はじめに
モダンな高級ホテルに宿泊する大多数のひとびとにとって、豪華で、憧れのライフスタイルをもたらすようなモーターホームでも受け入れ難いかもしれない。
ところが、1000万円以上のコストをかけた高級キャンピングカーのショーには、多くのファンが集まる。また、フォルクスワーゲンの商用車部門には、今回取り上げるグランドカリフォルニアのようなクルマを企画するプランナーもいる。
もちろん、この手のクルマを製造する主要な自動車メーカーはフォルクスワーゲンだけではない。スタンダードなカリフォルニアのライバル車は、メルセデス・ベンツがVクラスをベースに製作するマルコ・ポーロなどがある。もっとも、それもここ数年の話だが。
とはいえ、そのメルセデスでもこれほど大柄なモデルはラインナップしていない。グランドカリフォルニアの競合車は、キャンピングカー専業のサードパーティが手がけるフルサイズのモーターホームだ。
フォルクスワーゲンは、商用車を生産するポーランドのポズナン工場に特別な製造ラインを設置。トランスポーターやパネルバンのクラフター、キャンピングカーのカリフォルニアと並行して、自社でグランドカリフォルニアを製作している。大手メーカーが自ら手がける本格モーターホーム、そのパフォーマンスや使い勝手、クオリティなどの実力やいかに。
意匠と技術 ★★★★★★★☆☆☆
現行トランスポーターT6ではなく、大柄なクラフターの3代目をベースにしたカリフォルニアの拡大版は、2017年にコンセプトカーのカリフォルニアXXLとして発表された。
そのショーモデルは、2019年に登場したグランドカリフォルニアに極めて近い作りだった。大きく異なるのは、XXLで大きく張り出していたリアエンドが、フラットに仕上げられていることくらいだ。
キャンピングカーの世界では、これはバン・コンバージョン、すなわち改装されたバンと呼ばれる類のものだ。そして残念なことに、オプションの2トーンペイントはそれほど魅力的ではない。
商用車のシャシーにサードパーティのボディを架装したものと異なり、事実上は多少のモディファイと室内の装備変更が施されたクラフターなのだと言える。
多くのモーターホームとは違って、ボディの高さいっぱいの観音開きバックドアとスライド式サイドドアが備わる。室内には、大人が横たわれるダブルベッドと、後部の十分な積載スペースが見出せる。
回転式フロントシートのすぐ後ろにあるスペースは、小さなリビング兼ダイニングだ。さらにキッチンと、カリフォルニアでは初となるバスルームも設置された。
バリエーションはボディサイズ違いで2タイプ。今回の600は全長およそ6mのハイルーフ仕様で、オプションで運転席の上に子供用ダブルベッドを追加することもできる。
ロングホイールベースの680は、ボディ後方に積むダブルベッドもロングになる。しかしロールーフ仕様で、頭上にベッドは載せられない。
いずれも前輪駆動のクラフターをベースにしているが、680には4モーションことパートタイム4WD仕様も設定される。エンジンはフロント横置きで、英国仕様には176psの2.0Lディーゼルと8速ATが搭載される。
ボディ・オン・フレーム構造で、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアはビームアクスルにリーフスプリングと負荷感応式ダンパーを組み合わせる。いずれも、このクラスの商用車としては典型的な内容だ。
ベースとなるクラフターには後輪駆動仕様も用意されるが、スペース効率に劣るそれはグランドカリフォルニアに採用されなかった。トレーラーなどの牽引をする機会の多いユーザーには、かなりガッカリさせられる話ではないだろうか。
内装 ★★★★★★★☆☆☆
外開きの大きなスライドドアを備えるため、グランドカリフォルニアの乗降性は優れている。しかも、ドアを開くと自動展開する電動ステップが、さらに乗り降りしやすくしてくれる。
車内へ足を踏み入れてみると、驚くほど広いというわけではない。それにはしかるべき理由があるわけだが、そこに納得できるかは、公衆トイレで事足りるかどうかによるところが大きいだろう。
乗り込んだ目の前にあるのは、ふたり掛けのベンチシートと小さなテーブル。回転式のフロントシートも使えば、4人で過ごせるダイニングスペースとなる。
しかし、そこから後方へ目を向けると、簡易キッチンが空間を圧迫している。2口のコンロとシンク、調理台と冷蔵庫を収めたコンパートメントだ。
さらに、その向かい側でスペースを占有しているのがシャワーとトイレを備えたウェットルームである。これまでのカリフォルニアにはなかったそれは、そうした設備を使うためキャンプ場に泊まる必要をなくし、より遠くの目的地を自由に選ぶことを可能にする。
とはいえそのサイズは、バスルームというよりはトイレに毛が生えた程度。もっとも、車内の広さを考えたら、これ以上大きくしたいとは思わないのではないだろうか。
それでも、巧みなレイアウトにより使いやすい。シャワーなどの給水用タンクは110L、排水用のタンクは90Lの容量がある。
車内後部のベッドは、横置き方向に配置される。快適で、大人ふたりがゆったり寝られるサイズだ。使わない時にもっとたやすくたためれば、スペースをより効率的に使えるかもしれない。
いっぽう、ルーフ上にあるオプションのベッドは、楽に引き出せて、すっきり仕舞うこともできる。ただし、小柄な大人ひとりか、子供ふたりがせいぜいの広さしかない。
スライドドアからもアクセスできる前席は、広々としている。快適性は高く、収納スペースにも満足。白い壁に豪華なアンビエント ライトの帯が走る背後の生活区画に比べれば質感は見劣りするが、気落ちさせられるほどではない。
計器類や操作系、トリップコンピューターやインフォテイメントシステム、いずれをとってもわかりやすい。しかも機能的で、なにより使いやすい。
小さな子供がいる家族なら、チャイルドシートが使えるか気になるだろう。ベンチシートに設置することはできるのだが、比較的せまいので、大ぶりなものをふたつ並べて取り付けるとギュウギュウ詰めになってしまう。
走り ★★★★★☆☆☆☆☆
キャンピングカーの専門メディアで、フルサイズのモーターホームのパフォーマンスに触れているのは滅多に見かけない。メーカーがそうした数値を公表することもあまりない。
オートカー的にも、この手のクルマをロードテストに持ち込むのははじめてなので、基準になるものが見当たらない。そこで、下位モデルであるカリフォルニアのベースで、2015年にテストしたカラベルのデータと比較してみる。
そこから言えるのは、より小型のミニバンなどから上級移行すると、キャビンの広さや装備はグレードアップするが、引き換えに走りはある程度の妥協を強いられるということだ。
グランドカリフォルニアは、感覚も走りも大型商用車のそれに限りなく近い。そして、下位のカリフォルニアとは違って、乗用車的な部分はまったくない。
明らかにローギアードでありながら、イマドキの乗用車の遅い部類と比べても、さらに加速が遅い。また、静粛性に優れたエンジンとATの組み合わせが、走行中もそこそこの洗練度を感じさせるのに、運転が楽にできるクルマではない。
すべては、そのサイズによるものだ。その結果、カリフォルニアやメルセデスのマルコ・ポーロと違って、ファミリーユースのセカンドカーとして使うことがまず不可能となっている。
0-97km/h加速タイムは16秒、変速ありでの48-113km/hはそれ以上かかる。それでも、それに馴染んでしまえば、そこそこ運転しやすく、加速のレスポンスも悪くない。
なかなかにギアボックスはなめらかで、市街地での速度域であってもシフトチェンジをうまくこなす。カントリーロードでは、英国の交通法規に触れない80km/h巡航を維持するのも難しいことではない。
だが、そこから高速道路のスピード域まで引っ張るのは骨が折れる仕事だ。空気抵抗は燃費を悪化させ、Aピラーと大きなドアミラーの辺りからは甲高い風切り音が聞こえてくる。一旦スピードが乗ってしまえば、それをキープするのに十分なトルクはあるのだが。
エマージェンシーブレーキはまずまずだが、現在の大型乗用車の基準にはだいぶ届かない。いい知らせは、ブレーキペダルを思い切り踏み込んでも安定していて、進路を乱しはしないこと。
激しくフロントがだいぶすることもない。制動力の配分機能や、電子制御によるブーストは、期待通りに働いてくれる。
使い勝手 ★★★★★★★★☆☆
インフォテインメント
グランドカリフォルニアのインフォテインメントシステムは、ロードテストで取り上げる物件としては珍しく、追加コストでのアップグレードが用意されていない。
フォルクスワーゲンではおなじみのディスカバーメディア・ナビゲーションシステムは、8.0インチのタッチ操作式カラーディスプレイを採用。フロント4スピーカーを装備し、Bluetoothや音声操作、スマートフォンとの接続機能であるApp-Connectなどを備えている。
見栄えはよく、作動ぶりも上々。7万ポンド(約980万円)級のクルマを、プレミアムクラスに近いポジションに置くにもふさわしいアイテムだと思える。
車内のタッチパネルや音源はこれだけではない。ずっと後方に、同じサイズのタブレットが壁面に埋め込まれ、空調の調整やルーフ上の衛星アンテナ展開などの操作に用いる。
また、オプションでBluetoothスピーカーをダブルベッド周りに設置できる。これにより、車内の前後で異なる音楽を聴けるようになる。
燈火類
標準装備はハロゲンで、テスト車に装備されていたハイビームアシスト付きのアダプティブLEDはオプション。明るさは十分だが、反応はやや鈍い。
ステアリングとペダル
ペダル配置は良好で、楽で快適な操作ができる。ペダルが立ちすぎていないので、クルージング中に足がつるようなこともない。
操舵/安定性 ★★★★★★☆☆☆☆
モーターホームのオーナーは、大多数が運動性については妥協することを受け入れているだろう。安全性や安定性にも、それほど期待を寄せてはいないかもしれない。
それでも、自動車メーカーの内製モデルである。架装メーカーのそれより高いスタンダードにあることを望みたいところだ。
ハンドリングはどうか。おそらく、十分なレベルにないのなら、それを把握するには神経を集中しなければならないだろう。だが、このキャンピングカーは、一般的な公道や街なかの通り、駐車場などで十分に問題なく扱えるので、その走りの独自性を検分するに足る精神的な余裕を持って運転できる。
そうでなければ、クルマのクセや弱点への対処に終始することになるところだ。その点、フォルクスワーゲンはいい仕事をしたと言えるだろう。
たしかに、グランドカリフォルニアはビッグなクルマで、その大きさをごまかしきれてはいない。コーナリングは実にゆっくりで、重たげに感じられることもある。しかし、小さく角度のついたステアリングホイールは、それに抗うのを助けてくれる。
とはいえたいていの場合、思ったラインを通すことは簡単で、ボディの大きさを意識していれば、コーナーでもレーンでも意図した位置をキープできる。
ステアリングは、そのプロセスを明快にし、程よい手応えと適度な正確さ、切りはじめのレスポンスのよさをもたらす。いっぽうでシャシーは洗練され、よほど路面が悪くない限り、後輪が前輪の軌跡を忠実になぞる。
ボディコントロールはやや限定的だが、横グリップに比べれば、という話。そのため、適切なスピードでのコーナリングであれば直感的で、グリップのキャパシティをシンプルにわかりやすく、そして効果的にドライバーへ教えてくれる。
快適性/静粛性 ★★★★★★★☆☆☆
バン由来のシャシーと聞いて予想するより、ツーリング時の快適性と洗練性はずっと上だ。
実のところ、バンというのは驚くほど運転しやすいクルマである。高いキャビンや立ち気味でサポートに優れたシート、良好な視認性を備えている。
このクルマはさらに、ロードノイズやエンジンノイズへの対処も施され、乗り心地はソフトな、ダンパーの効いたものだ。そのため、欧州での長距離移動にも積極的になれる。ただし、ペースは抑え気味で、だが。
運転席は太ももと背中をしっかりサポートし、長距離走行でも快適。ディーゼルエンジンはやや発進が鈍いが、回転の上がるたいていの場合は落ち着いていて、十分に素直だ。
一般道レベルの速度域なら、風切り音も低い。ただし、100km/h近くなると悩まされることになる。またその速度域ではそれだけでなく、そこそこクイックな操作が求められることになる。
購入と維持 ★★★★★★☆☆☆☆
フォルクスワーゲン・コマーシャルヴィークルUKは、高額モーターホームを見据えた容赦ない価格を設定した。そのため、エンジンは低出力版を用意しなかった。
ラインナップは6万8899ポンド(約965万円)からで、7万5000ポンド(約1050万円)以下の仕様が販売されることはほとんどないだろう。680 4モーションのフル装備仕様は、9万ポンド(約1260万円)を超える。
同等サイズのサードパーティ製モーターホームで、6万ポンド(約840万円)以下で買えるものはほぼ皆無。となれば、独自の魅力があれば息の長いセールスが望めそうだ。
その訴求ポイントに燃費が含まれるかはいささか疑問だが、このサイズのクルマとしては悪くない。いつも通りのテストコースで計測した97km/h巡航でのツーリング燃費は10.1km/Lと、空気抵抗の影響が大きく作用していると思われる数値だ。しかし、よりペースを落としたクルージングなら、11.0km/L近い数字をマークする。
スペック
レイアウト
ベースとなったのは、バンのクラフター。以前はメルセデス・ベンツ・スプリンターのOEMだったが、グランドカリフォルニアのベースはフォルクスワーゲン製の現行モデルだ。
クラフターにはエンジン縦置き後輪駆動仕様もあるが、グランドカリフォルニアは横置き前輪駆動シャシーを用いる。前後重量配分は、実測値でほぼ50:50だった。
エンジン
駆動方式:フロント横置き前輪駆動
形式:直列4気筒1968cc、ターボ、ディーゼル
ブロック/ヘッド:鋳鉄/アルミニウム
ボア×ストローク:φ81.0×95.5mm
圧縮比:16.2:1
バルブ配置:4バルブDOHC
最高出力:176ps/3600rpm
最大トルク:41.8kg-m/1500-2000rpm
許容回転数:4000rpm
馬力荷重比:58ps/t
トルク荷重比:13.5kg-m/t
エンジン比出力:89ps/L
ボディ/シャシー
全長:5980mm
ホイールベース:3640mm
オーバーハング(前):1000mm
オーバーハング(後):1340mm
全幅(ミラー含む):2430mm
全幅(両ドア開き):4160mm
全高:2970mm
全高:(テールゲート開き):-mm
足元長さ(前):最大1080mm
足元長さ(後):最大950mm
座面~天井(前):最大1150mm
座面~天井(後):最大-mm
積載容量:-L
構造:スティール、ボディ・オン・フレーム
車両重量:3079kg(公称値)/3095kg(実測値)
抗力係数:-
ホイール前/後:6.5Jx17
タイヤ前/後:235/65R17C
コンチネンタル・コンチバンコンタクト200
スペアタイヤ:パンク修理キット
変速機
形式:8速AT
ギア比/1000rpm時車速〈km/h〉
1速:5.25/6.8
2速:3.03/11.9
3速:1.95/18.3
4速:1.46/24.6
5速:1.22/29.5
6速:1.00/35.9
7速:0.81/44.3
8速:0.67/53.6
最終減速比:3.87:1
燃料消費率
AUTOCAR実測値:消費率
総平均:9.2km/L
ツーリング:10.1km/L
動力性能計測時:6.6km/L
メーカー公表値:消費率
市街地:11.5km/L
郊外:12.4km/L
混合:12.0km/L
燃料タンク容量:75L
現実的な航続距離:694km
CO2排出量:218g/km
サスペンション
前:マクファーソンストラット/コイルスプリング、スタビライザー
後:ビームアクスル/リーフスプリング、荷重感応式ダンパー、スタビライザー
ステアリング
形式:電動、ラック&ピニオン
ロック・トゥ・ロック:3.4回転
最小回転直径:13.6m
ブレーキ
前:303mm通気冷却式ディスク
後:300mm通気冷却式ディスク
静粛性
アイドリング:47dB
全開時:74dB(4速)
48km/h走行時:61dB
80km/h走行時:67dB
113km/h走行時:70dB
安全装備
ABS/ESC/EBA/EBD/フロントアシストwithシティエマージェンシーブレーキ
Euro N CAP:テスト未実施
乗員保護性能:成人-%/子供-%
歩行者保護性能:-%
安全補助装置性能:-%
発進加速
テスト条件:湿潤路面/気温9℃
0-30マイル/時(48km/h):5.2秒
0-40(64):8.0秒
0-50(80):11.4秒
0-60(97):15.8秒
0-70(113):21.9秒
0-80(129):31.4秒
0-90(145):49.3秒
0-402m発進加速:20.9秒(到達速度:109.9km/h)
0-1000m発進加速:38.2秒(到達速度:135.7km/h)
ライバルの発進加速ライバルの発進加速
フォルクスワーゲン・カラベル2.0 BiTDI (2015年)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃
0-30マイル/時(48km/h):4.5秒
0-40(64):6.5秒
0-50(80):9.0秒
0-60(97):11.6秒
0-70(113):16.2秒
0-80(129):20.3秒
0-90(145):26.6秒
0-402m発進加速:19.2秒(到達速度:125.0km/h)
0-1000m発進加速:34.2秒(到達速度:157.2km/h)
中間加速
20-40mph(32-64km/h):5.4秒(3速)/6.2秒(4速)
30-50(48-80):6.5秒(4速)/7.6秒(5速)/8.7秒(6速)/12.7秒(7速)
40-60(64-97):8.4秒(5速)/9.6秒(6速)/12.4秒(7速)/16.4秒(8速)
50-70(80-113):11.7秒(5速)/11.2秒(6速)/14.5秒(7速)/19.0秒(8速)
60-80(97-129):15.4秒(6速)/17.9秒(7速)/26.0秒(8速)
各ギアの最高速
1速:27.4km/h(4000rpm)
2速:46.7km/h(4000rpm)
3速:74.0km/h(4000rpm)
4速:98.2km/h(4000rpm)
5速:117.5km/h(4000rpm)
6速:143.2km/h(4000rpm)
7速:164.2km/h(3704rpm)
8速(公称値):164.2km/h(3064rpm)
8速・70/80マイル/時(113km/h/129km/h):2102rpm/2403rpm
制動距離
テスト条件:湿潤路面/気温9℃
30-0マイル/時(48km/h):13.4m
50-0マイル/時(64km/h):34.0m
70-0マイル/時(80km/h):66.8m
60-0マイル/時(97km/h)制動時間:4.0秒
ライバルの制動距離フォルクスワーゲン・カラベル2.0 BiTDI (2015年)
テスト条件:乾燥路面/気温13℃
30-0マイル/時(48km/h):9.9m
50-0マイル/時(64km/h):26.8m
70-0マイル/時(80km/h):53.2m
結論 ★★★★★★★☆☆☆
グランドカリフォルニアには、ありがたいことに、評価基準となるモーターホームでの経験があまりなくてもよくわかる長所が少なからずある。ライバルとの比較が必要な点については、助言をもらった専門誌のプラクティカル・モーターホームに感謝したい。
この手のクルマに詳しくなくても、すぐにわかるのが優れた質感と高級なマテリアルを備えていること。また、すばらしく快適で、洗練されていて、ドライバビリティも上々だ。
しかしながら、残念な点もあった。とくに気になるのがキャビンの非効率的なレイアウトで、その代表格がトーテムポールのように突っ立つウェットルームだ。そして、それがこのクルマの室内を、期待したほど広くないと感じさせる原因になっている。
もしも弟分のカリフォルニアのパッケージングが、奇跡的なほど融通の効くものだったなら、このグランド版は大きいのに、クレバーさでは半分も及ばない。また、走らせてみても商用車ベースという出自を隠し切れていない。
これに安からぬ出費をして、よくできたモーターホームを買い求めるなら、走りよりも空間効率を重視するだろう。そしておそらく、フォルクスワーゲンの野心的な価格設定には見合わない。どうなるかは、時のみぞ知る、といったところだが。
担当テスターのアドバイス
マット・ソーンダース自走式のモーターホームと、牽引されるトレーラーハウス、どちらが好みかと言われれば後者だ。ガソリンタンクの上で寝るというのは、どうにも落ち着かない。いらぬ心配だとは思うのだが。
リチャード・レーンカリフォルニアのオーナーたちに話を聞いたら、口を揃えていうだろう。フォームのマットレスで十分だと。ほんの数cmの厚さの違いに目を向けようとはしないが、グランド版の本格的なベッドも是非試してほしい。
オプション追加のアドバイス
ショートボディの600一択でいい。どうしても、7mもあってツインベッドを備えるキャンピングカーが必要なら、話は違ってくるが。2490ポンド(約34.9万円)のルーフ上ベッドと1740ポンド(約24.4万円)のソーラーパネル、954ポンド(約13.4万円)のオーニングテント、282ポンド(約3.9万円)の後方カメラ、660ポンド(約9.2万円)の電気式キャビンヒーターは装備したい。
改善してほしいポイント
・寝室エリアは、もっとアレンジしやすいほうがいい。ベッドを使わない際に、無駄になるスペースが多すぎる。
・トイレの位置は見直しを。
・ロングボディ版に、ベッドを追加する術を探ってほしい。
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みんなのコメント
5メートルクラスの使い勝手に慣れてしまうと6メートルはハードルが高すぎる。