豪華さに驚かされるプリンセス1100
オースチン1100の発表から1年後の1964年に、上級モデルとしてヴァンデンプラ・プリンセス1100が登場。英国価格は895.14ポンドで、6気筒エンジンを搭載したヴォグゾール・ヴェロックスに並ぶ金額だったが、充分なブランドの訴求力があった。
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アンディ・ビーヴァン氏が所有する1967年式のヴァンデンプラ・プリンセス1100へ近づくと、その豪華さに感心してしまう。インテリアはレザーで仕立てられ、天井の内張りはウール。カーペットには毛足の長いパイルが用いられている。
フロントシートはリクライニングでき、シガーライターや折りたたみ式のアームレスト、外気導入できるベントも備わる。リアシート側には、収納できるピクニックテーブルが付く。
フォグライトとバックライトも装備され、ドライバーの正面にはスピードのほかに多くの補助メーターも据えられている。ヴァンデンプラという銘柄ふさわしい、充実装備だ。
このブラウンのプリンセス1100は、2018年からビーヴァンのもとにあるという。「自分はADO16で運転を学びました。プリンセスは兄から譲り受けたものです」。と、これまでの経緯を振り返る。
「MG仕様となる55psのエンジンが搭載されていて、オースチンやモーリスより動力性能には余裕があります。一番気に入っているのは、インテリアですね」
「シートにはアームレストが付いていて、グローブボックスのリッドにはカップホルダーが付いています。細部に至るすべての部分が、ヴァンデンプラ1100を際立たせる要素だと思います」
6種類のブランドが販売したADO16シリーズ
1965年にBMCが発表したのが、控えめに素晴らしいと自ら表現したウーズレー1100だ。1957年に登場したウーズレー1500の後継モデルという位置づけで、英国価格は767.9ポンドだった。
より高めの価格設定に合わせ、レザーの内装と、ゴーストライトと呼ばれたラジエターグリルでほんのり灯るロゴマークが特徴といえた。複雑に階層付けられたBMCのヒエラルキーのなかでは、エンジンを共有するMG 1100の上に据えられていた。
さらに、ライレー・ケストレルも同時期に登場している。こちらはウーズレー1500の兄弟モデル、ライレー・ワンポイント・ファイブの後継モデルという位置付けだった。
この時点で、ADO16シリーズは6種類のブランドが販売する状況になっていた。マーケティング的な混乱があったことは否めないだろう。
イアン・マッケンジー氏は、父とのオースチン1100 MkIとの記憶に影響を受け、2016年にウーズレー1100を購入したという。その時点で、彼のクルマがツートーン塗装で仕上げられた唯一の現存車両でることが判明したそうだ。
トーガ・ホワイトとアイランド・グリーンに塗り分けられたウーズレーは、当時の映像から飛び出して来たように美しい。「横に長いストリップ・スピードメーターの動きや、走行中の穏やかなボディの揺れ具合が好きなんですよ」。とマッケンジーが微笑む。
英国では唯一だった小さな前輪駆動のワゴン
開発が遅れていた、モーリス1100 トラベラーとオースチン・カントリーマンというステーションワゴンが登場するのは、1966年3月。このクラスの英国車としては唯一となる前輪駆動のワゴンで、英国価格は711.11ポンドとお手頃だった。
車重はサルーンより約18kg重かった。だが、2段階に折り畳めるリアのベンチシートと、大きな荷室を得ることができた。
オプションでフロント側もリクライニング・シートにすれば、ダブルベッドのようにフラットな空間を作ることもできた。後のオースチン・マキシやフィアット・パンダに採用されただけでなく、現代のモデルでも重宝がられる機能といえる。
ADO16シリーズの大ファンだと認めるのは、ゴードン・ディフィー氏。「人生の殆どを、1100とともに過ごしてきました。1979年式のMG 1100をベースとした、マゼンダというキットカーも所有しています」
「このモーリス1100 トラベラーを購入したのは4年前。アルニカ・ベージュというピンクがかったボディは美しく、とても個性的だと思います」
「ステーションワゴンだからといって、操縦性はサルーンと殆ど変わりません。実用性の高さが、特に好きなポイントですね。荷室の大きな2シーターのバンにもなりますし、5シーターのままでも、広い荷室が残ります」。とディフィーが説明する。
この続きは後編にて。
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