名だたるバイクイベントを制した先にあるもの
アメリカ・コロラド州、パイクスピーク・ハイウェイを舞台に、現地時間の6月24日(日)に決勝を迎える「第96回パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(パイクスピーク)」。昨年、佐藤琢磨選手が優勝したことで話題となった、インディアナポリス500マイルレース(1914年から続いている歴史あるレース)に次ぐ2番目に古いレース(1916年スタート)である。このパイクスピークには、参戦する日本人ドライバー&ライダーを紹介しているが、今回は、参戦する選手ではなく、そのチーム代表、井上哲悟選手をサポートするブルーサンダースの岩野慶之代表だ。
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井上選手は、今回パイクスピークに初参戦する2輪ライダー。全日本ロードレース選手権(ST600)にも参戦経験がある。その井上選手が出場するチームが、ブルーサンダースである。岩野代表は、そのブルーサンダースというショップを経営しながら、数々のレースやイベントに参戦。パイクスピークへは4回目の挑戦となる。
岩野代表のバイクとの出会いは、小学生のころに読み耽ったマンガ雑誌だ。「あいつとララバイ」に熱中し、主人公の乗るZII(カワサキZ750)に惚れ込んだ。そして、中学になってもっと知見が広がると、同じカワサキでもFX系(カワサキのZシリーズのなかでも400FXや750FXという角ばったモデル)に魅了される。「へそ曲がりなんで、ストレートにかっこいいってものより、ダサかっこいいもののほうに惹かれる」という。
小学生のころから生粋のカワサキファンである岩野代表が、カワサキZ系のショップ「ブルーサンダース(東京都足立区)」をオープンしたのは2000年のこと。ショップを経営する傍ら、テイスト・オブ・フリーランス、そしてテイスト・オブ・ツクバ(TOT)という筑波サーキットでのタイムトライアルに参戦し、数々の勝利を収め、2007年からは、アメリカ・デイトナで開催されるビンテージレース(AHRMA=アメリカン・ヒストリック・レーシング・モーターサイクル協会)への参戦を開始。ほかにも、エルミラージュのドライ・レイクでの最高速トライアルなど、アメリカの大地へ挑戦を続けてきた。
デイトナで勝利した後は大きな目標もなくなり、何か面白いことやれないかな、と思案していたところに見つけたのがパイクスピークの映像だった。ダートとターマックが混在した、ガードレールもない山岳路を攻める、こんなクレイジーなレースはない。「最高に面白いじゃん! ここを速く走り切れれば、すごくかっこいい!!」ということで、カワサキZのフラットトラック仕様(ダート路面のオーバルコースを走る競技)を走らせたい、という思いから、このパイクスピーク計画は進行した。
岩野代表とともにライダーとしてTOT、そしてデイトナを制した新井泰緒選手に声をかけた。新井選手は生粋のストリートライダーで、公道である峠道で開催されるレースと聞いて、すぐに意気投合。
そしてブルーサンダースは、2014年から挑戦を開始した(残念ながらそのときすでにダート路面は消滅していたが)。
2014年は、新井選手(Kawasaki Z1000MKII/Pikes Peak Challenge-エキシビションクラス)と、高野昌浩選手(Kawasaki Z1/Pikes Peak Challenge-エキシビションクラス)の2台体制。その後は、新井選手単独で2015年、2017年と参戦(2016年大会は100周年記念大会となり、100台の足切りが実施されたため、エントリーしたものの参戦叶わず)。
岩野さんと新井選手のほか、毎回、カワサキZ系のチューニングではおなじみの面々が協力に駆けつけるというスタイルで参戦してきた。マシンは、勝ちを狙ったバリバリのスーパースポーツではなく、パイプハンドルのネイキッドモデル。「やりたいマシンでやる」。そこにこだわってきた。
「Zで頭を取りたい」という思いは捨てきれない!
そして4回目の挑戦となる2018年、ブルーサンダースとして、新井選手と井上哲悟選手という2名での参戦を計画。ところが、新井選手が負傷、大事を取り出場を断念。また、井上選手はエントリーの足切りを嫌い、別チームを仕立てて「チームicon」として参戦することになっていたのだが、こちらはチーム側の問題で参戦が危ぶまれていた。そのため、再びブルーサンダース&井上哲悟選手というモトサヤ状態での参戦となった。
問題は、マシンだった。これまでずっと空冷Zと新井選手というパッケージでチャレンジしてきた。「新井さんとともにてっぺんに」という思いで参戦を続けてきた岩野さんにとって、どうもモチベーションが上がらない。そこで、ひらめいたのが、Kawasaki Z900RSだった。カワサキZ系の最新モデルである。これでどこまで行けるのか、というのは、今後のパイクス・チャレンジにも1つの指標として有効であろう、ということで、すぐにZ900RSを購入して、参戦準備を進めている。
今年のこの体制はいいきっかけになったという。“Zのニオイ”がある最新モデル。メーカーが作った最新モデルで、上位へ行けなかったら、空冷Zでトップを、なんて言えないという環境に自ら追い込んだのだ。今回は、ノーマルに近い状態での参戦だが、来年はしっかりモデファイを行って、9分台に近いところまで行けたら、という計画だ。
取材時、まだバイクは、エンジンが降りた状態であった。パーツを流用して1000ccまで拡大。そしてマシンをぎりぎりまで仕上げて、4度目のパイクスに挑む。
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