ドゥカティのフランチェスコ・バニャイヤが窮地に立たされている。今季は10勝目をマークする素晴らしいシーズンを送っているにも関わらず、MotoGPでの3連覇は風前の灯火となっている。
バルセロナで開催される最終戦に向けて、バニャイヤはライバルであるホルヘ・マルティンに24ポイント差をつけられているのだ。土曜日のスプリントでマルティンが優勝するなどバニャイヤより2ポイント多く獲得すれば、決勝レースを待たずしてマルティンがチャンピオン獲得を決めてしまう。
■バニャイヤ&マルティン、激烈タイトル争いも関係良好「コース外で敵対しても意味はない」新世代にスポーツマン精神宿る?
大きかったのは、マレーシアGPのスプリントで2番手を走行中に転倒を喫したこと。バニャイヤは追い上げつつあったものの、このレースで勝利したマルティンが再びポイント差を拡大。翌日の決勝レースではバニャイヤが勝ったものの、マルティンが2位を確保している。
バニャイヤはスプリントを苦手としていると言われることも多いが、バニャイヤの名誉のために言っておくと、彼はハーフディスタンスのスプリントレースでも好成績を出している。6月のイタリアGP以降、13回中6勝を挙げているのだ。一方のマルティンは7勝とマルティンがリードしているものの、バニャイヤが新フォーマットでも速さを発揮できることは明らかだ。
もちろん、まだ最終戦が残っており、バニャイヤの逆転が可能である以上、まだバニャイヤにタイトル防衛のチャンスは残されている。しかしシーズンを通してみると、スプリントでかなり多くのポイントがマルティンへと流出していることが分かる。それがバニャイヤが絶体絶命となっている原因だ。
スプリントでの合計獲得ポイントを見ると、マルティンが164ポイントを獲得しているのに対し、バニャイヤは116ポイント獲得に留まっている。
第2戦ポルトガルGPでは、レースをリードしながらターン1でミス。後にバニャイヤは、ブレーキング時の燃料負荷軽減の影響を計算ミスしてコースアウトしたことを明かしている。
フランスGPのスプリントでのリタイヤは、予選でのクラッシュでプライマリーマシンに大きなダメージが残っていたことも一因だった。結局、バックアップのGP24を走らせたが、本人いわく「危険」だったようで、わずか3周でピットインを余儀なくされた。
そしてバルセロナでの最大のミスは、スプリントの最終ラップでライバルに1秒差をつけて首位走行中に転倒してしまったことだ。
シーズン序盤の不安定な走りにもかかわらず、マルティンがドイツGP決勝でトップを走行中に転倒してしまったことで、バニャイヤはランキングトップに浮上した。しかし、夏休み明けの8月上旬にイギリスGPでシーズンが再開されると、バニャイヤはこの状況を活かすことができず、表彰台圏内を走行していながらスプリントで転倒してしまった。
この週末は、バニャイヤが最悪のタイミングでミスを犯す傾向があることを明確に示した。10ポイントのリードは3ポイントのビハインドとなり、タイトル争いの焦点は心理的、スポーツ的不利を覆すマルティンの精神力に突然移った。
そう考えれば、バニャイヤがマレーシアGPスプリントの第9コーナーでプレッシャーに押しつぶされそうになったのも納得がいく。ターン9はこのコースで最もトリッキーなコーナーのひとつで、かなり長いストレートの先にある複雑な上り坂の左コーナーだ。
セパンでのリタイアは、彼にとって今年4回目のスプリントイベントでのノーポイントとなった(マルティンは2回)。これは、今季これまでのスプリントを合計すると、バニャイヤはタイトル争いに48ポイントもの差をつけられている理由を物語っている。
一方で日曜日には、バニャイヤが大成功を収めている。マレーシアでは19戦中10勝目。すでに今季の彼は史上最高のライダーのひとりに数えられている。シーズン10勝は、ドゥカティやホンダでタイトルを獲得したケーシー・ストーナーと並ぶシーズン勝利数となった。
バルセロナでも最終戦でも優勝すれば、2001年、2002年、2005年のバレンティーノ・ロッシに匹敵する優勝回数を記録することになる。
11勝はロッシとジャコモ・アグスチーニが達成したシーズン最多勝利記録だが、アゴスチーニが記録した1972年の500ccクラスは計13戦しかなかったことを考えると、勝率でこれを上回るのは至難の業だろう。(なお年間最多勝利記録はマルク・マルケスの13勝)
決勝レースのみのポイントを見れば、マルティンが321ポイントに対し、バニャイヤは345ポイントを獲得。MotoGPが週末フォーマットを見直し、スケジュールにスプリントレースを加えていなければ、バニャイヤがチャンピオンになっていたと結論づけるのは簡単だろう。結局、スプリントを除外すれば、24ポイント差でチャンピオンシップをリードしているのはバニャイヤであり、マルティンではないのだ。
しかしそれは極論だ。バニャイヤは週末を通じてスピードを上げていくことで知られている。金曜日のスタートはゆっくりで、徐々にペースを上げ、シングルラップのパフォーマンスとロングランのスピードの両方を着実に上げていくスタイルだ。
その過程で重要な役割を果たすのがスプリントで、実際のレースコンディションでスピードを磨く機会を与えてくれる。スプリントでマルティンに負けていた彼が日曜日のレースで勝てる理由のひとつでもある。
もちろん、スプリントでの散々な成績のいくつかは、完全に彼自身が作り出したものではないことに注意する必要がある。たとえばヘレスでは、ブラッド・ビンダー(KTM)とマルコ・ベッツェッキ(VR46)に挟まれて転倒。また、マルティンが表彰台に上ったアラゴンのスプリントレースで9位まで順位を落としたことについても、ミシュランタイヤの不具合を強く示唆した。
しかしこれらのミスは、バニャイヤが犯したアンフォーストエラーに比べれば微々たるもの。1週間後にマルティンに王座を明け渡さなければならない重要な理由ではないのだ。
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みんなのコメント
24ポイント差でペッコがリードしてるそうな
速かったのはペッコで、
強かったのはマルティンって事ですね
ルールが変わってより安定感が
求められる様になった