打ち出されたトレンドカラー……何色っていうの?
ドイツの化学メーカーBASFが2021年10月、2021-22年版の自動車カラートレンド予測を発表、その報道向け説明会が19日(火)、横浜市にあるBASFジャパンの工場にて開かれました。
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カラートレンド予測は今後3年から5年のあいだに自動車のボディーカラーの傾向へ影響を及ぼす社会的変化や技術の進展などを分析し、複数のカラーサンプルとともに発表しています。これらは、自動車メーカーが新車のカラー展開を検討する際のアイデアソースになるものだそうです。
昨今の自動車業界といえば、世界中でSUVが大人気。このため「クルマのフォルムが似通ってくるので、色の個性がますます重要になっています」と、BASFジャパン執行役員の前田 孝さんは話します。カラートレンドの発表を通じて、「当社としても色の提案力を上げていきたい」とのこと。
カラートレンド予測では、複数のカラーサンプルのなかから、さらに、地域ごとのキーカラーが設定されています。日本を含むアジア太平洋地域のキーカラーとしては「MOBIUS(メビウス)」が打ち出されました。「ライトブルーと暖かみのあるブラウンの要素を合わせ持っている」「見る角度によって変化する」という、はっきり何色と表現しがたいカラーです。
中国のキーカラーは別に設定されています。「KNOWING IGNORANCE(ノーイング・イグノランス/無知であることを知る)」と名付けられた、どちらかといえば黒に近い色ですが、見る角度や部位によってグリーンからブラウンへ変化する色だといいます。
「こうした、相反する要素を併せ持つような『中間色』のラインアップが、いまファッションの世界でも広がっています」
こう話すのはBASFジャパンのカラーデザイナーである松原千春さん。特にアジアは色のバリエーションが豊富で、軽自動車や小型車でこうした中間色が増えているそう。
そして、このような中間色にこそ、コロナを経た世の中の変化が表現されているようです。
「18万人の社員の転勤ナシ」が決まるような世の中を捉えた?
今年のカラートレンド予測の全体テーマは「SUPERPOSITION(スーパーポジション)」。日本語では「重ね合わせ」と訳される量子力学の用語だといいます。
「コインをコマのように回転させると、表の要素も裏の要素も全て目に入ります。これが『重ね合わせ』です。同時発生、同時進行といった状態が形容され、コロナを経て、相反するものが一斉に起こって生活に影響を及ぼしている状況が、重ね合わせの原理に似ていたことからテーマに据えました」(BASFジャパン 松原さん)
松原さんはこのたとえとして、日本の某大手通信企業が18万人いる社員の転勤を無くす決断をしたことなどを挙げ、「大きなかじ取りの変更は発想の転換です。また、サステナビリティが取りざたされ、自由度や柔軟性も上がっています。均一でなければならない発想では絶対に生まれない中間的な考え方、これもスーパーポジションの解釈に似ているでしょう」と話します。
とはいえ、コロナで沈んだ世の中を踏まえ、カラーサンプル全体としては、際立って明るいトーンのものは打ち出していないそうです。それでも、明るめな色も意図的に数色入れているそう。
これは、「中間的な考え方による世の中の盛り上がりへの期待」であるといい、今後さらに、明るい色が世の中に増えていくと予測しているということでした。
もう「何色」っていう時代じゃない!
ところで、BASFに限らず、他の塗料メーカーも、世界中でどのような色の自動車が多く走っているか、その割合を毎年のようにレポートしており、それは「白が何%、黒が何%」というように、全ての自動車が何らかの色にカテゴライズされて集計されています。
しかし実際には、白や黒でも様々な要素を併せ持つ色や、今回のように何色か形容しがたい中間色が増えているのが実態とのこと。自動車メーカーから、「色が変化する顔料」のオーダーも増えたそうです。
また、カラートレンド予測は、上記のような自動車カラーの“シェア”とは必ずしも相関しない形で打ち出しているといいます。
「当社のカラートレンド予測も、『何色が流行る』とは言っていないんですね。というか、『何色です』という時代ではなくなっていると思います」(BASFジャパン 松原さん)
世界的に見て、自動車の色は「白」「黒」「グレー」「シルバー」の無彩色4種類が8割以上を占めますが、今後はそうした無彩色のバリエーションも含め、「何色か一概にいいきれない色のクルマ」がますます増えていくかもしれません。
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みんなのコメント
地域によって色味に差があるが、間違いないと思う。