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新型 ボルボS60 T5 Rデザインに試乗 秀でた内装とルックス 価格帯のベスト

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新型 ボルボS60 T5 Rデザインに試乗 秀でた内装とルックス 価格帯のベスト

もくじ

どんなクルマ?
ー 見た目通りのモダン・ボルボ
ー 英国の場合当面はT5 Rデザインのモノグレード
どんな感じ?
ー 250psの前輪駆動に8速ATの組み合わせ
ー 常に穏やかで感じの良い相棒
ー プレミアムらしい充実の標準装備
「買い」か?
ー セグメントを超えた価格帯ベスト
スペック
ー ボルボS60 T5 Rデザインのスペック

最新G20型BMW 330e プラグイン・ハイブリッド プロトタイプに試乗

どんなクルマ?

見た目通りのモダン・ボルボ

アメリカでは、フレーバーの異なるチョコレートが入ったアソート・パッケージでも、個別にどんな味かがわかるラベルを貼ることはしない。フォレスト・ガンプでお母さんが話していたとおり、人生で自身が掴んだものがどんな内容なのかは、実際に味わってみるまでわからない。

一方で英国では、どんなフレーバーのチョコレートなのか、事前にちゃんと知っておきたいと考えるひとが多い。殆どの場合、フレーバーのわかるキャプションやイラストが、包装にしっかり描かれている。日本でも同様だろう。アソートチョコレートを人生に例えたお母さんの話は、ちょっと通じ難かったりする。

それでは、アメリカで初めて製造されることになったボルボS60は、アメリカ流チョコレートのように、見た目だけでは期待しにくい中身なのだろうか。結論からいうと、近年のボルボの高性能モデルに対して興味を抱いている読者なら、このS60も、アピアランス通りの優れたボルボだと感じるだろう。そもそも、新しいボルボは、基本的に同じフォーミュラに則って生み出されているのだから。

特にエクステリアデザインは、このクラスでは最も優れた仕上がりだと思う。読者の印象も良いはず。2018年の英国AUTOCARデザインアワードをXC40は受賞しているが、S60もモデルファミリーとして、その共通性を備えている。

英国の場合当面はT5 Rデザインのモノグレード

優れたボディのプロポーションと、控え目で穏やかなスタイリング。かといって、マトリョーシカのようにサイズ違いで同じデザインというわけでもなく、個別のモデルとしての充分な個性も獲得している。昨今のBMWよりもルックスが良いという点は、かなりのストロングポイントになっている。

ボルボの各モデルの場合、セグメントに適合させる要素も外していない。S60なら、最近での平均身長とも呼べそうな、程よい4.7mの全長を備えたサルーン。フォード・モンデオからBMW3シリーズまで、ライバルは数多。ボルボはこのS60を、Dセグメント・モデル郡の中でも最上側に属するプレミアムモデルだと主張するはず。

一方で優れたデザインにも後押しされつつ、自然の流れというべきか、SUVメーカーに近い状況にあるのが最近のボルボ。XC90から60、40までの販売数を考えてみて欲しい。ファミリー向けのサルーンというマーケットが縮小する一方の現在では、ライバルの数の多さも相まって、S60が市場での主流を獲得するのは難しいのかもしれない。

特に現時点で用意されているのがモノグレードのみということも、気になる点ではある。英国での展開は、4気筒の2.0ℓエンジンを搭載したT5 Rデザイン・グレードのみ。追って複数の選択肢が用意されるはずだが、エンジンは2.0ℓが最も大きな排気量となる。ディーゼルエンジンの用意もないようだ。

どんな感じ?

250psの前輪駆動に8速ATの組み合わせ

当面は唯一の選択肢となるT5だが、「T」はガソリンエンジンを指し、その後の「5」は最高出力の大きさを表している。別の仕向仕様では数字がより大きいグレードも存在し、それは8まで。11くらいまで増えると痛快なのだけれど。

T5の場合、最高出力は250psとなり、前輪を駆動する。米国に導入されるT8の場合なら、最高出力は399psとなり4輪駆動となる。ボルボの広報担当者によれば、「英国にも時間をおいて、より多くのグレードと、異なるパワートレインが導入される予定です」 と話していたから楽しみだ。

T5はボルボの大型モデルに共通するプラットフォーム、SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ)をベースにしており、トランスミッションは8速ATが採用されている。基本的にスチール製のモノコック構造で、エンジンはフロントに横置き。他のボルボ製のクルマと同様に、前輪後輪ともにモーターによるアシストも可能となる構造となる。ボルボは今のところ、ディーゼルエンジンには距離を置いている。

インテリアは、エクステリア以上に共通する雰囲気を漂わせている。ボルボはスカンジナビアン・デザインのまとめ方に当面のスタイルを確立したといえる。優れたシートに幅広く調整が効くドライビングポジション。円形のステアリングホイールに見やすい計器類、縦長の大きなタッチモニターという要素が特徴となる。

常に穏やかで感じの良い相棒

車内のコーディネートは良いし、機能面で不満に感じることもない。少なくとも操作に対するレスポンスも素早く、レーンキープ・アシストをオフにすると、次回スタートした時も設定を記憶しておいてくれる。ただし、物理的なボタンをなくすという名目で、モニターで操作できる項目が増やされているが、少し機能が集約され過ぎていると感じる。

ラゲッジスペースも十分な容量がある。身長の高いドライバーが座ったポジションでも、後部座席には同等の身長の大人が問題なく座れる空間が確保できる。

アダプティブ・ダンパーとドライビングモードの選択も可能で、センターコンソールにはそれぞれ独立したボタンが備わっている。変更してもさほど大きな変化はなく、次の車検までいじらないドライバーもいそうだ。ドライビングモードに関わりなく、燃費は10.6km/ℓくらいは走るし、常に穏やかで感じの良い相棒に徹する。しっかり煮詰められ、洗練され、明快な仕上がりを得ている。

ボルボの最新の4気筒ユニットの場合、組み合わせによっては改善の余地が残っている場合もある。しかし、S60との相性はかなりイイ。エンジンは静かに滑らかに回転し、接続される8速ATもスムーズで、予測的に動作する変速タイミングも評価できる。

ただし、赤信号などでクルマを停止させる時の振る舞いはどうだろう。止まる数メートル手前でエンジンが自動的にストップしてしまうから、振動もなくするりと優雅に静止させることが難しいのだ。リラックスさせてくれるようなクルマの雰囲気に、似つかわしくない所作だと思う。

プレミアムらしい充実の標準装備

試乗車のタイヤサイズが、オプションとなる19インチで235/40という扁平率もあって、乗り心地はしなやかというよりも硬め。決して悪い印象ではないものの、タイヤのサイドウォールに余裕があり、バネ下も軽くなるであろう、標準装備の18インチに235/45の組み合わせの方が快適性は上だろう。

ハンドリングは落ち着きがあり安心感が強い。刺激的なものではない分、常に余裕が感じられ、リラックスして走らせられる。ステアリングレシオも穏やかな比率だが、ステアリングホイールの重み付けは好印象で、セルフ・センタリング性にも優れている。

今回のクルマだが、ホイールは別として、広報車にありがちなオプション満載というわけではない。ボディのメタリック・ペイントに珍しいスペアタイヤが追加された、Rデザイン・エディションという設定で、価格は標準の3万7920ポンド(549万円)から3万8745ポンド(561万円)へと12万円高くなった程度。欲しいと感じるほとんどの装備は、予め盛り込まれていると考えて良い。

この価格は、間違いなくプレミアムな設定で、それなりの金額が求められるファミリーカーではある。減価償却の面ではやや良好ではあるが、他ブランドのモデルより値ごろ感で弱いのがボルボ。価格を意識すると、エグゼクティブサルーンとして、アウディやBMW、メルセデス・ベンツなども当然視野に入って来るのではないだろうか。

「買い」か?

セグメントを超えた価格帯ベスト

ちらりと外野が目に入っても、S60はアウディA4やメルセデス・ベンツCクラスだけでなく、大型のファミリーサルーンの大部分を超える、高い実力を備えていると思う。

私感では、BMW3シリーズの卓越した乗り心地とハンドリングは大きく引きつける力があることは確か。しかし、アルファ・ロメオ・ジュリアやジャガーXE、キア・スティンガーなどの持つハンドリングだけでは、ボルボの車内空間の魅力を凌駕することは難しいだろう。

セグメントにとらわれなければ、この価格帯には従来にも増して、かなりの種類のモデルが存在している。大型のファミリーサルーンにプレミアム・コンパクトサルーン、クロスオーバー。20種類くらいなら、簡単に読者もアソートのリスト挙げられるだろう。だが、何台比較対象を持ち出したとしても、恐らく新しいボルボS60は、その中のベストの美味しさだと言いたい。

ボルボS60 T5 Rデザインのスペック

■価格 3万7920ポンド(549万円)
■全長×全幅×全高 4761✕1850✕1437mm
■最高速度 233km/h
0-100km/h加速 6.5秒
■燃費 12.5km/ℓ
■CO2排出量 155g/km
■乾燥重量 1686kg
■パワートレイン 直列4気筒1969ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 250ps/5500rpm
■最大トルク 36.0kg-m/1800-4800rpm
■ギアボックス 8速オートマティック

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