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フランスの“オシャレEV”の魅力とは? DS E-TENSE試乗記

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フランスの“オシャレEV”の魅力とは? DS  E-TENSE試乗記

フランスのプレミアム・ブランド「DS」は、今後、電動化を一気に進める。2025年までにEV(電気自動車)ないしはPHV(プラグ・イン・ハイブリッド)をすべてのモデルに設定するという。

今回登場した「DS 3 クロスバック E-TENSE」は、ブランド初のピュアEVである。もとになるのは、日本でも販売中のコンパクトSUV「DS 3 クロスバック」。

EVであることが目立たない素晴らしさ。メルセデス・ベンツEQCはあくまで“ベンツ”だ

筆者は今回、フランス本国で短時間かつ短距離ながら試乗した。試乗の発着会場になったパリ郊外のホテルの前にずらりと並ぶDS 3 クロスバック E-TENSEは、外観では通常の内燃機関搭載モデルと大きな違いはない。

よく見ると、EV化によってエキゾースト・パイプはないし給油口のかわりに充電口がある。ボディカラーはEV専用の「パール・クリスタル」が選べるほか、フロントのバッヂには「E」の文字が入っている。

【主要諸元(欧州仕様)】全長×全幅×全高:4118×1802×1534mm、ホイールベース2558mm、車両重量1525kg、乗車定員5名、モーター136ps/260Nm、トランスミッション:電気式無段変速機、駆動方式FWD、価格未定。給電口はボディのリアサイドにある。フロントバッヂは“Eの文字が入った専用デザイン。リアゲートに装着される“E-TENSE”の専用バッヂ。クルマに近づくと、DS 3 クロスバック シリーズの特徴である電動格納式ドアハンドルが、前にせり出す。室内に乗り込むと、ほぼ内燃機関搭載モデルとデザインは変わらない。

EV化による違いは、専用のメーターパネル(フルデジタル)や「E」の文字入り専用シフトノブぐらい。ひし形をモチーフにしたインパネ・デザインは相変わらず個性的だし、上質なレザーを使ったシートは座り心地がよい。

ドアハンドルは電動格納タイプ。インテリアデザインは内燃機関搭載モデルとほぼおなじ。オフホワイトのレザー仕様も選べる。電気式無段変速機のセレクターレバーはEの文字入り。今回の試乗コースは、パリ市街の西南地域を約90km走るルート。ただし、ふたりで1台だったため、試乗出来たのは約半分の距離、つまり40km程度だった。

筆者はまず助手席に座った。運転席に座ったモータージャーナリストのNさんが、早速電源を入れるべくスウィッチを押すと、ピコンという電子音とともにシステムが起動した。

出発時は満充電状態で、メーターパネルの航続可能距離は230kmを示していた(外気温は4℃)。WLTPモードの走行可能距離が320kmだから、その約7割である。

エネルギーフローは、インフォテインメント用モニターでも確認できる。走り出してすぐ、ユニークなウインカー音に気づく。筆者は日本でもDS 3 クロスバック(ガソリン・エンジン搭載モデル)に1度乗ったことがあるが、この音には気づかなかった。それだけ車内が静かなのである。EV化に伴い吸音材などの配置をあらためて見直した結果、静粛性が高まったそうだ。

最高速度は150km/h。市内を少し走り、高速道路に乗る。ガソリン・モデルよりも車両重量が320kg重いせいか乗り心地は重厚だ。フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームのサスペンション形式は内燃機関搭載モデルと変わらない(細かなセッテイングは違う)。

レザー×ファブリックのコンビタイプのシートは大柄で、座り心地もよく、乗り心地の良さとも相俟って、全長4.2mに満たないコンパクトSUVに乗っているという感覚はない。ボディの動きは終始フラットで、上質な乗り心地は快適そのもの。

静止状態から100km/hまでに要する時間は9秒。ドライバーがドライブモードを「スポーツ」に変更し、アクセル・ペダルを踏み込むと、身体がシートバックにグッと押された。さすがは最大トルクが瞬時に立ち上がるEVである。搭載するモーターのスペックは、最高出力136ps、最大トルク260Nm。静止状態から100km/hまでに要する時間は9秒だ。ただし、最高速度は150km/hに抑えられている。

「これはいいなぁ」と、しきりに話すNさん。途中、運転を変わったが、たしかに運転してすぐ「これはいいなぁ」と、筆者も思った。

日本導入は2020年予定。メーターパネルはフルデジタル。表示方法は複数パターンから選べる。最大トルクが瞬時に立ち上がるEVだから、アクセルを踏み込めば、ギュインと加速する。とくに、頻繁な加減速の多い都市部の運転にピッタリだった。

また、ブレーキのフィーリングが内燃機関搭載モデルと似ていたのも好印象だった。「内燃機関搭載モデルとの差、違和感を極力減らしました」と、メーカーが言うだけのことはある。日本のハイブリッド・カーやEVと比べ、回生を弱めているのだ。ちなみに、ギアセレクターには、より強い回生を得られる「B」のポジションもある。

試しにBを選ぶと回生は強くなるものの、たとえば日産「ノート e-POWER」などと比べれば弱い。冒頭のプレゼンでは「ワンペダル・ドライブも実現しました」とのことだったが、アクセルペダルのオン・オフだけでの速度調整は、たとえBレンジであっても少々難しかった。回生が弱いのである。ホンダ「アコード」やメルセデス・ベンツ「EQC」などのように回生の強弱を任意で変更出来る度合いがもっとあればいいのになぁ、と思った。

走行可能距離は10km単位で表示される。かなり大づかみだ。航続距離が残りわずかになったときは不安だろう。ちなみに日産「リーフ」では1km単位で表示される。

通常時のラゲッジルーム容量は350リッター。DS 3 クロスバック E-TENSEの想定されるライバルはボルボ「XC40」やレクサス「UX」のEVモデル、マツダ「MX-30」など。

ただし、これらモデルに対し内外装デザインの独創性は一歩抜きん出ていると思う。個性的なEVを求める人にとって、DS 3 クロスバック E-TENSEは興味深い1台になりそうだ。

0-100km/h、5.9秒の俊足!翌日、PHVのDS 7 クロスバックE-TENSE 4×4に試乗した。内容は、半分が高速道路、のこり半分がオフロードだった。DS 3 クロスバック E-TENSEとおなじく、こちらも試乗距離は40km程度だった。

【主要諸元(欧州仕様)】全長×全幅×全高:4573×1906×1621mm、ホイールベース2738mm、車両重量1825kg、乗車定員5名、エンジン1598cc直列4気筒ガソリンターボ(200ps/6000rpm、300Nm/3000rpm)+モーター(フロント110ps/320Nm、リア112ps/166Nm)、トランスミッション8AT、駆動方式4WD、価格:-。LAURENT NIVALLE試乗車は満充電状態で、EV走行可能距離は34kmとメーターパネルに表示されていた。WLTPモードは58kmだから、約6割の数値である。

メーターパネルなどインテリア・デザインは、DS 3 クロスバック E-TENSE同様、内燃機関搭載モデルとほぼ変わらない。試乗車は「GRAND CHIC」という上級グレードだったため、ナッパレザーを使ったシート(フロント&リアともに電動調整式)やB.R.M.社製アナログウォッチやFOCALのプレミアム・オーディオ付きだった。

Base de donnée : Astuce Productionsナッパレザーを各所に使ったインテリア。セレクターギアなどは電動モデル専用デザイン。William CROZESBase de donnée : Astuce Productionsフロントシートはマッサージ&ヒーター機構付き。リアシートは電動リクライニング機構付き。CROZES William (439)ラゲッジルーム容量は555リッター。走り出してすぐ、DS 3 クロスバック E-TENSE以上に静粛性が高いことに気づく。訊くと、フロント・ウインドウなどに、高遮音性ガラス「アコースティック・ガラス」を採用しているとのこと。

乗り心地は重厚である。高速道路ではとくに、ボディ上下の揺れが抑えられ快適だった。内燃機関モデルより125kg重い車両重量(1825kg)と、電子制御式サスペンション「DSアクティブスキャンサスペンション」との相乗効果によるものだろう。

DSアクティブスキャンサスペンションとは、フロントガラスに装着されたカメラで前方の路面を常時ハイスピードスキャンし、通過する路⾯の凹凸を事前に識別、4輪のショックアブソーバーの減衰⼒をリアルタイムで最適に電⼦制御するシステムである。荒れた路面を走ったときにシステムのオン/オフを試したが、オンのときのほうが路面からの突き上げが少なく快適だった。

EVモードの最高速度は135km/h、ハイブリッドモード(エンジン+モーター)の最高速度は235km/h。トランスミッションは8AT。セレクターギアは“E”のロゴ入り。快適な乗り心地にくわえ、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)やLKA(レーン・キープ・アシスト)など最新の運転支援システムを搭載するから、高速道路は楽チンだった。くわえて、たっぷりと厚みのあるレザーシートは、意外なほど強力なマッサージ機能付きなのも嬉しい。

走行モードを「スポーツモード」に切り替え、アクセルを床近くまで踏み込むと、力強い加速感を瞬時に味わえた。エンジン+モーターのシステム総最高出力は300ps、最大トルクは520Nmに達するだけのことはある。静止状態から100km/hまでに要する時間はわずか5.9秒だから、ハイパフォーマンSUVなのである。しかも、スポーツモードのエンジン音は、電子的にチューニングされているせいか、V型8気筒自然吸気エンジンっぽい音がするのも面白い。

エンジン+モーターのシステム総最高出力は300ps、最大トルクは520Nm。Base de donnée : Astuce Productions給電口はボディ後端の左側にある。William CROZES悪路走破性も向上モーターのみで走行するEVモードは135km/hまで対応するから、高速道路も電力のみで十分走行可能。なお、通常は前輪を駆動するが、EVモードでは後輪を駆動する。

必要であれば4WDモードも選べる。今回、簡単なオフロードコースを4WDモードで走行する機会もあったが、結論から言うと、走破性は大幅に高まっていた。

もっとも、内燃機関搭載のDS 7 クロスバックはFWD(前輪駆動)のみ。オプションで、トルク&ブレーキを緻密に制御し、悪路走破性を高める「グリップコントロール」を装着すれば、それなりに雪上や砂地を走れるけれど、FWDだから限界はある。

したがって、4WD化によって「悪路走破性が大きく高まりました」と、商品担当者が自信たっぷりに話すのは納得である。

最低地上高は190mm。E-TENSE 4×4の専用エンブレム付き。試乗したオフロード・コースは、ほとんどが平地のマッド路面だったが、急勾配の下り&登り坂、浅い水場もあった。デモ走行中のFWDモデルがスタックしているなか、E-TENSE 4×4はなにごともなく進んでいく。4輪がしっかりと路面を掴んでいるのがよくわかる。俗に言う“生活ヨンク”以上の性能を有するから、日本の都市部ユーザーには十分すぎるほどの性能だろう。

DS 7 クロスバックE-TENSE 4×4は、内燃機関搭載モデルの独創性とスタイリッシュさはそのままに、悪路走破性を含む走行性能や静粛性、快適性が大幅に向上していた。

DS 3 クロスバック E-TENSE とDS 7 クロスバックE-TENSE 4×4に試乗し、DSの電動化は、既存モデルをより魅力的にしているのがよくわかった。日本導入が楽しみな2台である。

文・稲垣邦康(GQ)

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