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サーキットで新旧を比較 ホンダ・シビック・タイプRへ英国試乗 最新版は過去最高か

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サーキットで新旧を比較 ホンダ・シビック・タイプRへ英国試乗 最新版は過去最高か

スラクストン・サーキットで新旧を比較

雨に濡れたスラクストン・サーキットは、真新しい高性能モデルを初試乗する場所として、最適とはいえないだろう。グレートブリテン島の南部に位置するこのコースは、高速コーナーが連続している。

【画像】最新版は過去最高か ホンダ・シビック・タイプR 先代のFK8型 競合モデルも 全124枚

4速の速度域で、奥に向けて徐々に曲がりがきつくなる場所がある。アウト側にガードレールが間近に迫るところや、草地に向けて突っ込むようなダウンヒルもある。

アクセルペダルを緩めてスライドを楽しめそうな区間は、舗装が新しく滑りやすい。うっかり誘惑されると、厳しい仕打ちが待っていそうだ。160km/h以上の速度域で、グリップ力が失われる恐ろしさを想像して欲しい。

荷重移動でクルマを操っている時は特に、肝がキンキンに冷える。速度域が高く、トラクションの問題ではない。だがその一方で、先代のFK8型と最新のFL5型、2台のシビック・タイプRの違いをより鮮明に確認できる場所でもある。

期待のホットハッチは、目を疑うような価格を吊り下げて英国へ上陸した。実に、4万6995ポンド(約751万円)もする。かつては英国のスウィンドン工場で大量生産されていた時期もあったが、最新のFL5型は日本の埼玉県で作られ、海を越えて運ばれてくる。

330psを発揮する、オーバースクエア・シリンダーの2.0L 直列4気筒エンジンは、アメリカ・オハイオ州で組み立てられるという。様々な理由で価格は上昇し、販売台数は厳しく制限されてしまった。もちろん、CO2の排出規制も大きく影響している。

尋常ではない量の技術者の愛情や熱意

エンジン自体は、先代も搭載していたK20型の進化版。前輪駆動で、5ドアのハッチバックというスタイルは変わらない。プラットフォームも先代譲りだが、長さと幅を拡大するなど、大幅なアップデートを受けている。ボディも強固に組み立てられている。

今回の試乗車には、3265ポンド(約52万円)するカーボン・パッケージというオプションが載っていた。つまり、5万ポンド(約800万円)を超えていた。だとしても、シニカルに評価するつもりはない。やはり素晴らしい。

このクルマには尋常ではない量の、技術者の愛情や熱意が注がれている。フライホイール1枚とっても、先代より18%軽い。エンジンのレスポンスが良くなり、レブマッチ機能を活用しても、気分を上げるアルミ製ペダルを踏んでも、完璧に変速をこなせる。

タイヤのキャンバー方向の剛性、サスペンションがタイヤの縦方向の角度を維持する能力も、先代の初期型と比べて25%高い。2017年に登場した後期型とでは16%高い。一貫した操縦特性と、秀でた安定性を導いている。

ブレーキの冷却ダクトにも入念な調整を受けている。FL5型の車重は約50kg増えたが、フロントブレーキの温度は10%ほど低く保たれるという。

ステアリングコラムは、60%も剛性が高められた。タイヤの向きを変えるトラックロッドエンドも強化された。英国仕様のホイールサイズは20インチから19インチへ落とされたが、ワイドになり、強度が高められている。

予想通り爽快で感触豊かで、敏捷な先代

パワートレインではターボが改良を受け、回転時の慣性を14%減少。エグゾーストの排気効率は13%向上した。それらが、10psの増強に繋がっている。

以前から非の打ち所がなかったトランスミッションも、変速時の遊びが削られた。2速から3速へスライドさせる場合などで、余計な動きが制限されつつ滑らかさを増し、より充足感のあるフィーリングを生んでいる。

先代のシビック・タイプRは見た目が賑やかだったが、最新版はスタイリングも好ましい。ホンダ側も、小さくない自信を匂わせている。

滑りやすいコンディションのスラクストン・サーキットを、先代の320psを発揮するFK8型で攻め込む。予想通り爽快で、感触が豊かで、敏捷に走る。FL5型が登場するまでの7年間、このクラスを圧倒し、王者に君臨し続けたホットハッチだ。

世代交代したとしても、ドライビング体験で得られる興奮に不足はない。秀抜の運転姿勢に身を置き、高精度な操縦性を堪能する。エンジンがレッドラインへ迫るほど鋭敏さが強まり、サウンドも尖っていく。仕上がりは素晴らしい。

今回のような濡れた条件では、太いトルクの影響でタイヤが滑り、LSDがロックしてアンダーステアへ転じてしまう。アクセルペダルを丁寧に調整する必要があるが、限界領域を探るやり取りも楽しみの1つ。正確な操縦性が、それをバックアップする。

先代より角が丸められ、懐の深いFL5型

確かに、乗り心地は少々硬い。だがスタイリングをアップデートするだけで、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIやルノー・メガーヌR.S.といったライバルと、まだ充分に戦いを勝ち続けることができただろう。

最新のシビック・タイプRへ乗り換えると、先代の足回りが硬かったことへ改めて気がつく。左右のタイヤの間隔、トレッドが広げられグリップ力も増しているが、しなやかな足腰でタイヤはアスファルトを確実に掴み続ける。より高い、操る自信が生まれる。

短時間ながら、英国郊外の一般道も試乗させてもらったが、しなやかなサスペンションの恩恵を確認できた。先代では叶わたかった、落ち着いたマナーを実現させている。

サーキットの高速コーナーへ侵入すると、明らかに安定性が高く、完璧といえる気持ち良さで駆け抜けられる。タイトな最終コーナーでは、意欲的にフロントノーズが向きを変える。質量の動きが抑制され、従来以上の一体感を伴って操ることができる。

安定性を磨きつつ、動的な調整域が広い。同じ印象をドライ・コンディションでも感じられるかどうか、晴れた日の一般道ではどうなのか、興味が掻き立てられる。

先代より角が丸められ、懐の深いホットハッチになったことは間違いない。予想を超える伸びしろで。

最新のシビック・タイプRは過去最高か

過去最高だったシビック・タイプRは、更に良くなったのか? それは概ねイエス。だが、諸手を挙げてというわけでもなさそうだ。FK8型を超えるほどの圧倒的な魅力までは、筆者は感じなかった。

新採用の微粒子フィルターは、エンジンのレブリミット間際の痛快さを奪っている。最後の、吸い込まれるような勢いを。FK8型のオーナーが乗り換えたら、少し寂しく感じるかもしれない。

乗り心地が向上し洗練度を高めたことで、スピード感も減じている。一般道で先代と同等の興奮を得るには、より高い速度域へ足を踏み入れなければならない。

かといって、FL5型の素晴らしい仕上がりを霞ませるほどではない。確かに英国価格は高いが、それに見合う完成度ではあるだろう。

新しいスタイリングは好きだ。先代では冴えなかったインテリアも、日産GT-Rを彷彿とさせる赤いカーペットが敷かれ魅力的だと思う。ダッシュボードのデザインは上品で、従来以上に扱いやすい。フォルクスワーゲン・ゴルフRのオーナーが羨むかもしれない。

AUTOCARでは、詳細なデータテストを計画している。最新のホンダ・シビック・タイプRは過去最高という結果になるのではないかと、期待している。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)のスペック

英国価格:4万6995ポンド(約751万円)
全長:4595mm
全幅:1890mm
全高:1405mm
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:5.4秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:186g/km
車両重量:1429kg
パワートレイン:直列4気筒1996ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:330ps/6500rpm
最大トルク:42.7kg-m/2200-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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