ポイントランキングトップで迎えるスーパーGT最終戦、第8戦モビリティリゾートもてぎの36号車au TOM'S GR Supra。ドライバーは今をときめくスーパーフォーミュラ(SF)で初チャンピオンに輝いたばかりの宮田莉朋のダブルタイトル、そして2021年に続く2度目のチャンピオンを目指す坪井翔のふたり。そのふたりに、翌日から迎える最終大会への抱負を聞いた。
「いつもどおりですね」と、第一声を発するのは坪井。
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「シリーズ8戦あるうちのひとつのレースとして、第8戦もてぎで優勝する。チャンピオンを意識したくなくても、バチバチに意識してしまうのはしょうがないと思いますし、意識しないといけない。ただ、純粋に36号車としては開幕戦の(ノーウエイトの)岡山で悔しい思いをしているので(ピットミスでタイヤが外れてリタイア)、今回のノーウエイトレースでなんとかそのリベンジをしたい。去年の最終戦もてぎもGRスープラとBS(ブリヂストン)のパッケージはうまくいかなかった部分があったので、そのリベンジとか、いろいろなリベンジがあるので、それをしっかり果たしたい気持ちがあります」
その言葉と表情からは、チャンピオン争いのプレッシャーはほとんど感じられない。
「今年、開幕戦を除いて第2戦から第7戦まで36号車は本当に決勝で強い走りをしてきていて、その間はこれといったミスがほとんどなくここまで来れているので、そういった流れというか、自分たちの仕事をしっかりやり切れれば、結果がついてくるという自信を持ってここまで来ている。その自信というか、やって来たことが緊張していないように見えるのかなと」
坪井にとっては、宮田はSFではタイトルを争ったライバル関係。それでも先日のSF最終戦でチームメイトの宮田がチャンピオンに輝いたことをポジティブに捉えている。
「今週のGTに関していうと、SFでチャンピオンを獲ってくれた方が圧倒的に良かったですよね。逆に先週チャンピオンを獲れていなくて、ズーンと落ち込んで来られると……(苦笑)。そういう状態で今週末に臨まれるより、チャンピオンを獲って『ヨシ!』という気持ちでGTでもタイトル獲って海外に行くぞ、というプラスのモチベーションで来てくれる方が僕に獲っては100倍いいですね」
「正直、先週末のSFで僕にも(ラインキング4位で)数字上のタイトルの権利があったとは言っても、現実的にはほぼないに等しい状況だったので、同じトヨタ勢として、宮田選手がSFのチャンピオンを獲ってくれたのは非常に嬉しいです。もちろん、それが自分でありたかった気持ちはありますけど、今年の宮田選手、そしてトムスのパッケージは速くて強かった」
「僕はチームセルモで今年、苦しい思いをしてのランキング4位で、トヨタ勢としては2番手で終えられて、チャンピオンに手が届きそうなところまで来たという満足感などいろいろな感情がありますけど、僕もいい流れで今週末を迎えられている。同じトヨタ陣営のSFワン・ツー同士で同じクルマをシェアして挑めるということは、これ以上ない状況。宮田選手にとっては初めてスーパーGTでチャンピオンの権利を持って挑みますし、僕にとっては2度目になる。2度目のチャンスなんてそうそうある訳ではないですので、お互いにとってすごく大事な価値のあるチャンピオンが目の前に来ているので、ふたりで力を合わせてしっかり獲り切りたいなと思っています」と続ける坪井。
今季の36号車は2戦目で優勝して3戦目でも表彰台を獲得したことで、その後のレースはサクセスウエイトが厳しくなった影響で予選は後方に沈み、決勝で順位を上げるという展開でポイントを稼いできた。今週末のノーウエイトでの戦いではどのような展開を期待しているのか。
「予選では2列目くらいまで、いつもよりは前に行きたいですね(笑)。去年は予選Q1でビリ5(最後尾から5台独占)となってしまったのでまずは予選がすごく大事になると思いますし不安はありますけど、勝てばチャンピオンが決まる。300kmレースでも一概に予選がすべてではないと思いますが、予選でしっかり3号車(Niterra MOTUL Z)、16号車(ARTA MUGEN NSX-GT)の前にいると気持ち的には楽ですし、36号車は決勝に強いチームだと思っているので、予選で前を奪えたら、より有利な立場でレースができるかなと思っています。日曜の天気とか、周りがどんな速さで来るのかがわからないので、僕らができるベストを尽くして、その先にチャンピオンが転がって来てくれれば嬉しいなと思います」
⚫︎スーパーフォーミュラで新チャンピオンとなった宮田の次なる挑戦
その坪井と同様、もしくは坪井以上にリラックスした様子が伺えたのが、チームメイトの宮田だ。
「(SFタイトル獲得で)ほっとした部分が大きい。SFのチャンピオンのプレッシャーというか、どうせ獲れないという思いしかなかったので、獲るにはどうすべきかをずっと考えていたからこそ、GTについては何も考えていなかった。今回も坪井選手と吉武(聡)エンジニアに全任せですね(笑)」
ダブルタイトルにも当然、意欲を示すが、宮田的にはそこまでプレッシャーを感じていないようだ。
「なかなかない機会ですので、これまで応援してくれたチームやスポンサー、TRD、TGR(ToyotaGazooRacing)のみなさんにも感謝ですし、TGRとしてもドライバーズタイトルの2冠を達成したドライバーはこれまでいない。そういう意味では大きなチャンスだと思いますし、達成できたらすごく満足感があるのでしょうけど、WECと日本のタイトルと2冠ということもあると思うので、これからもチャンスがあると思っています。そこまで……ではないですし、SFのチャンピオンが獲れたのが僕の中では大きいです」
今、国内でもっとも勢いのあるドライバーである宮田。その宮田を、36号車auの伊藤大輔監督も目を細めて見守る。
「前回のオートポリスのレースを含めて、チームの雰囲気はいいですね。宮田莉朋 彼もノリノリですし、ノリノリ過ぎると困りますけど(苦笑)、そこはちゃんと制御しつつ行きたいなと思います」
「チャンピオンは当然獲りたいですし、獲らなきゃいけないと思っていますけど、それ以上に勝って締めくくりたいという気持ちが強いですね。いつも緊張感はありますし、このスーパーGTはいろいろなことが起きるレースなので(苦笑)、そこはドライバーは走ることに集中してもらって、こっちはこっちできちんとレースのストラテジーを組み立てていくだけですね」と、最終戦の抱負を話す伊藤監督。
ダブルタイトル、2タイムズチャンピオンなど、36号車のふたりのドライバーにはいろいろな称号がかかる最終戦もてぎ。もちろん結果が気になるところだが、まずは今、もっとも勢いのあるドライバーとチームが、ノーウエイトの戦いでどのような走りを見せるのか。そのパフォーマンスをしっかりと堪能したい。
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