ターボやターボSの性能は本当に必要か?
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
もしポルシェ・タイカンの購入を考えているのなら、まず初めに確認したいグレードが4S。追加の3万2000ポンド(448万円)か5万5000ポンド(770万円)を支払って、さらに高性能なターボやターボSが本当に必要なのか、自問した方が良いだろう。
恐らく一度も発揮することがないであろう過剰気味のパワーや、必要と思えなさそうな装備類、トランクリッドに追加されるエンブレムがなくても良いのなら、4Sを選ぶべき。残ったお金は別の所で活用できる。
多くのドライバーにとって、4Sこそタイカンの看板メニューだといえる。トップグレードでないと揶揄されるのでは、という不要な虚栄心を持たない大人にこそ、筆者は4Sを強く推したい。
追加したいオプションは、4613ポンド(64万円)の大容量バッテリー。これはタイカン・ターボであっても標準装備ではない。オプションで79.2kWhから93.4kWhへと容量を大きくできる。
航続距離を伸延できるだけでなく、充電時間も短縮され、走行性能自体も高められる。すべての面でメリットがある。
現在のエントリーグレードとなるタイカン4Sだが、0-100km/h加速は4.0秒と不足は一切ない。電気モーターは瞬発的に最大トルクが得られるから、ドライバーによっては気持ちが悪くなるような加速体験にすらなり得る。
4Sはモーターやインバーターが異なる
そのまま加速を続けると、160km/hには8.5秒で到達。このダッシュ力に不満を感じるのは余程若々しい気持ちのドライバーくらいだと思う。
むしろロースペック側にあるタイカンですら、日常的な使用環境を超えた次元で、どんなスピードへも短時間に到達できる。望んだ通りの加速力で、望んだ通りのスピードで移動できるはず。
電気モーターはフロントとリアに1基づつ搭載されており、4輪駆動となる。ターボやターボSと変わらない。多くのEVと異なり、タイカンが採用するのは電圧800Vのシステム。
サスペンションは4輪ともにトリプルチャンバーによるエアスプリングを採用する。ポルシェ製のPASMアダプティブ・ダンパーも標準装備だ。
内容的に、タイカン 4SのパワートレインはターボやターボSのものと基本的に同一で、ソフトウエア制御の設定だけの違いでは、と疑うかもしれない。ソフトウエアを書き換えれば、タイカン 4Sに750psが与えられると想像するかもしれないが、それは間違い。
タイカン 4Sに搭載される2基のモーターは、ターボのものより一回り小さい。さらにターボをターボSにすることも難しいだろう。ターボに搭載されるインバーターは、4Sと同じ300アンペアだが、ターボSには600アンペアのインバーターが積まれているのだ。
タイカンに並ぶモデルは目下存在しない
モーターやインバーターの容量ではターボやターボSが上でも、93.4kWhバッテリーをオプションで積んだタイカン4Sが、航続距離の一番長いタイカンとなる。パフォーマンスによる電費の差だけでなく、車重も165kgもターボより軽量なことも影響している。
タイカン・ターボはあまりにも速すぎ、助手席の人を不安に感じさせる可能性もある。4Sの正気を保てる性能の方が、多くの人に歓迎してもらえると思う。
4Sとターボのパワートレインに越えられない壁があっても、シャシーの仕上りは見事。車重の重いターボSを試乗した際、その質量を制御下に留めていることに驚かされたが、少し軽量な4Sは一層良い。
2tを超える車重とハンドリング、乗り心地を、4S並みに巧妙にバランスさせている4ドアモデルには、お目にかかったことがない。パナメーラですら届かない。
リムジン並みの乗り心地の良さに、秀逸なステアリングの反応と正確性とを備え、ボディサイズは一回り小さく感じられるほど。ボンネットの下のエネルギー源を問わず、タイカンに並ぶことができるモデルは今のところ存在しないだろう。
かといって、運転を心から楽しいと感じられるクルマでもない。EVならではの即時的なパワーデリバリーに慣れてしまうと、新鮮味が薄まってしまうことは事実。筆者はまだ本当に運転が楽しいと思えるEVには出会えていないようだ。
最高評価を得るべきはタイカン4S
ポルシェ・タイカンは魅力に溢れ、ドライバーが得られる満足感や到達感も高い。目下のEVの中では、圧倒的な存在にあることは違いない。
AUTOCARで満点の評価を与えることは極めて稀だ。タイカン4Sの評価にはとても悩んだ。編集部に電話をして、試乗評価について検討する必要性すら感じた。
ポルシェ・タイカン4Sが、4ドアのEVというカテゴリーで突出した完成度を得ていることは明らか。現段階では満点を与えて良いと判断した。
S4を味わったいま、タイカン・ターボやターボSに満点を与えることはないだろう。4Sが、僅かなパフォーマンスの差に留めながら良好な航続距離を実現している中にあって、ターボをさらに高く評価することは難しい。
タイカンは4Sが登場する以前から、現在手に入るEVの中で最高の仕上りを得ていた。今回4Sが登場したことで、最高という評価を更新したといって良い。満点は4Sにこそ相応しい。
ポルシェ・タイカン 4Sのスペック
価格:8万6367ポンド(1209万円)
全長:4963mm
全幅:1966mm
全高:1381mm
最高速度:249km/h(リミッター)
0-100km/h加速:4.0秒
航続距離:333km-407km(93.4kWhバッテリー時 386-463km)
CO2排出量:0g/km
乾燥重量:2140kg
パワートレイン:交流同期モーター2基
バッテリー:79.2kWhリチウムイオン
最高出力:435ps(オーバーブースト時 530ps)
最大トルク:65.1kg-m(93.4kWhバッテリー時 66.1kg-m)
ギアボックス:2速オートマティック
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