現在の推定価格は9億円以上
ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7が残した戦績は、一見すると崇拝を集めるほどではないかもしれない。だが、グッドウッドのヒルクライムコースで攻め立てた、このレーシングカーのことを、お伝えしないなどありえない。
【画像】グループ5プロトに続く総合4位 ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7 917Kと最新911 GT3 RSも 全117枚
このRSR 3.0 R7は、現存しているコンペティション・ポルシェとして、歴史的な重要性が高い1台であることは間違いない。50年前のル・マン24時間レースを完走し、総合4位を勝ち取ったマシンそのものだ。
現在の推定価格は、500万ポンド(約9億500万円)以上。その事実を知っているだけに、緊張は最後までほぐれなかった。ワイパーが動かず、撥水剤がフロントガラスに塗ってあるものの、気休めでしかない。しばらく、この記憶が鮮明に蘇ってくるだろう。
このマルティーニ・カラーのRSRには、R7が振られている。ポルシェ自らの手で8台が作られたワークスマシン、「R」の1台で、派手なストライプが与えられたのは4台。現存するのは3台で、R7が最もオリジナル状態へ近くコンディションも良いという。
1973年のル・マンで1位から3位を奪ったのは、F1マシンの延長のようなグループ5のプロトタイプ・レーサーだった。それに続く総合4位という結果が、驚くほどの価値を生んでいる。
基本的には、公道を走るポルシェ911の延長上にあるクルマといえた。1972年にポルシェの会長へ就任したエルンスト・ファーマン氏は、それが重要なポイントだったと、後に振り返っている。
モータースポーツへ理想的な軽いベースモデル
プロトタイプのポルシェ917が1969年から成功を収めていたが、そこへ投じられた費用は明らかに巨大なものだった。公道用モデルの販売へ結びつけるという、重要な役割から距離が空きすぎているとも判断された。
量産車をベースとした1970年代の主力レース、グループ4シリーズの厳しい競争を勝ち抜くには、高い戦闘力を持つマシンが必要だった。かくして、レーシング・スポーツの名を冠した、伝説のカレラRSが導かれた。
発表されたのは、1972年10月のパリ・モーターショー。参戦には規定で500台以上の量産が必要とされ、1973年4月までにポルシェはクリアした。
ベースとなった911用2.4L水平対向6気筒エンジンは、2687ccへ拡大。最高出力は213psまで高められ、シャシーや空力特性にも大幅な手が加えられた。モータースポーツへ理想的といえる、軽量なベースモデルが完成していた。
しかし、このRSはポルシェが目指した高みの足がかりに過ぎなかった。彼らの目的を本当に具現化していたのが、カレラRSRだ。
カレラRSは1580台生産されたが、RSRとしてM491のコンバージョン・コードが与えられたのは55台。通常の量産ラインからスチール製ボディシェルが適宜抜き取られ、RSと同じく軽いフロアパンが組み付けられ、サスペンションマウントが強化された。
このR7でも、追加溶接されたプレートを確認できる。それでも、基本的なシャシー構造は911のままともいえた。サスペンションはフロントがストラット式で、リアがセミトレーリングアーム式だ。
917用ホイールとブレーキを包むフェンダー
とはいえ、トーションバーなどを除き、殆どのコンポーネントが特別だった。ストラットのトップマウントに調整機能が追加され、専用のアンチロールバーとクイックなステアリングラックで身のこなしを引き締めた。
カレラRSRで最大の変更点といえたのが、917をベースとしたブレーキ。クロスドリル加工されたベンチレーテッド・ディスクに、冷却フィン付きの4ポッドキャリパーという構成で、バランス調整機能も備わっていた。
これを隠すように、フロントが9J、リアが11Jという、ワイドなフックス社製のアルミホイールが組まれた。特別なワークスマシンのR7は、917と同じ11Jと14Jという、極太のセンターロック・ホイールで武装していた。
そのタイヤを包むべく、フェンダーも壮観なほどに広げられた。スコットランド女王の衣装にちなんで、英国では「メアリー・スチュアート」と呼ばれる、リアウイングも載せられた。いつも以上に、グッドウッドのコースサイドが近く感じる理由でもある。
シャシーを入念に補強した結果、重量は増えた。これを相殺するため、前後のフェンダーには薄いスチールを採用。エンジンリッドとボンネット、一体型のフロントバンパーはFRPで成形され、フロントガラスも薄肉化された。
最終的に、車重は839kgに仕上がった。カレラRS 2.7 ライトウェイトより、80kg近く軽かった。
ル・マン用エンジンは最高出力334ps
1973年シーズンに、ポルシェは3種類の水平対向6気筒エンジンをカレラRSRで試している。いずれも、RS用のドライサンプ空冷オールアルミ・ユニットがベース。ミュルザンヌ・ストレートを290km/hで疾走できるほど強力で、耐久性は高かった。
1種類目がタイプ911/72。当初はワークスチームも用いたが、主にプライベートチームのRSRに積まれ、ボアを2mm広げることで2806ccの排気量を得ていた。ニカシル加工されたシリンダーライニングには、マグネシウムではなくアルミが用いられた。
コンロッドにはチタンを採用。ピストンは鍛造で、圧縮比は8.5:1から10.3:1へ向上した。バルブは大きくなり、専用のボッシュ社製機械式インジェクションがガソリンを供給。ヘッドはツインスパーク化され、カムシャフトは4枚のベアリングが支えた。
完璧なサーキット・パッケージといえる内容で、最高出力は312ps/8000rpmを達成。最大トルクは29.9kg-m/6200rpmで、カレラRSから大幅な強化を実現していた。
さらに、ワークスマシンのR用ユニットが誕生したのは1973年4月。タイプ911/74と呼ばれ、排気量は2993ccへ拡大。最高出力は319psへ強化されていた。
ル・マン24時間レースへ向けて開発されたのが、タイプ911/75。一層高度なチューニングが施され、R7の場合は334psまで引き上げられていた。
この性能差を踏まえ、ポルシェのワークスチームは1973年のル・マン24時間レースをプロトタイプ・クラスで戦った。通常のRSRで挑んだプライベートチームにも、クラス優勝の可能性が残された。
この続きは、ポルシェ911 カレラRSR 3.0 R7(2)にて。
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みんなのコメント
プライベーターにも売られたはず
現存する個体はそれぞれ有名なコレクタが所有してたはずだけど…その一台?