第102回インディアナポリス500マイルレースで優勝したウィル・パワー。レース翌日にインディアナポリスのホテルで開催された表彰パーティ“ビクトリー・セレブレーション”で発表された優勝賞金は2,525,454ドル(約2億7500万円)だった。
この勝利はチーム・ペンスキーにとっては2015年のファン・パブロ・モントーヤ以来で、伝統のレースでの17勝目。インディカーでは201勝目の勝利だ。
ロジャー・ペンスキーのチームで走るドライバーには、インディ500で勝つことが求められる。そのプレッシャーは非常に大きい。パワーは今年がペンスキーで走る10年目。先輩チームメイトのエリオ・カストロネベスは3勝を飾っていて、2015年にチーム入りしたファン・パブロ・モントーヤはその年にパワーを打ち負かして優勝した。"500"で勝てていないことにパワーは危機感を持っていたはずだ。
ペンスキー入りして間もない頃、パワーは「オーバルレースは好きじゃない」と公言し、「あれはマシンのレースで、ドライバーのレースではないから」と理由を説明していた。オーバルレースの本質がわかっていいなかったのだ。
しかし、時間の経過とともにオーバルレースの奥深さを理解し、繊細なマシン作り、コンディションの変化への対応、コース上での駆け引きを楽しむようになり、フォンタナの2マイル、ポコのトライアングル2.5マイルで見事な勝利を重ねた。2017年のポコノでの勝利は、パワーらしさがフルに発揮されたオーバルでの500マイルレース制覇だった。
2005年にチャンプカーでアメリカデビューしたパワーは、昨年までで31勝を重ねてきた。ミスも多いが勝利はもっと多いドライバーで、インディ500決勝の約1カ月前に行われたアラバマ州バーミンガムでの第4戦では出場23台の中で唯一雨に足を掬われてクラッシュ、リタイアを喫した。
しかし、インディアナポリスのロードコースで開催されたインディカー・グランプリで優勝。一転、勢いを身につけてインディ500に臨むこととなった。そして今年のインディ500を一切のミスなく走り切った。
オーバーテイクの難しい新エアロ装着でのレースで、マシンをベストに仕上げ、序盤からハイペースを保ってライバル勢に前を走らせなかったパワーには天も味方し、燃費作戦でギャンブルに出た幾つものチームはあと少しのところで勝機を逃した。
「アラバマのレースの後に態度を変えることにした。何でもポジティブに考えるようにした。そうしたら5月は素晴らしい1カ月になった」とパワーはビクトリーレーンで語った。
悲願のインディ500優勝をついに達成したパワー。表彰パーティでのスピーチも力の抜け具合がよかった。大きな栄冠を手にした喜びと、肩の荷が降りた安堵感とが表情にも言葉にも現れていた。
パワーが喜びに浸っていられる時間はあまりない。表彰式の後はインディ500ウイナー恒例のニューヨークへ飛び、テレビ、ラジオへの出演など分刻みのスケジュールで一大プロモーションを行わなくてはならない。そして金曜日には次戦デトロイト、それもダブルヘッダーが待っている。
インディで勝ったパワーの次なる目標は何か? それは当然、2014年以来2回目のシリーズ・タイトル獲得だ。500優勝と同じ年にタイトルも手に入れられたら、それ以上のシーズンは望めない。インディでシーズン2勝目を挙げたパワーは、アラバマでのミスを帳消しにしてポイント・リーダーにもなっており、夢の実現は決して不可能ではない。
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