7月24日、F1はこれまで発表している10戦に、3戦を加えた最新のスケジュール合計13戦を発表した。
今回、新たに加えられた3つのグランプリは、アイフェルGP(ドイツ・ニュルブルクリンク)、ポルトガルGP(アルガルベ)、エミリア・ロマーニャGP(イモラ)だ。3つとも、ヨーロッパで行われるグランプリとなった。これで13戦中、12戦がヨーロッパラウンドとなった。
イモラでのF1GPは異例の2デー開催。将来のフォーマット変更に向けた実験的意義も
新型コロナウイルス感染症が拡大する前の2020年のカレンダーは22戦で、そのうちヨーロッパラウンドは9戦しかなかったことを考えれば、明らかにヨーロッパ内でグランプリを開催する方向に、F1(リバティ・メディア)が方向転換していることがわかる。
その理由は、2つ考えられる。
ひとつは新型コロナウイルス感染症がいまだに収束していないため、状況の異なる国をまたぐ移動に関して予定が立てづらいためだ。
例えば、カナダだ。今回の新カレンダー発表にともなってカナダGP主催者は、2020年にカナダGPが開催されないことを正式に発表した。これはカナダ政府が7月3日に、アメリカ以外の国から入国する者に対して行っていた入国後の14日間の自己隔離措置の期限を、7月31日から8月31日まで延長したことと無関係ではない。
またアメリカとメキシコに関しては、両政府が、新型コロナウイルス対策として、2カ国間の個人的な観光やレクリエーション等を目的とした不要不急の移動の制限が複数回延長され、7月17日に8月20日まで延長することが発表された。つまり、現時点で連戦を行える状況にない。
ブラジルGPには関しては、ブラジル政府が入国に関する制限措置を一部緩和し、国籍にかかわらず、居住する意図を有しない短期滞在目的の訪問ビザを所持する外国人、または訪問ビザが免除された外国人が芸術活動、スポーツ活動やビジネス活動を目的として、空路で入国することを妨げるものではないという入国制限措置を7月1日に30日間延長したが、200万人以上というアメリカに次ぐ世界で2番目の感染者を出しているブラジルでのグランプリ開催は現実的ではない。
ただし、今回発表された新カレンダーには、新型コロナウイルス感染の拡大に封じ込めているにも関わらず、名前が復活しなかったところもある。それはベトナムだ。7月23日の段階でのベトナムの感染者数は412人。死亡はゼロという状態だ。
4月以降は海外からの入国者を除く国内での新規感染者が99日間ゼロの状況も続いていたほどで、今回F1のカレンダーに追加されたイタリア、ポルトガル、ドイツよりも、新型コロナウイルス感染拡大は明らかに収束している。
しかし、ベトナムの名前が今回追加されることはなかった。その理由として考えられるのは、ベトナムGPがフライアウェイラウンドだからだ。
フライアウェイラウンドというのは、機材を自チームのトラックで運ぶヨーロッパラウンドとは異なり、飛行機をチャーターして空輸しなければならない。その輸送費は基本的に主催者側が負担する。その輸送費を捻出するため、主催者は無観客レースではなく、チケットを売って有観客でレースを開催したい。9月末に開催を予定しているロシアGPは、有観客レースにすることでカレンダーにとどまったと言われている。日本やシンガポールが早期に2020年のF1開催を断念したのは、そのためだった。
まだ完全に新型コロナウイルス感染拡大が収束していないこの時期に、F1のような国際的なスポーサイベントを有観客で開催できるのは、政府に権限が集中している国でないと実現的には難しいだろう。さらに、F1(リバティ・メディア)にとっては、テレビ局との契約上、15戦以上の開催を目指さなければならない。そうなると、移動距離が短く、出入国でも無理がなく、さらに無観客で開催できるヨーロッパラウンドが最も現実的な選択肢だったのではないだろうか。
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