毎年のように熾烈な販売合戦を展開しているスズキとダイハツ。予想不能な面白さのあるスズキと堅実なダイハツは、まさにクルマ界における宿命のライバル。追いつ追われつの好勝負を繰り広げ続けるスズキ&ダイハツの軽自動車を徹底比較!!
※本稿は2022年12月のものです
文/渡辺陽一郎、写真/SUZUKI、DAIHATSU
初出/ベストカー2023年1月10日号
タントとスペーシアは何が違ってどっちがイイ!? スズキダイハツ人気軽6モデル徹底比較
■SUV風ワイルド軽対決 スズキ スペーシアギアvsダイハツ タントファンクロス
スズキ スペーシアギア。スペーシアの販売増強に大きく貢献(172万5900~192万2800円)
ダイハツ タントファンクロス。ダイハツファン待望のスペーシアギアの対抗馬で、タントをベースにSUVテイストを加味(180万9500~193万500円)
この2車種は内外装をSUV風に仕上げたから、乗員の居住性や乗り心地ではなく、荷室の機能で優劣を判断したい。
ファンクロスを含めて、タントは2022年10月の改良で後席のシートアレンジを変更した。以前は背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がり、少し傾斜はあるが床の低い荷室になった。
しかし改良でこの機能が廃止され、現行型は後席の背もたれが前側へ単純に倒れるだけだ。デッキボードを上段に装着すると平らな空間になるが、荷室高は50mmくらい減った。自転車を積む時も、以前とは違うコツが必要だ。
その点でスペーシアギアは、以前のタントと同様、後席を床面へ落とし込むように格納できる。特徴は乏しいが、自転車など大物の積載も含めて使いやすいのは魅力的。
●判定……使い勝手、積載性に優れているスペーシアギアの勝ち!!
■かわいい系ハイトワゴン対決 スズキ ワゴンRスマイルvsダイハツ ムーヴキャンバス
スズキ ワゴンRスマイル。ムーヴキャンバス対抗馬としてワゴンRをベースにかわいいフロントマスクとスライドドアが与えられたハイトワゴン(129万6900~171万6000円)
ダイハツ ムーヴキャンバス。2022年7月にフルモデルチェンジ。キープコンセプトながら質感爆上がり(149万6000~191万9500円)
ムーヴキャンバスは、全高を1655mmに設定しながらスライドドアを装着する。外観に丸みがあり、リアゲートも少し傾斜させて、柔和な雰囲気を表現している。
その点でワゴンRスマイルは、全高が1695mmと少し高い。外観の見え方も、全高が1700mmを超えるスペーシアやタントに近付いた。
内装では、ムーヴキャンバスは後席の下に、引き出し式の収納設備を装着する。これを引き出して、ついたてを立ち上げると、バスケット状になって内側に置いた買い物袋が倒れにくい。
ワゴンRスマイルのシートアレンジは、基本的にワゴンRと同じだ。後席の背もたれを倒すと座面も下がって平らな荷室になり、使い勝手はいいが、ムーヴキャンバスは外観を含めてワゴンRスマイルよりも個性的だ。
●判定……優れたデザインによる個性が光るムーヴキャンバスの勝ち!!
■最新モデル見参!! 軽商用車対決 スズキ スペーシアベースvsダイハツ アトレー
スズキ スペーシアベース。仕事と遊びを両立させるには最適!!(139万4800~166万7600円)
ダイハツ アトレー。2021年にフルモデルチェンジして質感を大幅に高め、販売も絶好調!!(156万2000~167万2000円)
スペーシアベースは、スペーシアの軽商用車仕様だ。軽商用車の規格に合わせて、後席を小さく造り、荷室面積を広げた。したがって2名以内の乗車に適する。軽乗用車がベースだから、軽商用車では初めての装備として、サイドエアバッグやロールサンシェードなども採用した。
ハイゼットカーゴやアトレーは、スペーシアベースと違って純粋な軽商用車だ。エンジンを前席の下に搭載して荷室を拡大した。スペーシアベースの荷室長は1205mmだが、ハイゼットカーゴやアトレーは1.5倍の1820mmに達する。
このように両車では用途が異なる。優劣は一概に決められないが、車中泊などを含めて、荷室の広さと使い勝手を重視するならハイゼットカーゴやアトレーを推奨したい。
●判定……実用性は純軽商用のアトレー&ハイゼットカーゴの勝ち!!
■オシャレ系軽SUV対決 スズキ ハスラーvsダイハツ タフト
スズキ ハスラー。スズキの遊び心を具現化したクルマで、初代よりもタフギア感を強めたエクステリアデザインも好評。全モデルMハイブリッド(138万7100~177万3200円)
ダイハツ タフト。ハスラーの対抗馬としてダイハツが2020年に市場投入したのがタフトで、かつての名車の名前を復活させた(135万3000~173万2500円)
タフトはハスラーに似た商品なのに、初代モデルを2020年に投入した。明らかに後発だから、ハスラーとの競争を避ける開発を行った。
タフトは価格が最も安い135万3000円のXにも、ガラスルーフのスカイフィールトップ、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキを標準装着する。
その代わりシートアレンジは単純で、後席は背もたれを前側へ倒すだけだ。スライドはできず、座面は奥行寸法が短く感じる。後席は畳んで使う荷室と割り切った。
ハスラーは最も安価なGには、LEDヘッドランプなどが装着されない。その代わり後席は背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、床の低い平らな荷室になる。スライドを含めて左右独立式だ。基本的な機能に力を入れたから売れゆきも好調だ。
●判定……タフトの装備は充実しているが、総合力でハスラーの勝ち!!
■屋台骨!! スーパーハイトワゴン軽対決 スズキ スペーシアvsダイハツ タント
スズキ スペーシア。スズキのスーパーハイトワゴンとして軽乗用車をけん引する存在。エアロタイプのカスタムは人気高し(139万4800~200万6400円)
ダイハツ タント。スーパーハイトワゴン軽自動車のパイオニアで、走りの質感も高い!!(138万6000~199万1000円)
両車ともに全高を1700mm以上に設定して、スライドドアを装着している。
タントは左側のスライドドアに中央のピラーを内蔵させた。前後のドアを両方とも開くと、開口幅が1490mmとワイドに広がる。雨天時などは、ベビーカーを抱えた状態で車内に入り、子供をチャイルドシートに座らせる作業も行える。
さらに運転席を540mmスライドできる機能をオプション装着すると、降車せずに運転席まで移動しやすい。子育て世代には便利な機能だ。
また高齢者も体を捩らずに乗り降りできて、後席の座り心地も快適だから、福祉車両に近い機能も備わる。ファミリーカーとして使いやすい。
スペーシアも車内に開放感があり、荷室の使い勝手も優れているが、家族で使う機能はタントに軍配が上がる。
●判定……家族で使うことを考えると人に優しい設計のタントの勝ち!!
■これぞベーシック!! セダン軽対決 スズキ アルトvsダイハツ ミライース
スズキ アルト。2021年12月にフルモデルチェンジで質感が劇的アップ(94万3800~137万9400円)
ダイハツ ミライース。2017年デビューのため古さは隠せないが、エクステリアは新鮮さを失っていない(88万200~137万2800円)
この2車種は格好のライバル同士で、常に相手を精査しながら開発を行う間柄だ。そうなると2021年末に発表されたアルトは、2017年登場のミライースに比べてかなり有利だ。
アルトは低価格グレードにも14インチタイヤを装着して、足まわりも進化させ、安定性と乗り心地を向上させた。マイルドハイブリッドのWLTCモード燃費は27.7km/Lで、ノーマルエンジンでも25.2km/Lに達する。
後者のLは価格が割安で、衝突被害軽減ブレーキ、後退時ブレーキサポート、サイド&カーテンエアバッグ、電動格納式ドアミラーなどを標準装着して100万円を下回る。インパネ周辺の質も高めているので魅力的だ。
対するミライースにも軽快な運転感覚、シンプルで使いやすい内装などの特徴が備わっているが、総合的にはアルトのほうが買い得と言っていいだろう。
●判定……格好のライバルだが、イースは古く、新しいアルトの勝ち!!
■2022年の軽シェア争いは!?
スズキとダイハツの軽販売台数(2022年1~10月)
スズキとダイハツは毎年、軽自動車で熾烈な販売合戦を展開し、2021年はダイハツがトップの座を死守したが、2022年はどうなるか?
2022年1~10月までの軽乗用車、軽商用車の月別販売台数(左表)からもわかるように、軽乗用車はスペーシアシリーズが奮闘したスズキ、軽商用車はアトレー&ハイゼットが飛躍したダイハツがそれぞれ強さを見せ、合計ではダイハツが僅差でリードとなっている。
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みんなのコメント
かつて信用して買ったらひどい目に遭った。
語り口が一見理論的なので要注意!