9月15日、静岡県の富士スピードウェイで2024年WEC世界耐久選手権の第7戦『富士6時間耐久レース』が行われ、18台が争うLMGT3クラスは、ビスタAFコルセの54号車フェラーリ296 LMGT3(トーマス・フロー/フランチェスコ・カステラッチ/ダビデ・リゴン)が優勝を飾った。
ビスタAFコルセの55号車フェラーリ296 LMGT3(フランソワ・エリオ/サイモン・マン/アレッシオ・ロベラ)がポールポジションを獲得した予選日には、夜にサーキットでは雨が降った。迎えた決勝日は雨雲も去り、富士山の上空に虹がかかる晴天に恵まれた。
壮絶な大乱戦をロッテラー組ポルシェが制し“王手”。トヨタ可夢偉はまさかの接触リタイア【WEC富士レースレポート】
現地時間11時、気温28度、路面温度36度のコンディションで迎えたスタートでは、ハイパーカークラスの後方で、LMGT3クラスも開幕からサイド・バイ・サイドでTGRコーナーへとなだれ込む。
先頭で飛び込んだのは、81号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R。そのすぐ後ろでは、佐藤万璃音がスティントを控える95号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)と85号車ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ2(アイアン・デイムス)が争いを繰り広げ、95号車が2番手に浮上した。さらに僚機59号車マクラーレンも続きツー・スリーを形成、85号車は4番手となる。
しかし、2周目にハイパーカークラスで多重クラッシュが起きた影響でレースはセーフティカー(SC)が導入。約15分後のリスタートはクリーンに展開し第1スティントが始まった。
81号車が徐々にリードを築くなか、マクラーレン同士の2番手争いが白熱。TGRコーナーでラインが交錯し、95号車はスピンして後方へ沈んでしまう。
以降は隊列が整い、各車ロングランペースの勝負へ。小泉洋史がドライブする82号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)は、7番手から好ペースで追い上げて5番手に浮上する。
さらにサラ・ボビーが乗る85号車は、スティント中盤で2番手の59号車マクラーレンに接近し、15分以上バトルを繰り広げたのちに2番手を奪った。
開始から1時間が経過し、最初のピットタイミングを迎えた。ここで小泉の乗る82号車がエンジンスターターにトラブルが発生。ルーティン作業後にマシンを一度ガレージに収める事態となった
第2スティントでは、デブリ清掃を理由としたバーチャル・セーフティカー(VSC)、および2度目のSCで約20分のスローペースを挟む。再開後には3番手の59号車マクラーレンが好ペースを披露し、85号車ランボルギーニと首位81号車シボレーを次々と抜いてトップに立った。
59号車がリードを築くなか、81号車や3番手85号車ランボルギーニは先にピットインを選択。30秒ほどのリードを築いた59号車マクラーレンも、30分ほど遅れてピットへと向かう。
アンダーカットを狙った85号車ランボルギーニは、先頭でコース復帰した59号車に追いつき、3時間経過直前にGRスープラコーナーでパスしてトップに浮上した。
さらに、ピットインで12番手までポジションを下げていた46号車BMW M4 LMGT3(チームWRT)も、バレンティーノ・ロッシのドライブでライバルに次々と追いつき、チームメイトの31号車BMWや、2台のポルシェを相手にTGRコーナーで華麗なオーバーテイクを披露。27号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(ハート・オブ・レーシングチーム)に迫る5番手までポジションを回復し、表彰台争いに加わってきた。
■再度SCで大シャッフル。残り2スティント耐久に
太陽は依然強い日差しを路面に照りつけ、路面温度も43度まで上昇してきた。レースは3時間が経過して折り返しを迎えると、首位に立った85号車がピットインを行った影響で59号車がレースをリード。
59号車と事実上の首位争いを繰り広げている85号車は、ピットタイミングが30分程異なる59号車に対して約1分差で周回を続け、その後ろには81号車シボレーも続く。
トップの59号車の後ろ、15秒ほどのギャップで46号車BMW M4 LMGT3(チームWRT)のバレンティーノ・ロッシも続いており、ピットタイミングの異なるライバルらとの表彰台争いが白熱してきた。
ピットタイミングを迎えた59号車は、ルーティン作業をこなしてクラス4番手に復帰するが、ここでデブリ回収のためにフル・コース・イエロー(FCY)が導入。しかしこのFCY時、59号車にスピード違反があったためにドライブスルーペナルティが課せられてしまい、優勝から一歩遠のいてしまう展開に。
これで事実上の首位グループは85号車と81号車、さらに8番手スタートから追い上げてきた27号車アストンマーティンとなる。
しかし、2時間が経過したころにはこれら3台がピットに向かい、最初のVSC時にピットインしてタイミングをずらしていた92号車ポルシェ911 GT3 R LMGT3(マンタイ・ピュアレクシング)が暫定首位に立っていた時に、レースは転機を迎えた。
ハイパーカークラスの1台がマシントラブルでコース上にストップしてしまい、レースはふたたびVSCが導入。残り時間がちょうど2スティント分の約1時間45分というタイミングでのVSCに、各チームは即座に反応しピットインを開始する。
これで優勝争いはリセットされ、暫定首位92号車ポルシェに、59号車マクラーレン、46号車BMWというトップ3に。残り2スティント分のガチンコ対決となった終盤は、残り1時間半でレース再開となった。
92号車のクラウス・バハラーは逃げをかけて走り出したが、レース序盤をリードしていた59号車マクラーレンのコスタがペースで勝り、まずは首位に浮上する。
さらに、再開時には9番手につけていた54号車フェラーリ296 LMGT3(ビスタAFコルセ)がダビデ・リゴンのドライブでオーバーテイクショーを見せ、3番手を走る46号車BMWのロッシを抜いて表彰台圏内に浮上してきた。
最後のピットインを経ても各車の順位は変わらず、3台は最終スティントにテール・トゥ・ノーズのトップ争いを展開。最終盤に迎えた三つ巴の争いは、リスタートからすでに6台を抜いてきた54号車が依然好ペースを発揮して、残り30分の時点でトップに浮上。そのまま92号車ポルシェに対してリードを築いていく。
一方、グレゴワール・ソーシーに交代した3番手の59号車マクラーレンはペースで苦しみ、92号車ポルシェから徐々に離されたことで46号車BMWとのバトルに発展。残り18分の時点で46号車がTGRコーナーでオーバーテイクを決め、表彰台最後の一角を争う勝負が決着した。
これで、フリー走行時から好ペースを披露してきた54号車が計8ポジションアップの大逆転で今季初優勝。そして、2位表彰台を手にした92号車ポルシェは、タイトルを争う僚機91号車ポルシェが14位に終わったことで、最終戦バーレーンを残して選手権タイトル獲得を決めた。3位には、中盤にロッシも好バトルを演じた46号車BMWが入り、今季2度目の表彰台フィニッシュを飾った。
なお、唯一の日本国籍チームである777号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(Dステーション・レーシング)が7位入賞。木村武史の87号車レクサスRC F LMGT3(アコーディスASPチーム)が12位、佐藤万璃音の95号車マクラーレンが17位で完走、小泉の82号車はリタイアとなった。
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