めたコーナリングのポテンシャルに触れよう。ひと言で言って、アンダーステアが少なくよく曲がるのが印象的。サスペンションはややソフトで、ロールやピッチングを自然かつダイレクトに乗り手へと伝えてくる。バンプもスムーズにクリアして見せた。
そのおかげでドライバーは容易に荷重移動を発生させて、マシンバランスを変えられる。例えば、コーナリングの途中でパワーオフするとリヤの荷重が抜けてテールがアウトに振れる。それはマシンとしてダメなところかというと決してそうではない。アクセルワークや荷重移動を学べるということを言いたいのだ。丁寧に正確なコーナリングを行うことにより、タイヤにしっかり荷重がかかりタイヤの性能をフルに発揮できる。
レーシングカーとは、ドライビングの仕方により挙動が大きく変わるものだ。718ケイマンGT4クラブスポーツは、基本的なグリップレベルが高くてしっかりしているし、先に述べたアクセルオフによる荷重移動を使って向きを変えられる。だから気持ちよくコーナーをクリアできるのだ。もちろんESCのオン/オフでも、この部分の挙動は変わる。マシンの向きを積極的に変えたいときはオフにしたほうが走りやすかった。
コーナー出口でパワーを思い切りかけていっても、パワースライドはほとんど発生しない。TCをオフにしてもオンにしても違いをあまり感じることがないくらい、コーナー出口のトラクションはよかった。
つまりマシンの動きが自然なのでわかりやすく、唐突な挙動が少ない。極端に言うと、ゆっくりした動きの中で基本的なマシンの動きを体験できる。これは718ケイマンGT4クラブスポーツの際だった美点だ。
繊細なコントロールが可能なブレーキと体感できる空力
ブレーキはむやみに踏力が重くなく、フィーリングもほぼノーマルに近い。それでいて繊細なコントロールもかなり高いレベルで行えるので不安感が少なく、「止める」と「荷重移動による姿勢づくり」に集中した操作ができる。
ABSのポジションは最初3でスタートしたが、介入が少し多いと感じたので2にするとちょうどよい感じになった。このようにABSは状況によってこまめに調整すると効果的だ。
エアロバランスについては、中速や高速からのブレーキングでリヤがしっかりしているので空力の効果を感じた。
タイヤのグリップレベルはちょうどよいと感じた。グリップ過多ではないし、タイヤのグリップに頼った走りをすることもない。ドライバーがグリップをしっかり感じ取りながら走れて、とてもフィールのいいタイヤだった。
プロからアマチュアまで満足できる懐の深さが魅力
718ケイマンGT4クラブスポーツはプロのドライバーが乗っても十分満足できるレベルに仕上がっており、GT4マシンとしてのポテンシャルは相当高いところにある。それはニュルブルクリンク24時間レースを見ても実証されているし、今回の試乗でもその秘めたる力を実感した。
しかしそれ以上に強く感じたことは、レース経験の少ない人や基礎を学びたい人のトレーニングに絶好のマシンだということだ。とにかく挙動が素直なので、これならドライビングの基本を学べると断言できる。
個人的には718ケイマンGT4クラブスポーツのようなマシンをきっかけにレースを楽しんで欲しい。レースの基本を学ぶのに最適で、しかも十二分に速いマシンだと真剣に言いたい。ピーキーすぎることがなく、許容範囲も大きめなので、ドライバーへの優しさを感じる。だから大きな緊張感なしに、GTカーの雰囲気を存分に体感できる。本格的なレースに参加する前にレーシングカーを体験するには絶好のマシンだと言い切れる。
「ポルシェ トラックテストデイ」で試乗した3台のポルシェ・クラブスポーツ・モデル。それぞれが、サーキット走行に最初の一歩を踏み出そうとするビギナーから、GT3レースで走れるレベルの上級アマチュアにいたるまで、幅広いドライバーのニーズを満たす、いかにもポルシェらしい製品だった。3回に分けてお届けしたレポートが、GENROQ Web読者のモータースポーツ・ライフを豊かにする参考になれば幸いだ。
REPORT/田中哲也(Tetsuya TANAKA)
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)
https://www.youtube.com/watch?v=w4CPUsJ2G_g
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ718ケイマンGT4クラブスポーツ
ボディサイズ:全長4456 全幅1778 全高1238mm
ホイールベース:2456mm
車両重量:1320kg
エンジン:水平対向6気筒DOHC
総排気量:3800cc
ボア×ストローク:102.0×77.5mm
最高出力:313kW(425hp)/7500rpm
最大トルク:425Nm/6600rpm
圧縮比:12.5
トランスミッション:6速PDK
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後マクファーソンストラット
ブレーキディスク(ディスク径):前後ベンチレーテッドディスク(前後380mm)
ブレーキキャリパー:前6ピストン 後4ピストン
タイヤサイズ(リム径):前25/64-18(9.0J)後27/68-18(10.5J)
【問い合わせ】
ポルシェ カスタマーケアセンター
TEL 0120-846-911
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