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なぜ二輪のヤマハが4輪のオートサロンに? 初出展で見えた同社の狙いとは?【東京オートサロン2024】

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なぜ二輪のヤマハが4輪のオートサロンに? 初出展で見えた同社の狙いとは?【東京オートサロン2024】

ヤマハの汎用プラットフォームを自由にカスタム!

東京オートサロン2024において、ヤマハのブースでは水素エンジンを搭載した四輪バギー「YXZ1000R」や、市販バイク「XSR125 ABS」も展示されていたが、その他は同社が開発した小型低速EVの汎用プラットフォーム「YAMAHA MOTOR PLATFORM CONCEPT」がベースの7車両が展示されていた。クルマ業界では一般的にプラットフォームといえばシャシーを指すが、ヤマハの汎用プラットフォームの場合は着脱式可搬バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」を動力とし、ヤマハの電動モーターを搭載した“1~2人乗りのパーソナルモビリティ”程度の条件しか持たせていない。メーカー担当者の話によると、「低速」を謳ってはいるが、コンセプトモデルによっては出力や搭載するバッテリーの数もバラバラで、車体のサイズも自由にしたという。これは、各モデルに具体的な車両区分を設けてしまうと、余計な制限が生まれてしまい、自由な発想を妨げてしまう可能性があるためだという。

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こうして、ヤマハはパートナー企業とさまざまなモビリティを共同開発した結果、3輪自転車のようなモデルから生成AIを使った斬新なデザインに、トレーラーを牽引できるパワフルなモデルまで、バラエティに富んだモビリティが展示されることになった。今回は、会期前の事前情報では分からなかった7台のコンセプトモデルを実際に見てきたので、メーカー担当者から訊いた話や気付いたことを紹介していきたい。ちなみに各モデル名にはConceptの末尾に番号が振られているが、こちらは開発番号を順にナンバリングしたもの……と、思いきや、各モデルの共同開発に携わったパートナー企業の担当者名などを語呂合わせしたものだと教えてもらった。

7台の個性的なコンセプトモデル

■Concept350(プロトタイプ)リゾート地を乗り回したり、ゴルフバッグを載せてキャディいらずで一人でホールを移動できるよう開発されたのが、Concept350だ。このモデルのベースはフレームの形状からも、ヤマハが開発した低速モビリティ「NeEMO(ニーモ)」と共通しているのは明らかで、ニーモのベースもまた小型低速EV汎用プラットフォームであることが分かった。また、発表時にあった「充分な積載スペース」とは、シート後部の縦長に伸びたフレームを指すもので、キャディバッグ専用スペースであることを確認した。

■Concept682(プロトタイプ)自分好みにカスタムできるホースライド型の4輪駆動電動モビリティがConcept682。非常に面白いデザインだが、担当者によると実際に乗れるか、ということは一切考えず、“見て楽しい”ことに特化させた結果がこの姿だそうだ。今回は実際に跨ることができなかったが、高さ約30cmのバッテリー2個ほどの全高なので、かなり低いポジションに前傾姿勢で乗ることになるだろう。なお、カスタム用パーツは今回の展示内容には含まれておらず、様々な人の意見を取り入れて本体のデザイン先に調整する予定だそうだ。

■Concept294(プロトタイプ)フロントに大きな収納スペースがあり、買い出し品や幼い子ども、ペットなどを載せて街中を移動する3輪電動モビリティ。このようなタイプは欧州では既に走行しているが、日本ではサイズ的に自転車扱いとはならず、実際に走ることができない。出展情報で公開された写真では未来的で無機質なイメージを抱いていたが、北欧デザイン家具を扱う二葉家具が開発に参加した結果、実物は“木のぬくもりを感じる優しい自転車”という印象に変わった。ヤマハが得意とするフロント2輪でのリーン(傾ける)走行技術も応用されており、今回の展示車両の中で最も完成品に近いモデルのように思えた。

■Concept451(プロトタイプ)生成AIによるアイデア出しと、完成したデザインデータを、非常に簡略化されたプロセスで安全に登録・管理できる「スマートコントラクト技術」を活用した農業向けモビリティ。こちらも実はニーモがベースとなっている。生成AIを活用してデザインしたConcept451の詳細についてはこちらの記事で紹介

■Concept160(プロトタイプ)そして、筆者がイベント開催前に最も気になっていたのがこのConcept160だ。近未来的かつ都会的、そしてどこかレトロ感も漂うこのモビリティはどうやって誕生したのか、運良くデザインを担当したHigraph Tokyoの東泉(ひがしいずみ)氏に話を伺うことができた。氏の話によると、このConcept160は前述のConcept451と同様に生成AIをフル活用して作ったモデルだそうだ。このモデルのデザインは、一般的な手法である人間の情緒的なデザインから入らず、はじめから方向性を決めずにコンパクト、シンプル、オフロード、電動、一人乗り、フレキシブルなプラットフォーム、といった条件設定で、生成AIにデザインを吐き出させてベースとなる形を決定。そこから人間の手でブラッシュアップしていった結果、このような姿に辿り着いたそうだ。

Concept160の大きさは50~60年代のキャビンスクーター「メッサーシュミット」や、BMW「イセッタ」と同じようなサイズ感といえば伝わるだろうか。ドアが見当たらず、どこから搭乗するのか発表当時から気になっていたが、ボディ上部のベージュカラー部分が面ファスナー付きの幌(ほろ)となっており、ここをベリベリと剥がして中に乗り込むそうだ。ちなみに搭乗方法はデザインとサイズの兼ね合いでシンプルなドアを設置するのではなく、戦闘機のようにキャノピーを展開したり、蹴ってステップを降ろすようなリボーディングステップも検討しているとのこと。ワイルドに乗り込むか、女性でも搭乗しやすいタイプにするか、これから多くの人の意見を参考にしながら決めていくという。ちなみにConcept160は水辺やオフロードも走行するそうで、ボディ下部がバスタブ形状となっている理由が理解できた。デザインを手掛けた東泉氏が今回の生成AIを応用した経験について感想を訊くと、通常の乗り物では半年から一年程度の時間をかけてデザインを完成させていくが、今回の手法では2か月で形に持っていくことができたという。もちろんこの時間短縮を目的としているわけではないが、人の考えでは思い付かなかったデザインが、次々と生まれる体験は新鮮で、新しいブレストパートナーが見つかったような不思議な感覚だったという。Concept160はデザイン工程、サイズ感、搭乗方法、走行シーンに至る何もかもが予想外の連続だった。

■Concept310(プロトタイプ)こちらは7台ある車両の中で唯一実際に触れて座ることができたConcept310。これまでのモビリティとは異なり、明らかに「クルマ」らしい姿をしている。従来のエンジン&トランスミッションに代わる駆動ユニット「e-Axle(イーアクスル)」を搭載することで、Honda Mobile Power Pack e:を複数搭載すれば、これだけのサイズでも走行できるうえに、フィッシングボートを載せたトレーラーでも牽引できるという。実際に座ってみると、フルバケットシートに包まれる感覚と、足元から太もも上まで伸びた長いステアリングシャフトのおかげでしっかりと座り込む必要があり、これはアクティブに乗り回せるモビリティなのだと理解した。

■Concept580(プロトタイプ)最後が、バッテリー交換ステーション「Honda Power Pack Exchanger e:」とともにヤマハブースの中央に展示されていたConcept580だ。オフロードタイヤを履き、まさにダート向きに思えるこの車両は、実は運転免許を返納した人が、その次に乗るためのモビリティだという。このような姿になった理由は、“いかにもシニアカー”な見た目は避けたい、という要望が多かったことから、小型特殊免許で運転できるバギータイプの姿になったという。ちなみに小型特殊自動車は最高速度が時速15kmまでで、特定小型原付の最高速度時速20kmよりもスピードが出せない。この速度とサイズを考えると、やはりコンセプト通りに畑などをトコトコ走る用途に適していそうだ。

モビリティの新カテゴリーでヤマハが動く!?

以上が、ヤマハの小型低速EV汎用プラットフォームを発展させた、コンセプトモデルの数々となる。オートサロン初出展のヤマハブースを見た感想としては、ヤマハは今後も継続してパートナーたちと、既存のモビリティデザインの殻を破るための土台作りをしていることが分かった。ヤマハは過去のイベントでもクルマのコンセプトモデルを発表・展示しており、その度に四輪市場への参戦か? という声は挙がっていたが、未だに実現していなかった。しかし、1~2人乗りや、免許返納、特定小型原付といったキーワードや新カテゴリーの登場と、今回の汎用プラットフォームのような、ヤマハ発動機がこれまで手掛けてきたプロダクトとの相性は、クルマよりも明らかに良いように感じる。多くのコンセプトモデルが今後も開発を継続するそうなので、それらをヒントとした新しいモビリティを市場に送り込む可能性は十分にありそうだ。

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