スーパーフォーミュラでは今シーズンから、ドライバーとチームの無線交信をレース中継やアプリ『SFgo』を通して聞けるようになり、それによってレースの裏側や様々な人間ドラマが映し出されるようになった。今回は鈴鹿サーキットで行なわれた第3戦を振り返りつつ、その中でいくつかの無線交信をピックアップして紹介する。
■スタート前からトラブル続出
■近藤真彦JRP新会長、スーパーフォーミュラ人気向上のため「F1日本GPの前座でレースができるならやりたい」
レースはスタート前から荒れた。フォーメーションラップを終えて各車がグリッドに整列する頃、5番グリッドの牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)のエンジンがストップ。これによりエクストラフォーメーションラップとなったが、今度は7番グリッドの佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)がマシンの不調を訴え、ピットに戻ってリタイアすることになった。
フォーメーションラップ 牧野
牧野「なんかエンジン止まったよ? エンジン止まった」
牧野「止まった、ダメダメダメ。エンジン止まってる」
エクストラフォーメーションラップ 佐藤
佐藤「どうしよう、クラッチ滑ってる。ダメだ、なんかおかしい」
チーム「落ち着いて。このままやるしかないから、温度上がらないように、滑らせないで走って」
佐藤「まっすぐ走らない」
チーム「ちゃんと走らないの?加速する時にまっすぐいかない?」
佐藤「ダメだ、トラブルトラブル」
チーム「戻れたらピット入って。ダメなら寄せて」
佐藤「ドラシャ(ドライブシャフト)折れたかもしれない」
チーム「了解。加速する時にまっすぐいかないんだよね」
佐藤「はい」
■タイヤに厳しい鈴鹿。悩ましいピットのタイミング
レースはポールポジションからスタートした大湯都史樹(TGM Grand Prix)が逃げを打つ展開。しかし開幕ラウンドでもタイヤのオーバーヒートに苦しんでいた大湯は、今回も我慢のレースを強いられることになったが、チームが彼を鼓舞する。
6周目 大湯
チーム「ホームストレートでクルマの状況教えて」
大湯「ダメ、もたない……タイヤの温度がやばい」
チーム「了解。ちょっと厳しいけど、頑張ろう」
大湯「こっちはこんなにタイヤ温存してるのに。全然ダメだ」
チーム「燃料軽くなった時のペースは良いから、そこまで頑張ろう」
30周で争われた今回のレースも、10周目にピットウインドウオープンとなった直後に入るか、レース後半までピットインを引っ張るかで各車の戦略が分かれた。各チームとドライバーは序盤から綿密なコミュニケーションをとっていく。
5周目 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
太田「東コースはけっこう速くて、ダウンフォースはたぶん取れてると思うので、あれなら引っ張ってもいいですよ」
チーム「了解」
7周目~10周目 野尻智紀(TEAM MUGEN)
チーム「ピットレーンオープンまであと3周。今プランC検討中」
野尻「予定通りでいいと思うよ。ついていけるよ」
チーム「予定通り了解。リアム(ローソン)と調整する」
チーム「この周ピットレーンオープン。今リアムがプランA検討中だからちょっと調整する」
野尻「早めにね。入るなら今なんだよね」
9周目 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
チーム「タイヤ持ちそう? 引っ張れそう?」
平川「すごいアンダー(ステア)なんですけど、ものすごいアンダー」
チーム「ピット入れた方がいい?』
平川「(前のマシンに)引っかかってる! でも(早めにピットインすると)オーバーカットされちゃうよ、この気温だと」
チーム「今みんなけっこうピットに入ってくるから、ステイアウト」
■野尻と大湯、まさかの接触
レース後半までピットインを遅らせた首位の大湯は、19周目にピットイン。先にタイヤ交換を済ませていた野尻の前、事実上の3番手でコースに復帰した。冷えたタイヤで防戦する大湯に野尻が襲いかかるが、彼らはS字カーブの先で接触してしまうのであった。野尻に追突される格好となった大湯は、スポンジバリアに刺さったマシンの中で、このレースへ懸けていた想いが爆発した。
20周目 大湯、野尻
野尻「あぁ……ごめん」
大湯「おい!!!……おい!!」
大湯「なんで……なんでこうなるの! なんで……」
■SC出動、チャンス到来!
大湯と野尻の接触によりセーフティカー(SC)が出されたが、これはこの時点でピットに入っていなかったドライバーたちにとっては幸運だった。SC中にピットに入ることでタイムロスを最小限に抑え、ポジションを上げることができるからだ。好調なペースを刻みながらステイアウトしていた宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)と平川に無線が飛ぶ。
20周目 宮田
チーム「クラッシュが起きた。たぶんSC入るから、(ピットに)入るぞ」
宮田「了解。入るよこの周」
——ピットアウト後——
チーム「莉朋、3番手で戻れたから」
宮田「よし、よくやった! 3番手3番手」
20周目 平川
チーム「この周BOXBOXBOX!! BOXBOX、SCでるよBOX、BOXBOX、BOXBOXBOX」
チーム「BOXだよ、BOX」
チーム「BOXBOXBOX、BOXBOXBOX、セーフティカー、BOX」
平川「うるさいうるさい! 分かってる、分かってるよ」
■日本は甘くねえぞ!
セーフティカーランが終了してレースが再開されると、3番手、4番手の宮田と平川はフレッシュタイヤで猛然と前を追い上げる。宮田はローソンと坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING)を交わして残り2周でトップに立つと、平川も残り2周の1コーナーでローソンの前に立ち、3番手に浮上した。
ローソンに「シケインで”汚い手”を使われてカチンときた」とレース後に語っていた平川。狡猾なブロックを仕掛けるヨーロッパの猛者を追い抜いた平川の、日本のトップドライバーとしてのプライドが無線にも表れていた。
29周目 平川
平川「気持ちで抜いた、気持ちで」
平川「日本は甘くねえぞ! 日本は甘くねえぞ」
■歓喜の初優勝に宮田は涙
トップでチェッカーを受けたのは宮田。ついに手にした初優勝に感涙する宮田に、エンジニアやチームスタッフらが次々と無線を代わって祝福した。
チェッカー 宮田
チーム「よし、よしよし……よし、よーし!」
チーム「莉朋勝ったよ!おめでとう、速かった、良かった!」
宮田「ああぁ……ありがとう。ごめん、ちょっと感動で泣いちゃってるよ。長いこと勝てなくてごめん。ありがとう。ああぁ……」
チーム「莉朋、グッジョブ!」
宮田「ありがとうございます。チャンピオン目指していくんで、これからもお願いします」
チーム「いや~今日は良いレースだったよ。めっちゃカッコよかったよ。最高最高。ありがとうね」
宮田「ありがとうございます。昨日のミスを取り返せたと思います。本当に感謝しかないです」
チーム「バッチリバッチリ、速かったし、強かったよ。ありがとう。こっからまた、勝ち積み重ねるよ!」
宮田「はい、これからもお願いします。ありがとうございます」
一方で、残り2周で首位から陥落して2位に終わったのが坪井。彼にも相当な悔しさがあったはずだが、優勝した宮田を祝福した。
チェッカー 坪井
坪井「守れなかった~ごめん!」
チーム「いやまあ、相手フレッシュタイヤだから、しょうがないよ。よくやった」
坪井「ちょっとさすがに厳しいね。ごめん。莉朋おめでとうだね」
チーム「お疲れ。坪井は頑張ってたよ。良い仕事してくれて。次もう一回リベンジしよう」
坪井「ありがとうございます。ああ絶対勝とう、次!」
そんな中、KONDO RACINGの小高一斗も自己ベストの7位フィニッシュとなり、チームと喜びを分かち合った。レギュラードライバーとしての参戦は今季が初となる小高だが、富士ラウンドでの苦戦から一転しての好結果に、本人の声色も明るかった。
チェッカー 小高
小高「ペースは良かったし、クルマすごい良かったです」
チーム「ペースは本当良かったよ。SC明けで何台かがベストタイム出したけど、それまで坪井くんに次いで一斗が2番手だったよ。だから良いペースだったし、アウトラップもよく頑張った。ただスタートで順位落としたのはもったいなかったな」
小高「そう、スタートめっちゃもったいなかった! ちょっと、勉強します」
チーム「了解、お疲れ様。でも良いレースだったと思うよ。今週はよく頑張った」
小高「ありがとうございます(笑)」
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