若者へのアピール? 驚きのTwitch発表
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】新型ホンダ・シビック、どんなふうに変わった?【新旧比較】 全245枚
2021年春発売予定のセダンに続いて、ハッチバックやパフォーマンス重視のSi、そしてタイプRの登場も予定されている新型シビック。
ホンダは第11世代シビックを発表する手段として、Twitchを活用する方法を選んだ。Twitchって何? と思った読者の方も多いだろう。
筆者もこのたび初めてTwitchの存在を知った。
Twitchは北米を中心に世界の若者たちが利用するゲーム配信(ストリーミング)サービスで、同様のサービスにmixer(Amazon傘下)があるが今年7月にサービスを終了。現在は1日平均1750万人が訪れるTwitch一強である。
ホンダもプレスリリースの中で、「ホンダはeスポーツチームとリーグの両方をサポートする北米で最初にして、唯一の自動車メーカーでもある。eスポーツとゲームの世界で強力な存在感を発揮するTwitchを通じて若いバイヤーにシビックのグローバルな魅力をアピールしたい」と述べている。
昨年、トーランスで取材をさせてもらったシビックオーナーのアメリカ人青年はこう話してくれた。
「Twitchで新車を発表するなんてホンダらしいね! セダンの姿からハッチバックやタイプRの姿を想像するとワクワクするね」
「アメリカにはシビックファンの若者がたくさんいるよ。ちょっと古いタイプR(EK9)なんてすっごく人気だよ」
「ホンダ車用のアフターパーツは種類も豊富。いじる楽しさがシビックやインテグラにはあるよね」
昨年でアメリカでの事業開始から60年を迎えたホンダ。これまでシビックはどんな歴史をたどって来たのだろうか?
アメリカの「良いクルマ」概念変えた
ホンダがアメリカで事業を開始したのは1959年。二輪車の販売からスタートして10年後に初めてハワイで4輪車(N600)を販売、翌70年からは本土でもN600の販売を始めている。
1982年には日本の自動車メーカーとして初めてアメリカでの4輪車生産を開始しており、苦労に苦労を重ねてわずか8人で始めたアメリカでの事業開始から60年を経た現在は、4輪車はもちろん航空機(ホンダジェット)までを生産する体制となった。
2018年にはアメリカでの4輪車累計生産台数が2500万台を突破している。
シビックとアメリカの関係も非常に深い。シビックがアメリカ市場に登場したのは1973年。以来、2020年までに1200万台が販売されている。
そしてアメリカにおけるシビック成功の礎を築いたのは言うまでもなくCVCCエンジンである。
1973年半ばから始まった第一次オイルショックはアメリカの自動車業界にも非常に大きな打撃となった。
それはアメリカ人にとって自動車に関する価値観を変える大きな転機ともなった。その決定版ともいえるのがマスキー法(大気清浄法)の制定である。
米国ホンダは他社に先駆けてマスキー法が定める厳しい排出ガス規制値をクリアしたエンジン「CVCCエンジン」の開発に成功した。
CVCC搭載の初代シビック(1975年モデル)はEPA(米国環境保護庁)の認定をクリアしただけではなく、燃費テストにおいても1位を獲得している。
アメリカではどれくらい売れている?
その後も年を追うごとに燃費が向上し、78年モデルまで4年連続でアメリカでの燃費1位を獲得し続けた。
優れた走行性能とともに、全米一の低公害・低燃費が実証されたシビックは多くのアメリカ人の支持を得ることに成功したのである。
軽快な走り、良い燃費、コンパクトなボディで走る楽しさを味わえる、そして優れた品質、壊れてもすぐに修理ができるディーラー体制……。
アメリカ人の「良いクルマ」の概念を大きく変えたシビックは、その後も多く消費者から熱烈な支持と信頼を得て成長を続けた。
アメリカでデビューとなった1973年には3万2575台だった販売台数は、CVCCエンジン搭載した1975年には一気に10万台を突破した。
その後も順調に販売台数を伸ばし、1999年には22万台強、97年に31万台を突破してからは現在までほぼ35万台前後を販売し、カムリやカローラとセダンのトップ争いを繰り広げている。
ちなみに2018年は32万5760台で全米4輪車の第9位、セダン車種ではトヨタ・カムリに続く2位(3位はトヨタ・カローラ)に位置している。
同様に2019年は32万5650台を販売し、順位も2018年同様だ。
11代目シビック アメリカ人の評価は
Twitchを通じて世界に向けて発表された新型シビックプロトタイプはカリフォルニア州トーランスで11月17日午後7時(米国西海岸時間)に発表された。
アメリカの若者たちはどのような印象を持っただろうか?
アメリカで活動するシビックオーナーによるコミュニティで情報を集めてみた。
「アメリカではフィットの販売が終了した。新型フィットの販売はアメリカではおこなわれない。ということはつまり新型シビックがフィットの役目を果たすということ」
「その役目とは若者のエントリーカーとして機能するということだ。今回はセダンの姿しか公開されなかったが、ハッチバックの姿を早くみたいね」
「セダンだからか? 落ち着いたデザインになった。アコードっぽい印象。タイプRがどんな姿になるのか待ち遠しい!」
「これはいい! 事前のティザーやリークされた画像で見たシビックよりもカッコ良いね! とくに、全体のシルエットがロングノーズのスタイルで、FRチックでカッコ良い」
「う~ん、ちょっとシンプル過ぎるかな?と思ったけど、新しいフィットのデザインランゲージの流れを組んでいるんだね。残念ながらアメリカに新しいフィットは来ないから、シビックにフィットを重ねてみるよ」
「肯定的な意味でレトロフューチャリスティック 原点回帰しながらも、新しい時代に沿ったシンプルだけど深みのある良いデザインだね」
アメリカではフィットの販売が終了する→シビックがアメリカにおけるホンダのエントリー車になることまでは頭が回らなかったが、確かにそういう図式となるのだろう。
ざっと聞いてみたところ、スタイルに対してはおおむね高評価。やはりハッチバックやタイプRの登場を心待ちにする若者が多い印象だった。
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