カナダ国籍のレーシングドライバー、ロバート・ウィケンスが、インディカーでの大クラッシュを乗り越えて7年ぶりにドイツの地を踏み、NLS(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)へ挑んだ。
ウィケンスはフォーミュラ・ルノー3.5やF2、F1のヴァージンのテストドライバーを経て、メルセデス・ベンツのジュニア育成プログラムに選出されて2012年DTMドイツ・ツーリングカー選手権へデビューを果たした。
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2017年度末までメルセデスAMGのワークスドライバーとして活躍し、DTMでは2016年のシリーズ総合4位が最高位。2018年にはインディカーシリーズへと活動の場を移した。そして8月、ポコノ・レースウェイでの一戦において大クラッシュに見舞われ、脊髄損傷をはじめ全身に重症を負い、下半身不随となってしまう。
しかしウィケンスはレースへの復帰を諦めず、強いメンタルを持って厳しいリハビリやトレーニングに精力的に取り組み、2022年にはIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のサポートレースとして開催されるミシュラン・パイロット・チャレンジへ、ヒョンデ・エラントラN TCRを駆って出場。インディカーでの事故後、正式にレースへの復帰参戦を果たした。
■入念に行われた事前の安全対策
そんな困難を乗り越えて現役復帰を果たしたウィケンスが、世界一過酷なレースと称されるニュルブルクリンク24時間レース参戦へ向けて始動した。下半身不随のウィケンスのマシンは、ミシュラン・パイロット・チャレンジのTCRマシンと同様、すべて手で操作できるように改造されている特殊車両だ。
下半身不随のウィケンスだが、一般ドライバーと同様にニュルブルクリンクのライセンスを取得するために、座学講義やインストラクターについてのコース実習を事前に受けてのNLS初参戦となった。
万が一、クラッシュした際に自力でマシンから出ることができないウィケンスは、ニュルのメディカルデリゲートの監修の下で、メディカルスタッフやコースマーシャルらとともに何度も救出訓練を行った。また、別途レッカー車のスタッフによる車両の搬出方法についても、何度も確認と復習が行われるなど、事前の安全対策訓練がしっかりとなされ、走行準備が進められた。
4月6・7日、NLSの開幕戦とダブルヘッダーとなった第2戦の両レースに参戦すべく、ニュルへ姿を現したウィケンス。2017年のDTMのニュル戦以来、実に7年ぶりの来独とあり、『Welcome back!』と多くのファンから声を掛けられ、サインを求める行列もできていた。
TCRで長年参戦歴を持つイタリアのTarget SRLからヒョンデ・エラントラN TCRを駆り、ミシュラン・パイロット・チャレンジでもチームメイトであるマーク・ウィルキンスと組んで挑むニュルのノルドシュライフェ(北コース)。ウィケンスはDTMでグランプリコースでのレース歴は数多くあるが、ノルドシュライフェは初めての挑戦だ。
■事故原因は不明。24時間レース出場は「家族と話し合ってから」
開幕戦、ウィケンス組831号車ヒョンデはTCRクラス2番手、総合58番手と好調なリザルトで予選を終え、4時間の決勝ではウィケンスがスタートドライバーを担当。順調にクラス2番手を守りながら周回を重ねていたが、レース中盤の13周目を終える手前にバックストレートのデェッティンガーヘーエを抜け、ホーエライン・シカーネ(シケイン)からティアガルテンへ向かう手前でなんらかのトラブルが起き、ウィケンスはガードレールに衝突、その弾みで左側のフェンスを飛び越え、コース外へ落下するという衝撃的な事故が起きてしまった。
メディカルチームが現場へ急行し、救出活動と応急処置を迅速に行った後、ニュルから約50km離れた病院へドクターヘリで救急搬送。救出時には意識がはっきりあったものの、念のために病院では全身の検査を行い経過観察で一晩入院することとなったウィケンスは、翌朝には無事に退院したという。
フェンスを飛び越えた着地場所は、通常ニュルがタイヤバリアや防護柵等の資材置き場にしている施錠されているエリアで、観客やスタッフはおらず、巻き込まれた者はいなかった。最初にタイヤバリアに着地して複数回回転して資材の上で止まったこと、また車両から出火しなかったのも不幸中の幸いだろう。
ヒョンデのスポークスパーソンによると、アメリカからウィケンスの介助を兼任するメカニックが帯同していることもあり、病院にもそのメカニックが付き添っており、全面的にウィケンスをサポートした。事故原因は不明で今後解明する必要があるとしているが、ウィケンスはニュルをとてもエンジョイしていたという。救急搬送をされた病院では、クラッシュした夜にチーム関係者と面会し、差し入れのピザを喜んで口にし、スペアカーがあるかどうかを尋ねていたそうだ。
TCRクラスではニュルライセンスのBを取得していれば参戦できるとあり、レギュレーション上では今年のニュル24時間への参戦は可能だ。本人もその気は充分あるようだが、ウィケンスは家族と話し合ってから決定するとのことだ。
以前のニュルブルクリンクのノルドシュライフェでは、メディカルスタッフやコースマーシャル等にレスキューの特別講習会が必要となることから、障害を持つドライバーのレース参戦には長く門出を閉ざしており、積極的ではなかった。しかし、時代の変化とともに講習制度にも力を入れ、広く門出を開き、ウィケンスのように障害を持ったドライバーも健常者にも分け隔てなくウェルカムな姿勢へと変わってきている。
今回のウィケンスの事故で、メディカルスタッフやコースマーシャルらの日頃の訓練や事前の講習会が功を奏し、迅速に対応ができたことは、今後に向けてもポジティブに評価できる点だといえるだろう。
5月30~6月2日に開催されるニュルブルクリンク24時間レースのグリッドにウィケンスが再び姿を見せるのか、現時点では不明だがNLSやニュルのオフィシャル、ADAC(ドイツ自動車連盟)は、ウィケンスの勇気と不屈のチャレンジ精神に敬意を表し、彼やその家族の意志を尊重したいとしている。
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