先進のテクノロジーを派手なエアロで包み込んだ姿が印象的なラリーマシンだが、車名が示すとおり各メーカーにはベースとなる市販車があり、プロモーションとしても重要なWRCだけに、メーカーもアピールしたい量販車が使われるのが基本だ。
では、WRCで走っているラリーマシンのベース車はどんなモデルなのだろうか?
中には日本で販売されていないモデルもあり、フォーラムエイト・ラリージャパン2022はそんなレアマシンを見る機会でもあるのだ。
フォーラムエイト・ラリージャパン2022セレモニアルスタートトヨタ、ヒョンデ、フォードのワークスマシン
写真で見る【ラリージャパン2022】フォーラムエイト・ラリージャパン開催の豊田スタジアムには、開幕初日から多くのファンが駆けつけた!
現在WRCにワークスマシンを送り込んでいるのは、トヨタとヒョンデ、そしてフォードの3メーカーで、トヨタとヒョンデはメーカー直系のフルワークス体制。一方でフォードはM-スポーツというチームが活動主体となる形だが、名門フォードの名跡を受け継ぎ活躍を見せている。
まず、その3ワークスのマシンを見てみよう。
■トヨタ・ヤリス
トヨタのマシンは同社のベーシックモデルであるヤリスだが、そのヤリスをモータースポーツやスポーツ走行向けに仕立てえたGRヤリスがベースだ。
ヤリスは5ドアハッチバックで、1.0Lのガソリンエンジン、1.5Lのガソリンエンジン、1.5LのハイブリッドのFF車。トランスミッションはCVTに加え6MTも用意されており、実用車にとどまらないラインナップだ。
GRヤリスは完全にスポーツモデル。ガソリンエンジンのみで、1.5L・FF・CVTの「RS」と1.6Lインタークーラーターボ・4WD・6MTの「RZ」系というラインナップになっている。ノーマルのヤリスと違い、3ドアハッチバックでマッシブな前後フェンダーが印象的だ。
競技ベース車として、全日本ラリー選手権やスーパー耐久シリーズでも活躍している。
トヨタ・GRヤリスWRCラリー1トヨタ・GRヤリストヨタ・ヤリス■ヒョンデ・i20N
ヒョンデのベストセラー5ドアハッチバックのi20。ヒョンデは日本ではバッテリーEVのIONIC5と水素EVのNEXOのみの展開だが、世界的にはBセグメントを担うi20が同社の主力車種の1つでもある。
1.0Lと1.4Lのベーシックモデルに対し、ヒョンデのスポーツラインである「N」グレードは1.6Lのターボエンジンを搭載したハイスペックモデルであり、ラリーマシンのベースとしてはこちらのキャラクターがより近い。
ヒョンデ・i20N WRCラリー1(PHOTO:HYUNDAI)ヒョンデ・i20N(PHOTO:HYUNDAI)■フォード・プーマ
フォード・プーマは5ドアハッチバックのなんとSUV! フォードお馴染みのダウンサイジングターボである1.0Lエコブーストエンジンを搭載し、マイルドハイブリッドモデルもラインナップする。
その中でも「ST」はフォード伝統のスポーツグレードで、1.5Lターボエンジンと6MTを組みわせるホットハッチだ。さらに、「ST」のスポーツテイストを盛り込んだ「ST-Line」は、1.0L直噴ターボのマイルドハイブリッドを採用し、トランスミッションも6MTと7DCTが設定されている。
フォードは現在日本法人がなく正規販売はされていないが、並行輸入車であれば購入することも可能だ。
M-スポーツ フォード・プーマWRCラリー1(PHOTO:FORD)フォード・プーマST(PHOTO:FORD) あわせて読みたい じつはSUV! WRCで活躍するフォード・プーマ(PUMA)ってどんなクルマ?
2022年シーズンからスタートしたWRCのRally1規定。今季はトヨタGRヤリス、ヒョンデ…
プライベーターのマシンは日本では見られないレアもの揃い
レギュレーションで「ラリー1」と呼ばれるトップカテゴリーは上記3社によるワークスマシンが鎬を削るが、メーカーが用意したベース車両をプライベートチームが走らせているのが「ラリー2」から「ラリー5」までのカテゴリー。「ラリー2」にはほとんどワークスのようなシュコダを筆頭に、シトロエンとプジョー、ルノーのフランス勢やフォード、フォルクスワーゲンを走らせているチームもある。
■シュコダ・ファビア
代々WRCのセカンドカテゴリーにマシンを送り出してきた東欧チェコのメーカー。ファビアは1999年にデビュー、現行モデルは2021年に登場した4代目にあたり、1.0LターボとNA、1.5LターボをラインナップするFF車。ファビアは歴代のモデルもベース車としてWRCに参戦してきた伝統のマシンでもある。
また2022年の全日本ラリー選手権では、元F1ドライバーで、スーパーGTでも活躍したヘイキ・コバライネン選手が先代モデルのシュコダ・ファビアR5を駆りトップカテゴリーのJN-1クラスチャンピオンを獲得した。
シュコダは日本での正規取扱はないが、並行輸入で販売されている。
シュコダ・ファビアRS ラリー2(PHOTO:SKODA AUTO)シュコダ・ファビア(PHOTO:SKODA AUTO)コバライネンが全日本ラリーでドライブするシュコダ・ファビアR5(PHOTO:Rally Team AICELLO)■シトロエン・C3
かつてセバスチャン・ローブの活躍でWRCを席巻したシトロエンも、現在はワークス参戦はなくラリー2にベース車両をい供給する形になっている。
フォーラムエイト・ラリージャパン2022では新井敏弘選手がこのシトロエン・C3ラリー2で参戦したものの、残念ながらクラッシュによりリタイアとなってしまった。
シトロエン・C3は1.2Lターボに6ATを組みわせたモデルが正規販売されており、フランス車らしい個性的でおしゃれなスタイルと走りを楽しむことができる。
シトロエン・C3ラリー2(PHOTO:CITROEN Racing)シトロエン・C3■フォルクスワーゲン・ポロGTI
2013年から2016年までポロR WRCでWRCのマニュファクチャラー/ドライバーズタイトルを4連覇したフォルクスワーゲンは、トヨタがWRCに復帰した2017年にワークスから撤退。現在はポロGTIをベース車両としてラリー2に用意している。
ポロはフォルクスワーゲンの代表的モデルであるゴルフの1つ下に位置するBセグメントモデルで、ゴルフ同様代々スポーツグレードであるGTIを設定しているが、現在日本で販売されているのは1.0LターボのTSI系のみとなっている。ドイツで販売されているポロGTIは2.0Lターボとゴルフにも引けをとならない。以前はラインナップされていただけに、復活を期待したい。
フォルクスワーゲン・ポロGTIラリー2(PHOTO:VW)フォルクスワーゲン・ポロTSI スタイル(PHOTO:VW)■フォード・フィエスタ
フォードのラリー活動を担うMスポーツがラリー2向けにリリースしているフィエスタは、プーマ投入以前にはMスポーツのワークスマシンにも使用されていたモデルだ。
フォーラムエイト・ラリージャパン2022にはフィエスタラリー2マークIIが1台出場している。
フィエスタは1.0Lターボのエコブーストエンジンを搭載するFF車で、やはりスポーツグレードとしてSTが設定される。STは1.5Lターボと6MTの組み合わせだ。
前述のとおりフォードは日本から撤退しておりフィエスタも正規販売はないが、STや1.0Lのスポーティグレード「ST-Line(6AT)」系を並行輸入しているところもあるようだ。
なお、フォードでは電動化の流れを受けてフィエスタを2023年で廃止すると発表しており、現行モデルで8世代47年の歴史に幕を下ろすことになる。
フォード・フィエスタ ラリー2マークII(PHOTO:M -SPORT)フォード・フィエスタ(PHOTO:FORD.UK)■プジョー・208
代々ラリーの入門クラスにベース車両を用意するプジョーは「ラリー4」向けに208ラリーを用意。「ラリー4」はより市販車に近い入門クラスであり、プジョー・208ラリー4も日本でのナンバー取得が可能だ。流石にラリー4は正規販売はされていないが、並行輸入で購入できるようだ。1.2L直列3気筒ターボのラリーベース車が乗り出し価格1210万円という例がある。
フォーラムエイト・ラリージャパン2022には2020年全日本ラリーチャンピオンの新井大輝選手がプジョー・208ラリー4で参戦している。
ラリー4ではなく通常の208であればもちろん正規販売されており、電気自動車のe-208と1.2Lガソリンターボが用意されている。
プジョー・208ラリー4(PHOTO:PSA MOTORSPORT)プジョー208/プジョーe-208■ルノー・クリオ
ターマックラリーを中心にWRCでも存在感を示してきたルノーも、「ラリー5」カテゴリーにベース車両を投入している。現在の日本でのラインナップに「クリオ」という車名は存在しないが、日本では「ルーテシア」として販売されているモデルだ。
ラリー5車両は1.3Lターボを搭載するFF車で、ルノージャポンにラインナップされるルーテシアは同様のパワートレーンの他に1.6Lのハイブリッドも用意される。
ラリージャパンにはモータージャーナリストの国沢光宏氏が同車でエントリーしている。
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