もくじ
ー マクラーレンの先駆技術による究極のロードカー
ー パワーウエイトレシオ669ps/t 0-300km/h加速17.5秒
ー すべてを注ぎ込んだ、一般向けレースカー
ー 例を見ないコーナリングスピードの高さ
ー スムーズだから引き出せる800ps
ー 世界最速の量産型のロードカー
ー 番外編:セナの油圧サスペンション・システム
ー マクラーレン・セナのスペック
マクラーレンの先駆技術による究極のロードカー
わたしはマクラーレン・セナの中で、インストラクターか助手席のひとか、はっきりわからなかったが、誰かからの声を耳にした。とりあえず、わたしに何かが不足していることを伝えたい、という旨は聞き取れた。
恐らくテストドライブの時間なのではないか。今回15分の試乗を行う予定だったのだが、非常に多くのビデオカメラをクルマの内外に取り付けてていたため、時間が短くなってしまったのだろうと思った。
ドアが降ろされると、助手席に座っている元BTCCのレーサーのジョシュ・クックが実際に何が話されていたのかを教えてくれた。
「ピットレーンに長く止まっていたので、タイヤの温度が下がっていることを伝えて欲しいといっていました」
ありがとうジョシュ。でも、これってロードカーなはず。タイヤの温度を心配しなければならないのだろうか。
このクルマは間違いなく、公道走行も許されてはいる。
「わたしは、究極の、ロードリーガルなレーサーを作りたかったのです」
アストン マーティンのCEOではない、マクラーレンの「アルティメット・シリーズ」をディレクションしている、アンディ・パーマーが話す。
「今回のスーパースポーツ・シリーズのセナには、われわれの先駆的な技術をふんだんに盛り込んでいます」
パワーウエイトレシオ669ps/t 0-300km/h加速17.5秒
そのため、マクラーレン・セナの生産予定台数は500台の限定。もちろん世界的に販売することが可能な量産車で、イギリス流では789bhp、日本流では800psの最高出力と、約250km/hで800kgものダウンフォースを生み出す。
マクラーレンが公表する加速スペックは、0-100km/hが2.7秒。0-200km/hが6.8秒で、0-300km/hですら17.5秒という驚異的な数値が並ぶ。最高速度は339km/h。マクラーレンはいつもこの手の数値は正確だ。価格は、75万ポンド(1億1475万円!)となる。
そしてもうひとつの重要な数値。セナの乾燥重量は、わずか1198kgなのだ。これまでのアルティメット・シリーズだったP1は、ハイブリッドシステムを搭載していたこともあり、同様の装備で1395kgだった。現行の720Sの乾燥重量は1283kgとなる。パワーウエイトレシオは669ps/tで、派手な見た目を裏切らない数値といえる。
このセナは、720Sのシャシーを元に開発されているにも関わらず、空力的な付加物が加わり、かなり大きく見える。また、「モノケージIII」と呼ばれる乗員部分のフレーム、カーボンファイバー製のパッセンジャーセルが新しく開発されているが、従来のものより軽量で強固なものに仕上げられた。特にリアバルクヘッド付近には構造材が付加されていて、視界を遮っている。さらにその後方には、大きなリアウイングも付いている。
一方で、フロントウインドウの中心にはリアミラーが、両サイドにはドアミラーも備わっているから、視界は見た目ほど酷いものではない。むしろ、派手なスタイリングのクルマの割には良い方だろう。ドアパネルには、ガラスの窓を選択することも可能だ。ただ、重量が増えるし、それほど視界が改善するわけでもないと思う。
そして、何よりもこのエクステリアデザイン。かなり威圧的なものだということは充分理解しておきたい。
すべてを注ぎ込んだ、一般向けレースカー
わたしはレーシングスーツを着込み、首を保護するHANSを身に着け、6点式のハーネスで身体を固定する。お陰で、ドアを閉めようにも手が届かない。
クルマの成り立ちは、一般ユーザー向けに開発されたレースカーそのもの。しかも、一般車を改造したようなクルマとは違う、専用に開発されたマシン。ただし、コンセプトを具現化したという段階で、未だ完璧というわけではない。また、同じような動機で生まれたアストン マーティン・ヴァルカンとも異なる。
「われわれはすべてを注ぎ込みます。きっとお客様には楽しんでいただけるはずです」
セナのインテリアは、これ見よがしなヴァルカンやマクラーレンP1よりは控えめ。素のカーボンファイバーが露出しているが、機能的なものだし、デザインにも風変わりなところはない。むしろ、一直線にレーサーという感じだが、マクラーレンの雰囲気にも溢れている。マクラーレンは実用的なステアリングホイールをこのクルマにも装備しているから、同じように感じられるのかもしれない。
720S譲りのデジタル・インストゥルメントパネルは、起こして大きく見やすく表示させることもできるし、倒して最小限にすることも可能。720Sの場合、わたしは起こして表示させるほうが好きだ。
シートは彫りの深いものになっているとはいえ、一般的なドライビングポジションも、720Sと変わらない。ブレーキペダルは足元の中央にあり、右足でも左足でも踏むことができるし、ステアリングホイールの調整幅も大きい。このクルマでしっくりこない場合、他のクルマでもベストポジションは見つからないだろう。
例を見ないコーナリングスピードの高さ
ドライブモードは、このシャシーとドライブトレインだから、通常のマクラーレンとは異なっている。しかし、限られた時間の中でのサーキット走行とあって、今回は一般道向けのものは無視して、レースモードを迷わず選んだ。レースモードでは車高が50mm下がり、車体底面からダウンフォース全体の60%を発生させることが可能となる。
さらにフロントとリアにはアクティブ・エアロが取り付けられており、リアウイングは20度も角度が変化する。僅かなパワーアップと、ハイブリッド・システムの不採用による軽量化と、空力特性の改善。これにより、ラップタイムを向上させるのだ。
名だたるハイパーカー、ラ・フェラーリやポルシェ918、マクラーレンP1よりも、ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテの方がラップタイムで速いのも、同じ理由だといえる。マクラーレン675 LTはP1とほぼ同じタイムで走行ができる。そしてセナは、さらに引き離した。かなりの差で。
セナには標準で、新しいコンパウンドと設計が施されたピレリ・トロフェオ・タイヤが装備されている。このタイヤも加わって、720Sと比較して高速コーナリング時には0.3G、低速コーナリング時(10km/h以下)でも0.2G高い遠心力に耐えることができるそうだ。P1の場合は、それぞれ0.2Gと0.1Gの差となる。追加費用無しで、より公道向けのタイヤも選択は可能ではある。
高速走行時での安定性が生むコーナリングスピードの高さは、ほかに例を見ない。充分エキサイティングではあるけれど、信じられないほど安定しているから、どんなに速くクルマを走らせても、もっと速く走らせたくなるのだ。GTモデルの911のように、走りを追求していく過程で、クルマの完全性も高められていくように感じられる。
スムーズだから引き出せる800ps
さらにセナの加速・減速性能を見ていこう。
720Sと比較すると、9%の最高出力アップと聞くと大したことがないように思えるが、吹け上がりはかなり鋭くなっているように感じられる。
恐らく、セナが発する800psの半分ほどの最高出力を持つクルマでも、スロットルを踏み込むには勇気がいるはず。しかし、不思議なほどスムーズで安心感があるから、思い切りエンジンを回すことも気にならない。このセナほど大きなパワーを簡単に引き出せるクルマに出会ったことがなく、比較対象がないから、大きな衝撃を受けなかったのだろうか。
この強力な4ℓV8ツインターボエンジンは、デュアルクラッチATを介して後輪を駆動させる。充分速い570Sと同じユニットをさらにチューニングしてあるから、直線の加速感はまさにワープ。
セナに近い最高出力を持つフェラーリF12tdfやアストン マーティン・ヴァルカンとも、異なる体験だ。800psと出会う方法は、パドルを引いて、炸裂するパワーの世界に飛び込むだけ。今回は出力を抑えるリミッターの制御が入るけれど。
その反面、加速だけではないさまざまな印象を、このクルマからは感じ取ることもできた。
まずはブレーキ。シングルシーターのレースカーは別次元としても、セナのようなブレーキを持つクルマには、これまで出会ったことがない。マクラーレンは200km/hからの停止を100mでこなせるとしており、制動距離はP1よりも16mも短い。しかし、超高速で走行している時に何かに突っ込むような場面での急ブレーキ以外、あまり意味をなすものでもないとも思う。
世界最速の量産型のロードカー
油圧式のパワーステアリングはレスポンシブでスムーズ。極めて正確で情報量が濃く、今日のシステムでベストといえるもの。鋭いコーナリングでも狙った通りの正確性があり、ロールの抑制のされ方や路面への柔軟性など、低速域でも非常に好印象だった。
ただし、ロータス2イレブンをエリーゼに感じるかのように、マクラーレン・セナを720Sのように感じてしまうところがある。もしコーナリング時によりパワーを増やすか、ダウンフォースを減らすか、選択する場面では、ダウンフォースを減らすことで対応できるだろう。その場合、セナの振る舞いは540Cのように感じられるようになってしまう。
マクラーレンの同じキャラクターを持ったシャシーにトランスミッション、エンジンやハンドリングを備えているのだから仕方ない。
ライバルメーカーを離れた元幹部がこんな話をしていた。
「同じ肉屋で、同じ種類のソーセージをいくつも売ることはできませんよね。だから10%だけ長くして、値段を倍にしたんです」
彼は肉屋の経験はなかったはずだが、意味することは理解できた。
最後に、非常に悩ましい2点でまとめたい。
セナを速いマクラーレンの新しいモデルとしたいなら、別のキャラクターを持ったマクラーレンのクルマにするべきではないか、ということ。
もうひとつは、このクルマが世界最速の量産型のロードカーになり得そうだ、ということだ。
番外編:セナの油圧サスペンション・システム
マクラーレンのサスペンションシステムは他のロードカーと同様に、複雑なものが搭載されている。それぞれに2本のチャンバーが付いた、油圧スプリングが内蔵されているのだ。
チャンバーの1本は前後方向のピッチ、もう1本は左右方向のロールをコントーロルし、その間に取り付けられた蓄圧器を通じてつながっている。片側に圧力がかかる場面、つまりノーズダイブやボディロールを、オイルの流動で抑制することで、セナの姿勢はフラットに保たれる。アンチロールバーは備わっていない。これが、極めて上質な乗り心地を生んでいる。
セナの各輪にはコイルスプリングも備わっているが、それは非常に小さく、静止状態での車高を調整するために使われている。また、オイル式のショックアブソーバーも組み込まれているが、フローバルブが小さく抑えられ、主に一般道向けのドライビングモード用となっている。
レースモードにすると車高が50mm下がるが、油圧スプリングレートにも影響を与える。ピッチ方向ではレートが2倍に、ロール方向では2.5倍に増加するのだ。
マクラーレン・セナのスペック
■価格 75万ポンド(1億1475万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 339km/h
■0-100km/h加速 2.7秒
■燃費 –
■CO2排出量 –
■乾燥重量 1198kg
■パワートレイン V型8気筒3999ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 800ps/7250rpm
■最大トルク 81.4kg-m/3000rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチAT
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