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マクラーレン・セナ 試乗 究極のロードリーガル・レースカー

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マクラーレン・セナ 試乗 究極のロードリーガル・レースカー

もくじ

どんなクルマ?
ー 究極のロードリーガル・レースカー
どんな感じ?
ー マクラーレンがすべてを注ぎ込む
ー 一般道でも柔軟な脚まわり
ー 軽量化が生む途方もないパフォーマンス
ー 親しみやすい800ps
ー 濃縮されたマクラーレン・テイスト
「買い」か?
ー 突出したふたつの魅力
スペック
ー マクラーレン・セナのスペック

新型BMW Z4(G29)発表 M40iパフォーマンス・ファースト・エディション 内装/スペック

どんなクルマ?

究極のロードリーガル・レースカー

「究極のロードリーガル・レースカーを生み出したかったのです」と、マクラーレンの「アルティメット・シリーズ」をディレクションする、アンディ・パーマーが話す。

カーボンファイバー製のタブに、800psの最高出力、75万ポンド(1億575万円)の価格を下げた、サーキット走行が前提の、大きな命題を受けて誕生したクルマだ。

生産台数は500台を予定し、世界各国で販売が出来る、認可も受けている。ただし、今回われわれがドライブしたクルマは、技術開発用のプロトタイプだった。

800psの怒涛のパワーと、250km/hで800kgものダウンフォースを発生させる。リアウイングがなかったとしても、アピアランスは明らかに挑戦的。そして、800kgのダウンフォースを発生させるのに要する時間も、極めて短い。0-97km/h加速が2.7秒、0-200km/h加速が6.8秒、0-300km/h加速ですら17.5秒なのだ。最高速度は339km/hとなっている。

サーキット専用となるGTRセナも、75台限定で生産される予定。セナよりも、さらに軽く、パワフルとなるが、ランツァンテのようなレースカーの開発スタジオは、標準の一般道向けのクルマを選択するだろう。

また、マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)の手による特注のオプションを希望すれば、75万ポンド(1億575万円)の価格を、さらに簡単に跳ね上げることもできる。この究極のハイパーカーのオーナーなら、ほとんどが特注オプションも選択するのだろう。

さらに目をひく数字が、乾燥重量とはいえ、1198kgという車重。同じアルティメットシリーズのマクラーレンP1は、ハイブリッドシステムを搭載していたこともあり、同等の装備で1395kgだった。参考までに、現行の720Sの乾燥重量は、1283kgとなっている。

この数字の持つポテンシャルに近づいてみたい。

どんな感じ?

マクラーレンがすべてを注ぎ込む

このセナは、720Sをベースに開発されているが、エアロダイナミクス性能を高めるための付加物で、ボディサイズは720Sより遥かに大きく見える。ボディの内側には、マクラーレン製のロードカーでは最も強固な、カーボンファイバー製の「モノケージIII」が収まる。

リアのバルクヘッド周りの強度を高める目的で追加された構造材が、後方視界を遮る。さらにその向こうの景色も、リアウイングが隠しているけれど。

一方で前方の視界は、見掛けによらず良い。ドアパネルには、樹脂ではなく、ガラス製の窓を選択することもできる。若干重量はかさむが、横方向の視界は向上するはずだ。駐車場にクルマを停める時や、縁石との距離を見る場合など、ドアからの視界も良いほうが良い。


クルマの威圧感はかなりのもの。アピアランスにたがわず、パワーウエイトレシオは669ps/t。シートに座って6点式のハーネスを締めると、自分ではドアを閉められなくなるが、この数字を味わうには仕方ない。

ひとつのくすみもない、コンセプトが現実の形となった、スーパーマシン。同じようなコンセプトで生まれた、アストン マーティン・ヴァルカンとは異なる。

「オーナーが楽しめるように、われわれはすべてを注ぎ込みます」

一般道でも柔軟な脚まわり

エクステリアとは対照的に、セナのインテリアはヴァルカンやマクラーレンP1ほど派手ではない。素のカーボンファイバー製のパネルで覆われ、エレガントなラインもほとんどない。直線的で、レースカー的だ。

それでも、非常にマクラーレン風ではある。他のモデルと同じステアリングホイールが、このセナにも装備させているから、似た雰囲気になってしまうのだろう。また、720Sにも用いられているインスツルメントパネルは、シンプルで大きく、レイアウトも見やすい。

彫りの深い、背もたれが固定されたカーボンファイバー製のシートが搭載されているが、ドライビングポジションも他のマクラーレンと基本的には同じ。幾つかの操作ダイヤルはシートに固定されており、シートと一緒にスライドする。ブレーキペダルはドライバーの中心にあり、右足か左足か、操作する足を選べるし、ステアリングホイールの調整しろもかなり大きい。

このクルマでベストなドライビングポジションが見つからないのなら、他のクルマでも見つからないだろう。他のマクラーレンとはに使わないような威圧的な第一印象とは裏腹に、車内には同じクルマの雰囲気が漂う。走っている時も印象は同じ。他のマクラーレンのように、シャシーとパワートレインの制御を変えるドライビングモードが選べる。

今回のテストでは、サーキットでの短いスティントと、比較的長い距離の一般道を走った。一般道では、サスペンションのセッティングは最もソフトな状態が良い。4輪がリンクしている油圧サスペンションのおかげで、硬いものの柔軟な乗り心地を提供してくれる。そして、パワートレインの設定を段階的に上げていきつつ、変速は自身で行う状態が気に入った。

オートマティックモードでは、ツインクラッチ・トランスミッションが低回転域で変速しようとするのだが、4ℓのV8エンジンからの振動がカーボンファイバー製のシャシーに伝えてしまう。特定の場所で、エコーのように反響してしまうのだ。カーボンファイバー製やアルミニウム製の自転車でも同じことが起きる。高剛性な分、共振音も大きい。

軽量化が生む途方もないパフォーマンス

セナのポテンシャルについて、さらに詳しく見ていこう。

1ℓ当たりの馬力は200psだから、ターボブーストが高まるにつれ、信じられないような加速をする。一般道では、わずか数秒しか味わえないが、シャシー裏側に刺さるように、撥ね上げた小石の音が響く。

ただし、ベースモデルとなった720Sとセナを一般道で比べても、ランドローバー・ディフェンダーとディスカバリーとの差程度というのは無理があるだろうか。どちらも普通に乗ることができ、似た目的のクルマながら、決定的に違ってはいる。セナのステアリングフィールは素晴らしく、エッジが丸められた乗り心地で迎えてくれるが、一般道ではその2台の違いはわかりにくいのだ。

セナの本領はサーキットでなければわからない。ドライビングモードをレースに切り替えると、車高は50mm低くなる。ボディ底面と路面のマジックで、ダウンフォースの60%を生み出すようになる。アクティブ・エアロもフロントとリアに備わり、リアのウィングは20度の可変領域を持つ。

パワーアップさせながらも、ハイブリッドシステムをやめたことで軽量化を果たし、空力特性も磨かれたセナ。これにより、途方もないラップタイムを実現している。

この手法で、ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテは、ラ・フェラーリやポルシェ918、マクラーレンP1よりも速いラップタイムを叩き出すことができる。そして、マクラーレン675LTが、P1よりも速くサーキットを周回できる理由も同じ。

そして、セナが、その記録を過去のものにしていく。圧倒的な差で。

親しみやすい800ps

セナは、新しいコンパウンドと設計が施された、ピレリ・トロフェオ・タイヤが標準で装備される。これにより、高速コーナリングで0.3G(16km/h)、低速コーナリングで0.2G(8km/h)、高い遠心力に耐えられるようになっている。ちなみに、追加費用無しで、一般的なタイヤに交換も可能ではある。

ちなみにマクラーレンP1は、0.2Gと0.1G、720Sよりも速いコーナリングを叶えている。

最高出力は720Sから9%向上した、と聞くとさほど大きくは感じられないが、実際サーキットで走らせてみると、路上では届くことのなかった、レブリミッターに達することも少なくない。さらに、セナのブレーキング性能も素晴らしい。

不思議なことに、セナの半分の400psほどのクルマでさえ、アクセルペダルを深く踏み込むことを躊躇するクルマもある。しかし、セナのスムーズで安心感の高い振る舞いが、高い信用を与えてくれるのだ。

トランスミッションへの考え方は、ほかのマクラーレンのモデルと変わらない。V8エンジンはデュアルクラッチ・オートマチックを介して、後輪のみを駆動する。このV8エンジンは、スピードを稼ぐ目的でパワーアップをさせてはいるが、570Sと基本的に同じ。ただし、内部には手が加えられているから、違うユニットだといった方がいいだろう。

パワー感は、フェラーリF12tdfやアストン マーティン・ヴァルカンとは別物。800psも発揮しなくていい場面では、ソフトリミッターが備わっている。でも、パドルを弾いて、シフトアップ目掛けて800psを味わうことも悪くない。

これほどのパワーを持ちながらも、親しみやすいクルマを運転したことはないからか、意外にもエンジンが衝撃的なものだとは感じられなかった。

濃縮されたマクラーレン・テイスト

パワーステアリングは油圧式ではないが、レスポンシブでスムーズ。極めて高い正確性とフィードバックがあり、現在存在する中でもベストといえるパワーステアリングだと思う。

低速コーナリングでは、マクラーレン・セナは720Sに似た印象を受けることは確か。ロータス2イレブンが、エリーゼのように感じられるのと一緒で、典型的なマクラーレンの特徴がそこにはある。鋭いターンイン。意のままにラインを狙える正確性。バンプなどでは柔軟でありながら、しっかりと抑えられたボディロール。そしてこれらは、軽量化によって一層濃密なものになっている。

マクラーレン・セナは、800psというパワーに目が行きがちだが、それ以上の様々な感銘を与えてくれる。パワーを取るか軽量化を取るか、という選択肢があった場合、コーナのたびに軽量化が良いと実感できる。しかし、マクラーレン540C以上のクルマなら、すべてのモデルで体感できる事実でもある。

目下、1日に2台のペースで生産されており、デリバリーも始まっている。今注文しても、既に遅いかもしれない。実際、マクラーレンは抽選を行ったようだ。

マクラーレンの他のモデルと近似した特徴のシャシーにトランスミッション、エンジンとハンドリングを持っていることに、引っかかるひともいるだろう。ライバルとなるスーパーカーメーカーに在籍していた重役が、こんな事をいっていた。

「同じ種類のソーセージを、いくつも売るわけには行きません。だから、ほかよりも10%だけ長くして、倍の値段をつけるのです」

彼は肉屋の経験はないが、意味することは理解できる。しかし、実際のマクラーレン・セナはこの言葉を覆していた。

「買い」か?

突出したふたつの魅力

その理由のひとつは、痛烈なまでのコーナリングスピードと、白眉の高速安定性。エキサイティングさも間違いなくあるのだが、高い安定感は安心感をもたらし、かなり飛ばして走っていても、更に速さを追い求めたくなってしまう。ポルシェ911のGTシリーズのように、時間を重ねる毎に、このクルマとの理解が深まっていくような、実直さのようなものを感じられるのだ。

ふたつ目はブレーキング。レースカーのブレーキングに関して説明すると長くなるのだが、シングルシーターのフォミュラーカー以外で、これほどのブレーキ性能を持っているクルマにはお目にかかったことがない。マクラーレンによれば、セナは200km/hから停止するまでの距離は、100mとしている。これは、マクラーレンP1よりも16mも短い。

といっても、かなり高速な状態から、力の限りブレーキペダルを踏んだ場合。一般的にはあまり意味がないかもしれないが、強力な粘着テープにでも捕まったかのように、停止することができる。

この突出した2点が、派生モデルのようなものではなく、明確に別の、新たなマクラーレンのモデルとして、セナを仕立てている。非常に魅力的で重要な差異だといえるだろう。

さらに、世界最速の量産車になる可能性もある。ただし、アストン マーティンとメルセデス-AMG次第ではあるのだけれど。

マクラーレン・セナのスペック

■価格 75万ポンド(1億575万円)
■全長×全幅×全高 -
■最高速度 339km/h
■0-100km/h加速 2.7秒
■燃費 -
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1198kg
■パワートレイン V型8気筒3999ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 800ps/7250rpm
■最大トルク 81.4kg-m/3000rpm
■ギアボックス 7速ツインクラッチ・オートマティック

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