1958年:シトロエン2CV サハラ
シトロエンは、頑丈で簡素な四輪駆動モデルを開発し、アフリカで販売数を稼ぎたいと考えていた。予算に余裕がある、石油業界や鉱物業界へ受け入れられると考えた。
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いくつかのアイデアが試されたが、実際に生産へ至ったのが2CV サハラ。フロント側と同様に、リア側にもエンジンとトランスミッションを搭載し、四輪駆動を実現するという、驚きの内容だった。
エンジンが2基載っていても、軽いシャシーのおかげで悪路性能は高かった。しかし2CV サハラは支持を集められず、694台の生産に留まっている。リアエンジンをタイヤから切り離しても、最高速度が56km/hに留まったことが原因の1つだろう。
1961年:ファーガソン99
ファーガソン・リサーチ社は、スポーツカーにおける四輪駆動システムのパイオニアだ。レーシングカーの99は、その最たる作品といっていい。F1マシンとして、フロントエンジンの四輪駆動を採用した初めてのモデルだった。
シャシー前方へ斜めに載ったエンジンからドライブシャフトが後方へ伸び、ドライバーはそれを避けるようにオフセットした位置に座った。レギュレーションの変更に伴い、思い描いたような活躍は残せていないが。
それでも、伝説的レーシングドライバーのスターリング・モス氏によって、1961年のオールトンパーク・インターナショナル・ゴールドカップへ参戦。勝利をもぎ取っている。このレースは、シーズン・チャンピオンを掛けたイベントではなかったけれど。
1962年:ジープ・ワゴニア
ランドローバー・レンジローバーが発売される8年前、ジープはラグジュアリーな四輪駆動モデルという、画期的なコンセプトを量産車へ落とし込んだ。そのワゴニアは、現在の高級SUVの先駆けといえるだろう。
ステーションワゴンのボディに豪華なインテリアを備え、四輪駆動のドライブトレインを搭載。後輪駆動へ切り替えることも可能としていた。シャシーとサスペンションは、質実なピックアップトラック用ではあったが。
サルーンのリアを伸ばしたステーションワゴンほどの快適性はなかったものの、実用性と豪華さという組み合わせは、ドライバーのライフスタイルを刺激。オリジナルのデザインへ手を加えながら、1991年まで初代ワゴニアの生産は続いている。
1966年:ジェンセンFF
英国のジェンセンはファーガソンと手を組み、2ドアクーペのインターセプターを高性能な四輪駆動モデルへコンバージョン。FFとして販売した。
このFFという名称は、ファーガソン・フォーミュラ4x4の頭文字。トランスミッションの横にトランスファーを搭載し、フロントアクスル側へ駆動力を伝達していた。
通常のインターセプターとの見た目の違いは、長いホイールベースと、2本のサイド・エアアウトレット、ボンネットのエアインテークなど。エンジンは同じクライスラー由来のV型8気筒が載っていた。
意欲的なクーペといえたものの、製造数は320台に留まった。トランスファーの位置が原因で、北米市場向けの左ハンドル仕様を作れなかったことが大きな影を落とした。
1970年:ランドローバー・レンジローバー
ジープ・ワゴニアへ続くように、ランドローバーはラグジュアリーな四輪駆動モデルの開発へ着手。有能なレンジローバーが誕生する。オンロードでの秀でた快適性と、オフロードでの抜群の走破性を融合させ、高級SUVの代表としての地位を確立した。
初代ランドローバー、ディフェンダーを選択肢に加えてこなかった、都市部のユーザーにも訴求する内容だった。垢抜けたスタイリングは、市街地にもよく馴染んだ。
とはいえ初代レンジローバーは、リジットアクスルにセパレートシャシー構造を備え、内容は本格派。コイルスプリングのサスペンションと、ローバー製のV8エンジンが、上質な走りを叶えていた。
1972年:スバル・レオーネ
スバル1600として英国でも親しまれた初代レオーネの四輪駆動版は、1972年に登場。英国仕様ではレオーネのエステートバンは四輪駆動が標準で、1977年から販売されている。
舗装路での走りが安定していただけでなく、悪路や滑りやすい路面では驚異的な順応性を披露。グレートブリテン島でも、農家や郊外のドライバーから多くの支持を集めることになった。
レオーネは、スバルのモデルラインナップの礎になっただけでなく、他メーカーも含めて、四輪駆動ファミリーカーの元祖だともいえる。同じプラットフォームをベースにしたピックアップトラック、ブラッドも存在し、クラシックカーとして人気は上昇中だ。
1979年:AMCイーグル
スバル・レオーネのコンセプトに影響を受けたのが、北米のAMC。ステーションワゴンとサルーン、2ドアクーペとコンバーチブルがラインナップされていたイーグルに、四輪駆動を設定した。
北米基準ではコンパクトカーに該当したイーグルは、センターデフとビスカス・カップリングによる四輪駆動システムを採用。前後のアクスルへ、必要なトルクを伝達することを可能にしていた。
エンジンは2.5Lか4.2Lという構成で、フロント・サスペンションは北米の四輪駆動モデルとしては初となる独立懸架式。その結果、運転しやすく快適な全天候型ファミリーカーに仕上がっていた。
1980年:アウディUrクワトロ
オンロード・モデルに、四輪駆動システムを採用したアウディ。スバルから数年遅れての登場ではあったが、今ではブランドイメージを牽引する技術へ進化している。四輪駆動を示すクワトロは、同社を象徴する単語といってもいい。
その先陣となったクーペ、Urクワトロは、今でも魅力的なクーペだと思う。ラリー界にも革命的なインパクトを与えた。世界ラリー選手権で優勝台へ登るには、四輪駆動が不可欠になったほど。
200psを発揮したパワフルな5気筒ターボエンジンも、Urクワトロの成功を導いた。後期型では20バルブ化されパワーアップし、220psを発揮。センセーショナルなほど高速な四輪駆動のスポーツカーだった。
1982年:スズキSJ(ジムニー/SJ30・40型)
スズキは1970年代初頭から、小さく実用的なオフロードモデルを提供してきた。その進化版に当たるSJ30・40型は、2代目ジムニーとして大ヒットを記録している。
コンパクトで運転しやすいパッケージングに、シンプルで無駄のないスタイリングと、優れたオフロード性能を併せ持ち、現代に続くジムニー人気のきっかけを生んだ。農場での実務から子供の送迎まで、幅広く活躍してきた。
ローレシオ・トランスファーが組まれ、後輪駆動と四輪駆動を切り替えられることが特長。小さく軽い車体も、走破性を担保していた。ルーフのないコンバーチブル仕様も、手軽にオープンエアを楽しめるオフローダーとして支持を集めている。
この続きは後編にて。
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