提携拡大はプラットフォームの共有化も
ジャガーは2車種の小型クロスオーバーを投入し、SUVの製品ラインナップを拡大しようと計画している。減少している販売を強化するためだ。ジャガー・ランドローバーとBMWの提携拡大の一環として、これらのモデルにBMWのプラットフォームが使われる可能性がある。
【画像】FAARプラットフォームを採用したBMW 1シリーズ 全55枚
電動パワートレインの共同開発から始まったジャガー・ランドローバーとBMWの提携はさらに拡大する見込みで、新しいエントリー・レベルのランドローバー車や、レンジローバー・イヴォークとランドローバー・ディスカバリー・スポーツの次世代モデルにも、BMWのアーキテクチャが使われるという予想もある。
両社の提携は既に水面下で拡がりつつある。AUTOCARが得た情報によると、BMWはJLRに直列4気筒と直列6気筒エンジンを、単体およびハイブリッド・システムとの組み合わせで供給する予定だという。
内燃エンジンの共有は、両社が協業をさらに大規模な段階へ進めようとしている可能性を示す。すなわち、次世代の小型車用プラットフォームの共有だ。
ジャガーから2種類の小型「ペイス」
2台の経済的な小型ジャガーは、既に開発の初期段階にあり、2020年代半ばの発売に向け、量産化の承認を持っているところだ。これらの2モデルには、BMWのFAARと呼ばれる新しい前輪駆動用プラットフォームがベースに使われる可能性があるようだ。
これらの2モデルは、小型のSUVとクーペ風クロスオーバーで、ジャガーのSUVファミリーに倣って「ペイス」という名前が与えられる見込みだ。
さらに、将来的に両社の協力関係が深まれば、2020年代半ばに登場する次世代型レンジローバー・イヴォークとランドローバー・ディスカバリー・スポーツが、次世代型ミニ・カントリーマン(日本名:ミニ・クロスオーバー)やBMW X1とプラットフォームを共有することも考えられる。
BMWとのプラットフォーム共有は、長年噂されているエントリー・レベルのランドローバー車が実現する可能性にもつながる。AUTOCARが昨年初めに報じたこのモデルには、フリーランダーという車名が復活するかもしれない。
電動化に対応するための提携
2025年から施行される厳しいEUのCO2規制に適合することは、JLRにとって一刻を争う急務だ。壊滅的な中国市場の失速は、同社にとって大きな障害となっている。また、ラインナップの再編と新型車の投入に向け、大型モデル用のMLAプラットフォームに巨額の投資が必要だった。そのため、前回の四半期決算では約380億円もの赤字を計上した。
しかし、これから投入される新型モデルが利益を生むと同社は信じている。これから発売される新型車には、復活するランドローバー・ディフェンダー、電気自動車となるジャガーXJ、第5世代の新型レンジローバー、大型SUVの新型ジャガーJペイス、そしてレンジローバー・シリーズの新しい電動クロスオーバーが含まれる。
JLRとBMWは今年6月、次世代車用の電動パワートレインを共同開発すると発表として業界を驚かせた。それからすぐに、内燃エンジンにも提携を拡大すると報じられた。
提携が発表された時、JLRのエンジニアリング・ディレクターであるニック・ロジャースは次のようにコメントしている。「この度重なる大きな変革に対応するため、両社とも次世代電動駆動ユニット(EDU)を必要としており、その共同開発は双方にとって有益な提携になるであろうことが、BMWグループとの話し合いで明らかになりました」
この抗うことのできない電動化への動きは、最も利益を上げている自動車メーカーにとっても大きな負担となっている。メルセデス・ベンツでさえ、新プラットフォームと電動化の開発費のために、多額の利益が消えると見ている。
投資は将来向け技術開発に回す
AUTOCARの情報提供者によれば、EDUの共同開発からさらに進んだエンジン共有の提携は、JLRにとって自身のインジニウム・エンジンに対する投資リスクを減らす意図があるという。そのリソースを、JLRが「ACES(自動運転/コネクテッド/電動化/シェアリング)」と呼ぶ、多額のコストを必要とする将来に向けたテクノロジーの開発にまわすことができるというわけだ。
実際、2025年および2030年に施行されるEUの排ガス規制に適合するためには、シティカーより大型のクルマはほとんどがプラグインハイブリッドにならざるを得ないだろう。だからこそ、JLRではBMWのFAARプラットフォームを共有することについて現在検討しているのだ。
BMWの次期型X1などに使われるFAARアーキテクチャは、ガソリン、ハイブリッド、そして完全な電気駆動パワートレインにも対応できるように設計されている。
この横置きエンジンをベースとするFAARアーキテクチャは、BMWの前輪駆動モデルとミニの全モデルに使われる予定だ。JLRがこれを共有することになれば、モダンでコンパクトなハイブリッドのプラットフォームという、2025年以降に向けて欠けている重大な穴を埋めることができる。
共有化による大きなスケールメリット
現在、JLRの小・中型モデルの販売規模は約25万台。これがBMWの85万台に加われば、前輪駆動プラットフォームの生産は大幅に押し上げられるだろう。FAARプラットフォームの生産はBMWのオックスフォード工場とJLRのヘイルウッド工場で行われ、これに組み合わされるエンジンとバッテリーの生産がBMWのハムスホール工場で、電気モーターの生産がJLRのウルヴァーハンプトン工場で行われることになる。
ジャガーの2つの小型車と、ランドローバーのエントリー・モデルが加われば、2025年までにFAARプラットフォームの生産規模は年間150万台に達するだろう。
FAARアーキテクチャはJLRにとっても好都合に思われる。全長4.2mから4.6mまでのモデルに使えるからだ。それより小さなモデルはあり得そうもない。バッテリーを搭載するためには最低限そのくらいのサイズが必要だからだ。
例を挙げると、現行型ディスカバリー・スポーツは全長4.6mで、BMW 2シリーズ・グランドツアラーとほぼ同サイズ。ミニ・カントリーマンは4.3mで、レンジローバー・イヴォークが4.37mだ。
最近発売された第2世代のイヴォークと、アップデートを受けたディスカバリー・スポーツは、どちらもJLRのプレミアム・トランスバース・アーキテクチャをベースにしている。このプラットフォームも電動パワートレインの搭載に対応しているものの、基本的には旧型プラットフォームの改良版に過ぎない。より先進的なBMWのFAARプラットフォームを使えば、大きなスケールメリットが見込めるため、生産コストを削減することができる。
フリーランダーの名前が復活
現時点でわかっている情報はごく限られているが、小さなランドローバー車はおそらく、都市部を重視しながらも、ライバルと比べると依然として走破性が高いコンパクト・オフローダーになる見込みだ。スタイリングは新型ディフェンダーから多くの影響を受けたものになるだろう。
このフリーランダーと名付けられる可能性が高い新型車の源流は、2011年に発表されたDC100コンセプトに遡ることができそうだ。DC100コンセプトは当初、次世代のディフェンダーとしてデザインされた。その楽しげでコンパクトなデザインは評価されたものの、結局これが新型ディフェンダーとして製品化されることはなかった。
ジャガーの「ペイス」ファミリーに加わる2つのモデルは、どちらも同サイズのコンパクト・クロスオーバーだが、片方はクーペ風のスタイリングを持つモデルになる。このルーフが低い新型ジャガーは、先日同社を離れた元デザイン・ディレクターのイアン・カラムが、ジャガーのために初めてデザインした2003年のR-D6コンセプトから着想を得たものになるかもしれない。ジャガーはAペイス、Bペイス、Cペイス、Dペイスという名称を既に確保している。
これら3台のニューモデルは、いずれもハイブリッドで、価格は2万4000ポンド(約305万円)程度になる見込みだ。おそらくJLRの平均CO2排出量を減らすため、その多くがプラグインハイブリッド技術を採用するだろう。
2025年以降も生き残るために
これら3モデルと、次世代型イヴォークおよびディスカバリー・スポーツの登場は、EUの平均CO2排量規制がさらに厳しさを増す2025年になるだろう。
現時点で、JLRは来年から施行されるEUの平均CO2排出量目標値の95g/kmから除外されている。しかし、2025年には平均CO2排出量を80g/kmまで下げることが求められる上に、年間生産台数の約15%が純粋な電気自動車または長距離を電気のみで走行可能なプラグインハイブリッドでなければならなくなる。
2021年6月1日より、欧州委員会は実際の燃料やエネルギー消費量を調べるため、現実の世界で得られた情報を用いる予定だ。自動車メーカーはそのモデルの車台番号と、燃料や電気の消費量、合計走行距離のデータを提出することになる。EUは車台番号と現実世界で得られたCO2排出量のデータを使って、毎年10月に各自動車メーカーごとの走行報告書を作成することを計画している。
EUによるメーカーごとの平均CO2排出量目標値と、そのメーカーのクルマが現実世界で排出したCO2量を比較することで、EUは自動車メーカーにエネルギー消費量削減に向けた多大な圧力をかけようとしている。対応の機敏な自動車メーカーは、無駄な燃料消費につながるドライバーの操作を抑制する方法の開発に着手している。
JLRとBMWの提携は、EUの法規制が全自動車メーカーに与える計り知れない圧力の産物であることは確かだ。CO2規制に立ち向かうため、今後も数多くの自動車メーカー同士による技術的提携が結ばれることになるだろう。JLRとBMWはその最初の例に過ぎない。
BMW製プラットフォームを使うJLRの新型車
ジャガーの小型SUV
Eペイス(ジャガーの現在のベストセラー車)より短くて低いこの小型SUVは、エントリー・レベルのランドローバー車よりも現代的で洗練されたスタイリングになると予想される。外観と運転フィールは、Iペイスからの影響が濃いものになるだろう。
ジャガーの小型クロスオーバー・クーペ
BMW X2の従兄弟として流麗なスタイルを持つこのモデルは、本物の小型高級車市場向けジャガーとして女性層も取り込むことが期待される。アストン マーティンと同様、ジャガーも女性客の視線を意識しているものの、現在はまだそれに適切なモデルをほとんど提供していない。
ランドローバー80
コンパクトなエントリー・レベルのランドローバー車。フリーランダーの名前を受け継ぎ、価格は2万4000ポンド程度になる見込みだ。スタイリッシュな家族向け5ドア・モデルで、スタイリングは1948年の初代ランドローバーや、新型ディフェンダーから着想を得たものになる。大ヒットになる可能性を秘めている。
次期型レンジローバー・イヴォーク
今年はじめに発売された2代目イヴォークは、JLRの最新PTAプラットフォームを使用しているが、2020年代後半に登場する3代目ではBMW製アーキテクチャに切り替わる可能性がある。これによってコスト削減が可能になり、JLRとBMWが共同開発する電動パワートレインの搭載も容易になる。
次期型ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ
現行モデルは今年はじめにフェイスリフトを受けたので、次世代型の登場は2025年頃になると思われる。大幅に電動化されたバージョンが必要となるため、JLRがBMW製プラットフォームの採用を考えることは理に適っている。
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