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“超”マニアックな和製高級車5選

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“超”マニアックな和製高級車5選

意欲的な1台だったものの、セールスは芳しくなかった日本製高級車を小川フミオが振り返る!

意外なほど新鮮

走りも悪くない!──新型トヨタ・シエンタ試乗記

“高級車”ってどうやって作られるんだろう……それがわかっていれば苦労はないだろうけれど。かつてレクサスは、“史上最速でブランドになった”と、評価された。いまはテスラかもしれない。

なにをもって高級車と認定できるかは、乗る人が決めることかもしれない。日本のメーカーはかつて、なんとか高級車を作ろうと努力して、でも結果的にうまくいかなかったモデルもある。今回紹介するモデルもたった1代限りで終わってしまったから、うまくいかなかった典型例だろう。

でも、ですよ。過去の日本車を振り返ってみると、各メーカーが作ろうとした高級車には個性的なモデルが少なくない。こだわりがおもしろい。なにをもって、メーカーが高級車と自己定義するのか。そこも興味深いのだ。手を抜いてつくられたわけではない。

かつての高級車は、大排気量で、車体が大きめで、レザー内装で、という組み合わせが多い。それに従うか、それとも日本ならではの新しい定義を作るか……その試行錯誤を続けていくと、独自の高級車が生まれてくる。たとえばトヨタの「プログレ」や今回紹介する「ブレビス」は、日本専売車ゆえ、日本の道を考慮したコンパクトなボディサイズを持ったモデルだった。

当時人気の高かったメルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」などと近しいサイズとし、ヒットを狙ったものの、思うようには売れなかった。結局のところサイズの大きいトヨタ「クラウン」や「セルシオ」を求め続けたのだ。このあたりが高級車の難しいところである。

今回取り上げる5台は、日本のメーカーが自分なりの価値基準と、持っている顧客層の好みなどに合わせて企画し、作り上げた力作だ。認知こそされなかったものの、今の視点から見ると、意外なほど新鮮だ。こだわりが強ければ強いほどおもしろいのである。

私はこの原稿を書いていて、あらためて乗ってみたくなりました。

(1)トヨタ「ブレビス」小さな高級車は、自動車メーカーがずっと抱えてきた命題かもしれない。ブレビスしかり。2001年にトヨタ自動車が発売したこのクルマ、ひとことでコンセプトを説明すると、“小さなセルシオ”。

当時の3代目セルシオが全長4995mmであるのに対して、プレヴィスは4550mm。高級車であるから、快適装備はもりだくさん。16インチ(オプションでは17インチも)アルミホイール、本革シート、ナビゲーションシステム、5.1チャンネルオーディオ、ディスチャージヘッドランプ(HIDランプ)、ブラインドコーナーモニター、電動リアサンシェード、さらにポジションメモリー機能には電動で調整できるペダル位置まで含まれる。

今でこそ驚くような装備かもしれないが、当時の基準からすれば装備のてんこ盛りだ。いまあらためて乗ってもういちどじっくり味わってみたいものだ。

ただし、姉妹車の「プログレ」と異なり、ウッドパネルが本物の木から木目調のイミテーションに置き換わるなどクオリティが若干下げられていたのが気になるところ。現在のレクサスが、ボディサイズやモデルにかかわらずクオリティの高い加飾を使うのとは対照的だ。“見栄え重視”というところか。もっともプログレがオーバークオリティだったため、後発のブレビスではコスト面でも見直しが入ったのだろう。

シャシーも基本的にはプログレと共用。エンジンは2.5リッターおよび3.0リッターの直列6気筒で、後輪駆動と4輪駆動が選べた。

当時ドライブしての個人的な印象では、悪くないけれど、さほど印象的でもない、というもの。そりゃ、考えてみれば、オーナーをいかに気持ちよく快適にするかに心を砕いていたプロダクトである。ちょっと乗りでは真価はわかんないだろう。

プログレより若々しいイメージだったものの、ハンドリングがシャープだったという印象もない。クラウンとおなじく、とにかく快適性重視の味付けだったのだ。今のレクサス「IS」と比べれば、かなりおっとりしていたように記憶する。

ただし、じっさいの販売はふるわなかった。2007年の販売終了までのあいだに生産されたのは3万台少々。当時、メイングレードが300万円台~という価格が高すぎたのか、マーケットがなかったのか。

私が当時考えていたのは、高級車とは装備ではない、ということだった。なぜわざわざコンパクトなクルマを作ったのか。その理由づけがはっきりしないと、消費者だって手を出しにくい。

つまりブレビスは、BMWのようにキビキビとした運動性能を持っているとか、クルマ本来の走りのよさこそ、最重要視すべき価値だったのかもしれない。

(2)日産「レパードJ.フェリー」日産自動車が、1992年に発売したレパードJ.フェリーは、トヨタの上級ラインナップに対抗するための販売戦略上重要な車種だった。

そもそもレパードはトヨタ「ソアラ」の競合で、高級パーソナルクーペだった。とくに2代目はクリーンなラインで、好感がもてたものだ。だけど、薄味というか、上品すぎるデザインが、日産の弱点。いまひとつ、自動車好きの心に響かなかった。それよりも、ドラマ『あぶない刑事』での劇用車イメージが強くなってしまった。

2代目レパードは1992年に生産中止。ところが、トヨタのほうはソアラを作り続けているうえ「アリスト」や「ウインダム」など新規モデルを投入。日産のラインナップには「セドリック/グロリア」などの既存モデルしか上級車がなくなってしまうという、ちょっと信じられないことが起きた。

そこで、本来米国向けだったインフィニティ「J30」を仕立て直して国内に投入したのがレパードJ.フェリー。2ドアから4ドアに変更するとは大胆な路線変更であるものの、そもそも初代レパードには4ドアの設定もあったから違和感はない。

ただし初代がスポーティなイメージだったのに対し、レパードJ.フェリーは誰が見ても重厚かつ高級なイメージが漂っていた。まるでジャガーを彷彿とさせるデザインだったのだ。

サイズ的には、4880mmの全長に対して2760mmのホイールベース。余裕ある寸法がいっそうセダン的なプロポーションを際立たせた。かつ尻下がりのデザインは個性を高めた。

4.1リッターV8と3.0リッターV6、2種類のパワートレインが用意されていた。駆動方式は後輪駆動のみ。V8モデルの一部には後輪操舵システムである「Super HICAS」が装備されているいっぽう、V6には容量可変マフラーというぐあいで、走りのための装備は、“技術の日産”で売っていただけに、それなりのこだわりが感じられた。

乗った印象も、豊かなトルクをうまく活かしていて、米国車と日本車の中間とでもいえばいいのか……独自の個性があった。ハンドリングも、飛ばせば、それなりにスポーティで、セダンとしてよく出来ていると感じたものだ。しかも乗り心地はしなやかで、当時の日本車では異色の出来栄えだった。

ただしテールがぐっと下がったスタイリングは市場で不評(私はこれでいいと思ったけれど)。1996年までのライフサイクルで、販売台数も尻下がり。月販100台にまで落ち込んでしまった。

販売不振の理由はいろいろ分析もあるだろう。当時私としては、プレスドアなどの手法が、「サニー」などとも共通だったのが興ざめだった。日産のラインナップにおけるベーシック車とも共通で、じつは特別感がいまひとつ感じられないなぁと思ったものだ。テールがどうこうという話ではなかったのである。

(3)2代目三菱「デボネアV AMG」三菱自動車が「デボネアV」を発売したのは1986年。先代デボネアが1964年から生産されていた超長寿車だっただけに、どんなクルマが出来上がるだろうと楽しみだった。

はたして「V」が車名についた2代目は……なかなか大変な船出だったようだ。“FFニュークラシック”なるスローガンが実体をうまく表現していたかというと、そこはどうなんでしょう。

パーソナルユース、ファミリーユース、さらに社用、と、カバーする範囲が大きくて、つまり、思惑がいろいろ入って、結果、1台が担う役割が重くなりすぎた。

デザインは、当時、三菱車を手がけていたアルド・セッサーノ作と言われていた。デボネアVは前輪駆動だったため、日本車がずっと参考にしていた英国やドイツの後輪駆動セダンとプロポーションをあえて変えたんじゃないかと思ったものだ。

ラテン系のデザイナーは、フロントのオーバーハングが短く、リアが長い、いわゆる伝統的なプロポーションを“馬車時代みたいで遅れている”とする傾向があった。しかしデボネアVはあえてそのプロポーションに挑戦。今思えば実験的であり、先進的でもあったともいえる。

技術的な内容は、当時の三菱車らしく、なかなかレベルの高いものだった。エンジンは、2.0リッターと3.0リッター(ともにV6)で、当初はSOHCだったが、のちに3.0リッターV6DOHCが用意された。さらに2.0リッターエンジンにはスーパーチャージャーも装着。パワーはどんどん上がっていった。

不幸だったのは、メーカーがこのクルマを妙にいじってしまった点だ。当時すでに“速くて高いベンツを作る会社”として知られていたドイツのAMGに依頼して、メルセデス・ベンツ「190E2.3-16」的なブートマウンテッドスポイラーやフロントからサイドをまわってリアにいたるボディ下部のエアロキット、専用ロードホイール装着の「(ロイヤル)AMG」仕様を作ったのだ。

ただしエンジンなどはベースとおなじ。つまり、見た目だけカッコよくしたのだ。今でいうところのメルセデス・ベンツの「AMGライン」パッケージと近い。ただし、デボネアVの開発当初から共同でデザインしたわけではないので、取ってつけたような感は否めない。だから市場でも受けいれられなかったし、後継モデルでAMGモデルは設定されなかった。

でもいまの目からすると、エクスペリメンタルな大型セダンになかなか出会えないので、これはこれでアリ。

(4)初代三菱「プラウディア」最近さすがに路上で見かけなくなった三菱の初代「プラウディア」。2000年から2001年までしか生産されなかったんだから、むしろ見かければ、自動車好きとしては幸運、といってもいいかも。

トヨタ「クラウン・マジェスタ」などが競合。3代目デボネアの後継モデルとも言うべき存在だった・4.5リッターV8と、3.5リッターV6DOHCを搭載していた。これほどの大排気量エンジンにもかかわらず、駆動方式は前輪駆動を採用。現代自動車(ヒョンデ)との共同開発だった。

まったく売れなかったようで、2代目は日産自動車とのOEMによりフーガに「プラウディア」の名をつけて販売された。ヒョンデ版は現地で販売好調だったそうなので、売れなかった理由がどこにあるのか、判然としない。

ただし乗った印象は、思い出せないし、判然としない。つまり、個性がはっきりしないクルマだったのだ。かつてのアメ車のようなクルマかと思いきや、乗り心地もハンドリングもドイツ車寄りだったものの、かといってBMWのようにスポーティだったわけでもなく、メルセデスのような重厚感もなかった。つまり、特徴がなかったのだ。

しかも日本における大型高級車市場はトヨタと日産が占めていて、三菱が入り込む余地は残っていなかったのだ。それでもプラウディアがつくられたのは、巨大な三菱グループ関係者のためだったのかもしれない。

プラウディアというクルマは、三菱グループにとっては十分意味のあるモデルだったのだ。

(5)ユーノス「800」バブル経済期にイケイケだったマツダ最後の輝きともいえるのが、ユーノス「800」。1993年に東京・中央区のホテルでの披露されたときに驚かされたのは、そのメカニズムだ。

マツダが考える高級とは、あくまでメカニズムだったのだろう。今、カーボンニュートラル化への道筋として、あえて3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジンを開発するなど、独自のコンセプトを展開するマツダらしいともいえる。

エンジンに採用されていた技術は「ミラーサイクル」。バルブタイミングにより圧縮比を制御し、ノッキングなどといったエンジンの不正燃焼をふせぐ技術だ。熱効率の低下は抑えられるため、出力は抑制されないし燃費も向上する。

ユーノス800にはさらに「リショルム型コンプレッサー」なるスーパーチャージャーをそなえていた。一般的なスーパーチャージャーに対して効率がよいため、高出力が可能となるのがメリット。

さらに、ヨーレート感応型4輪操舵システムも搭載。技術者の夢のようなモデルである。ただしスタイリングがあまりにも地味だったことにくわえ、技術的内容のすばらしさが難解過ぎて消費者に伝わらなかった。今だったらウェブの記事で、文字数関係なく詳細を伝えられたかもしれないが、雑誌などの紙では限界があった。それほど高度で複雑な技術だったのだ。

1997年にはユーノス・ブランドが廃止され、これと前後してボディ素材の一部がアルミニウムからスチールになるなどコストダウン。マツダの多チャネル化の計画がしぼむとともに、会心の作であったはずの800もマツダ「ミレーニア」に名前が変更され、2003年まで生産が継続された。世界的に見てもブランド名と車名が同時に変更されるモデルは稀だ。バブル崩壊で経営危機に陥った当時のマツダの混乱がよくわかる。

内容は良かったものの、とにかくデザインが地味。「スタイリングは大事だよね」と、いまのデザイン性に優れるマツダならよくわかっているはず。もったいないモデルだった。

文・小川フミオ

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みんなのコメント

9件
  • で、小川フミオって誰?何?
    小川フミオがって言われても何の説得力もない。
    しかもGQだし。イナガキがなんたらエディターとかぬかしてる雑誌だし。
  • レパードJフェリーとユーノス800(ミレーニア)はあの価格帯にしてはそこそこ見かけるのでマニアックと言うほどじゃないよ。もちろんクラウンやセドグロほどじゃなかったけれどさ。
    三菱の高級セダンは台数が少ないね、三菱の重役のためだけにあったと言っても過言じゃない。
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