名門ヘンドリック・モータースポーツ(HMS)陣営にとって、まさにお祭り騒ぎとなった週末。マーティンズビル・スピードウェイで開催された2024年NASCARカップシリーズ第8戦『クックアウト400』は、延長戦までもつれたレースでウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が記録づくめの勝利を飾り、オーナーのリック・ヘンドリックにとって前例のない史上初のワン・ツー・スリー・フィニッシュを牽引する結果に。昨季テキサスでHMSのカップ通算300勝目を記録していたバイロンが、創立40周年を祝う週末に新たなマイルストーンを獲得し、HMSにとっても単一会場最多勝利となるマーティンズビル通算29勝目を手にしている。
前戦リッチモンドに続き、0.526マイルの伝統的ショートトラックで開催された1戦は、土曜FPこそ伏兵コリー・ラジョイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が最速タイムを記録したものの、予選に入ると同地最多勝を誇るチームが躍進。チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)こそ2列目3番手に留まったものの、ダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)を仕留めた前年度覇者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が2戦連続、同地2回目のポールポジションを獲得した。
豪州RSCのトップランナー、キャメロン・ウォーターズが「念願の」NASCARトラック戦デビューへ
そのまま決勝のステージ1を制覇したラーソンだったが、その周囲には18番手から浮上してきたバイロンが合流してHMS艦隊が形成されるのと同時に、前戦勝者デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がトップ5圏内に進出。バッバ・ウォレスとともに優勝戦線に加わるなど、リッチモンドと同様に旧モデル比でショートオーバルのスピードを明らかに改善してきたカムリXSEが喰い下がる。
110周目には右フロントサスペンションの損傷でクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が戦線離脱を喫したものの、ステージ2で勝利したハムリンが終盤に向け順調にラップリードを刻んでいく。そんななか297周目にピットロードに飛び込んだバイロンは、リードラップのドライバーの中で最初に燃料補給と新しいタイヤセットを装着し、次の周回でラーソンとエリオットがそれに続いていく。
この早めの“アンダーグリーン”ストップによりハムリンを出し抜くことに成功したHMS陣営は、299周目にピットインしたライバルの逆襲を許さないまま400周中398周目に発生したジョン・ハンター・ネメチェク(レガシー・モータークラブ/トヨタ・カムリXSE)の右フロント炎上トラブルによるオーバータイム決着へと突入していく。
ここでも特別なルビーレッドのカラースキームを採用したカマロZL1艦隊は盤石のフォーメーションを構成し、リスタート以後もバッバ・ウォレスや王者ライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)らを寄せ付けず。リードアウトを維持した24号車が今季3勝目、マーティンズビルで2勝目、キャリア通算13勝目を手にした。
■NASCARデビュー戦のキャメロン・ウォーターズが力走
「ヘンドリックの全員をとても誇りに思う」と、記念すべき1戦で無類の勝率を誇るバイロン。
「子供の頃からヘンドリックの大ファンだったからね。40周年を迎えるには、この組織にいるすべての人々の仕事に掛かっている。リック・ヘンドリックと(妻の)リンダ、そして関係者全員に感謝したいと思う」
こうして表彰台独占のヴィクトリーサークルを満喫したバイロンの活躍により、HMSは単一のNASCAR開催地として最多となる29勝目を手にした。
「マーティンズビルで勝てたのは本当に素晴らしいこと。僕らはショートトラックで苦戦してきたからね。ただ少しずつ上に進み続け、素晴らしいチームがここにいる。彼らは僕を先頭に留めてくれた。最後にあそこであのようなかたちになり(チームメイトとの優勝争いで)リスタートをするのは重圧だったけど、それは仕方のないことさ」
手術のため現地不在だったオーナーに代わり、レースの全権を指揮したNASCAR殿堂入り男のジェフ・ゴードンも、首位3台と最終的にトップ5からこぼれ8位に終わったアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を含め「この男たちは徹底的にやり遂げた」と称賛の言葉を口にした。
「それにしても、24号車の彼。バイロンの走りはどうだい? 我々が節目の日、区切りの機会、大切な瞬間を迎えるたび、彼はステップアップし続けている。彼はHMSの通算300勝目を記録した。そして今回も、彼と組織全体にとって大きな勝利となるだろうね」
そして金曜日の夜に開催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第6戦『ロング・ジョン・シルバーズ200』は、クリスチャン・エッケス(マカナリー・ヒルゲマン・レーシング/シボレー・シルバラードRST)がコーションブレイクをいずれも回避する戦略で逆転勝利。そしてオーストラリア大陸からの遠征で注目を集めたNASCARデビュー戦のキャメロン・ウォーターズ(ソースポーツ・レーシング/フォードF-150)は、トップ10を窺う力走を見せるも177周目に多重アクシデントに巻き込まれ、白煙に包まれるなか勝負を終えている。
「今夜は一晩中とても楽しかった。普段やっているレースとはまったく違うので、ただ学びたかっただけだが、本当に勉強になった。最後は行き場がなくなりラジエターをノックしてしまった。残念だが楽しく学べ、素晴らしい戦いができたと思っている」
そして土曜夜のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第7戦『デュードゥ・ワイプス250』は、オーバータイムリスタート後のアクシデントを掻い潜ったアリック・アルミローラ(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)が、カップシリーズのフルタイムから退いて以後、JGR復帰以来の初優勝を飾っている。
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