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【トロロッソ・ホンダF1コラム】日本GP予選で速さの片鱗を見せるも、金曜の走行不足で無念の失速

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【トロロッソ・ホンダF1コラム】日本GP予選で速さの片鱗を見せるも、金曜の走行不足で無念の失速

 あの鈴鹿サーキットでまさか2台揃って予選Q3へ行けるとは。誤解を恐れずに言えば、トロロッソ・ホンダチームの誰もがF1第17戦日本GPを前にこんな結果を期待してはいなかったはずだ。

 それだけ鈴鹿はトロロッソ・ホンダSTR13にとって厳しい条件が重なっていた。

トロロッソ・ホンダ甘口コラム ロシア&日本GP編:終盤戦に期待がかかる“スペック3”パワーユニット

 旋回中に風向きが変わる回り込むような高速コーナー、そして高速での切り返し。風向き変化によるダウンフォース量の変化が敏感なSTR13は、強風が吹いたシンガポールGPの予選でも苦労したばかりだった。


 見た目以上に全開率が高く、パワーユニットの性能によってダウンフォースを削らなければならないレイアウト。最高の車体と言われるレッドブルがもう何年も2強に勝てないでいるように、非力なパワーユニットでは戦えないのが鈴鹿だ。

 しかしトロロッソ・ホンダはチーム一丸となってこの鈴鹿を重点レースと捉え、最大限の改善を準備してきた。それが効果を発揮した。

「トロロッソの人たちにしてみれば、日本人と働くのが初めてで色々と日本のことを知ろうとしてくれていますし、ホンダという会社を受け容れて我々メンバーを受け容れてくれている。今週末も自分たちのホームレースのような気持ちでドライバー、エンジニア、メカニックたちみんなが日本に来てくれています」(ホンダ・田辺豊治テクニカルディレクター)

 空力面の開発は第9戦オーストリアGPに投入したフロントウイングが不発で、基本パッケージはシーズン序盤からほとんど変わっていない。この間に改良されたのは、バージボードとフロアのスリット、ミラー、細かな整流フィンくらいだ。


 それでも第12戦ハンガリーGP後のテストで様々なアプローチをトライしてデータ収集を進め、マシンパッケージのポテンシャルを最大限に引き出す方法を突き詰めたことで夏休み以降のポテンシャルは向上していた。そして鈴鹿ではサスペンション周りに新たなアプローチを持ち込み風に対するセンシティブさを抑えようとしてきた。チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルスはこう語る。

「鈴鹿は非常に高速なコーナーが多いサーキットで、空力パッケージの性能を安定させることが大きな効果をもたらすんだ。だから我々はここに新パーツを投入し、フリー走行の最初にブレンドンのマシンにセンサーを装着してデータを収集して風洞やCFDと実走の誤差を確認した。このアップデートが上手く機能し、2台ともに週末を通して実戦使用することにしたんだ」

■ホンダの新パワーユニット『スペック3』で出力向上もセッティングの熟成の必要あり
 ホンダのスペック3パワーユニットも、「シーズン中の開発としては異例なほどの向上」とホンダ関係者が語るほど大幅に出力を上げてきた。

「ロシアGPの後にテストしてきた新しいキャリブレーションなどを入れて走って、改善が確認されましたし、基本的に問題ないレベルになっています。いつものことですけど、コース特性に合わせ込んでいかなきゃいけない部分もありますし、まだまだこれからドライバーとエンジニアの間で煮詰め作業は必要ですね」

 ロシアGPでは使用を断念したが、ホンダF1の拠点HRDミルトンキーンズでベンチテストでオシレーション(回転数振動)とドライバビリティのセッティング熟成を進めて、金曜フリー走行の時点ではまずまずの仕上がりだった。

 しかしピエール・ガスリーが燃料タンクのトラブルで金曜フリー走行2回目で75分を失ったことで事態は少しずつ綻びを見せつつあった。

 金曜夜にパワーユニットのセッティングにさらに変更を加えたところ、土曜になってオシレーションやそれに伴うパワーロスの症状が再発。その対策が充分にできないまま予選を迎えてしまった。信頼性確保を理由に予選後の変更を申請するも、条件付きで一度は認められたものが決勝直前の走行で「条件通りになっていない」と判明し却下されてしまうという事態にも直面した。

「クルマ自体にはとても満足だよ。でもフリー走行でエンジンに問題があったからブレンドンほどアグレッシブなセットアップで走ることができなかったんだ。アップシフト時にオシレーションがあって、かなりパワーが低い状態だったんだ。逆に言えば、それができればさらにパフォーマンスを向上させることができるとも言えるけどね。ドライバビリティもまだ改善の余地があるよ。それで0.2~0.3秒稼げていれば、(ロマン・)グロージャンを超えて5番手を獲ることもできたと思う」

 予選後にガスリーがそう語っていたのは、正確に言えばエンジンパワーが常に抑えられているわけではなく、オシレーションが発生するとハードウェアへのダメージを防ぐために自動的に瞬間的に出力を抑えるようなプログラムのことだ。予選アタック中に何度かそれが起き、ドライバーとしてはそう感じたということだ。

 フリー走行2回目のタイムロスが及ぼした影響はそれだけではなかった。

 ミディアムタイヤでロングランができなかったことで、ソフトタイヤのデータだけを頼りに決勝に臨まなければならなかった。路面温度が10度も高いコンディションで、トロロッソ・ホンダは「ミディアムの方がタイヤの摩耗が少ないぶんだけトレッドのゲージが分厚いままで内部に熱が籠もりやすく、ソフトよりもブリスターが起きやすいだろう」(エドルス)という理由で第2スティントにソフトを履くことにした。

■日本GP決勝はタイヤの扱いに苦戦

 第2スティントはソフトだから早めにピットインするのは避けたい。序盤にセーフティカーが入ったため中団グループ後方とのギャップはそれほど広がっておらず、彼らの前で戻れるだけのギャップができるまではステイアウトしたい。だからどうしてもピットストップは後ろへとズラされていった。


 フォース・インディア勢はトラフィックの中に飛び込んでもコース上で抜けるという自信があったから、ガスリーに対してアンダーカットを仕掛けていった。しかしトロロッソ・ホンダはこれまでの非力で抜けないイメージに囚われて動けなかった。

 先にピットインしたセルジオ・ペレスに対して反応すれば、エステバン・オコンがステイアウトしてオーバーカットしてくるという懸念もあった。そうこうしているうちにスーパーソフトのペースは落ち、フォース・インディア勢の2台ともに抜かれてしまったのだ。ブレンドン・ハートレーがスタートで出遅れて1対2の戦いを強いられた時点で負けはほぼ決まっていたのだ。

 そしてスタートも戦略も完璧に決めていたとしても、第2スティントのソフトタイヤに盛大なブリスターが発生し「ストレートで前が見えないほどのバイブレーション」(ガスリー)にまで至ってしまった時点でトロロッソ・ホンダ勢の入賞は難しかった。結局はソフトタイヤのタイヤマネージメントも、ミディアムタイヤのブリスター予測もできていなかった。

 STR13の速さはしっかりと磨かれた。しかし重要なフリー走行2回目の大半を失ったことから、レース週末は崩れて始めていたのだ。

「今のF1はクリーンな週末にすることが重要なのに、こんなふうにどこかでディレイが発生したことで次々に影響して予選、決勝にも響いてしまったんだ。今週は本当に特別なグランプリだった。大勢のファンの人たちが声援を送って応援してくれて、セバスチャン・ベッテルよりも多くの歓声を浴びるんだからね、普段じゃあり得ないよ!」


「グリッド上でも大勢の人がトロロッソ・ホンダのシャツやキャップを身に着けて応援してくれているのが見えて、特別な気分だった。多くの応援をもらって、みんなのためにここで良い結果を出したかったんだ。もっと良い仕事ができていればもっと良い結果が出せたはずだ。だから全てを上手くまとめ上げることができなかった今はすごくガッカリしているよ」

 大きな声援をもらい、マシンに速さがあっただけに、その悔しさはひとしおだった。この悔しさをバネに、しっかりと失敗から学び、次に繋げなければならない。それこそが日本のファンへの最大限の恩返しになるはずだ。

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