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ホンダ ホーク11開発陣インタビュー「ホンダの殻を破ったデザイン、ロードスポーツらしさの追求」

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ホンダ ホーク11開発陣インタビュー「ホンダの殻を破ったデザイン、ロードスポーツらしさの追求」

新型ロードスポーツ「ホーク11」の狙いとは

ロケットカウルをまとったカフェレーサー的デザインが大いに話題を集めているホンダ ホーク11。SNSやウェブなどでは賛否両論の声が上がっているが、ホンダ車として、いや、日本車全般としてもかなり際立った存在感を放っていることは間違いない。
発売は2022年9月と少し先だが、ホーク11はどのようなライダーをターゲットとして開発されたのか? どのような乗り味を追求したモデルなのか? 開発チームを代表して5名のエンジニアに話をうかがった。

【画像20点】ロケットカウルはFRP製!「現代のカフェレーサー」ホンダ ホーク11を解説

開発責任者代行:吉田昌弘さん
デザインモデルPL:八重樫裕郎さん
吸排設計PL:倉澤侑史さん
サウンド/振動領域担当PL:斎藤隼人さん
操安PL:大和風馬さん

ホーク11のデザイン「クラシックとモダンを両立したカフェレーサースタイル」

──ホーク11のコンセプトには「ベテランに向けた」というものが掲げられていますが、実際のところ想定したユーザー層はどういった割合で考えていますか。

吉田さん:国内市場を踏まえて、「どのようなお客様により多く買っていただけるのか?」を考えた結果、ひとつの提案として「ベテランのお客様」という方向性であるということです。もちろんその限りではなく、若い方にも女性の方にも買っていただきたいですし、実際に現在の受注状況を見ますと40~50代は半分くらいですから、若い方にも好評なのだと感じています。

──ミラーのマウント位置なども含めて、ホーク11の造形はホンダとしては思い切ったように感じます。総じてカフェレーサー的なスタイリングは、近年のホンダにはなかった新しい個性と言えます。

吉田さん:ロケットカウルには好き嫌いがあるかもしれませんが、従来のCB1300SFのような、いわゆるジャパニーズ・スタンダードという形が人気の中心であるとするなら、今までのホンダ車とは少し違う形で、新しい満足感をお客様に提案したいと考えたのです。

八重樫さん:デザインとしては、カフェレーサーのテイストある新しいフォルムを作るということで、クラシックとモダンのバランスをどう取るのかが課題でした。従来のホンダ車では、もっと張りを付けたり、あまりシャープな感じにはしない傾向もあるので、デザイン担当と話し合った結果、これまであまりやらなかったサーフェイス(外殻)の表現にトライしたのです。そこで、基本骨格に水平基調のラインを通してカフェレーサーらしさを演出。シートの下端から燃料タンク、カウリングのストライプへと、一直線に結んだキャラクターラインがそれです。

──大阪モーターサイクルショー(2022年3月)で実車が初公開されて以降、そのスタイリングについては賛否両論の反応が見受けられます。例えば、マシンの前半はツルッと丸みを帯びているのに、燃料タンクから後ろのデザインは別物のようで、そのバランスが取れていないといった意見も聞きますが。

八重樫さん:カフェレーサーの体系的フォルムを作るという目的で、リヤの短さや軽快感を表現しようとしたのがあのリヤ周りなのです。クラシックとモダンのバランスを考え、あまり古くなり過ぎないように試行錯誤した結果、あのフォルムになりました。狙いはあくまでも、現代の形であって、昔ながらのカフェレーサーのフォルムではありません。
この点で、ロケットカウルにも「昔のスタイルのままで良いのか?」という議論もありまして、当初はモダンなラインを作ろうと色々造形を試しました。しかし、あまりやり過ぎるとロケットカウルという形でなくなってしまうし、今回採用した一体成型のFRPだからこそできる、滑らかな造形をとても意識しました。

FRP製ロケットカウルの採用

──そのロケットカウルでは、ホーク11の独自性を表現するため、細かく工夫を凝らしているように見受けられます。

八重樫さん:例えばカウルサイドのストライプの処理では、急にフラットな面があるかと思えば、上部にはネガ面(逃げる方向)があり、カウル自体もダクトの上に覆いかぶさるような形状であったりと、新しいニュアンスを加えています。FRPは成型時の分割がない一体成形なので、だからこそできるカタチというのをとても意識しています。

──ロケットカウルの裏側は車体色に合わせてペイントされていますが、ザラザラとしたFRPの素地が見えるのもポイントですね。

吉田さん:今までのホンダ車でしたら、そこは蓋をして見せていなかったかもしれません。でも、今回は隠すよりも、価値としてあえてFRPであることを見せようと意識しました。個人的にも見せたいと思いましたし、FRPに価値を感じてくださるベテランもいらっしゃると思ったのです。

ホーク11のエンジン「FIのセッティングやサウンドは専用に造り込む」

──そもそも現在の国産車にはリッタークラスの2気筒ロードスポーツがないので、ホーク11ではそこが最大の特徴になるでしょう。

吉田さん:もともと、CRF1100Lアフリカツインのエンジンでロードモデルを楽しめないだろうか、というのが開発の原点なのです。ベースとなるエンジンは下からのトルクも十分あり、レッドゾーンまで綺麗に回る良くできた物ですので、基本を変えないで仕上げました。ホーク11はエアクリーナーボックスが新作ですが、エンジン特性はほとんど変わっていません。

──エアクリーナーボックスと併せて、実際乗ってみるとFIのセッティングも若干変わっているように思いました。ですが、基本的なスペックに変わりはない、と。

倉澤さん:エアクリーナーボックスに関しては、車体レイアウトの都合で容量がNT1100の7.7Lから7Lに減少していますが、吸気抵抗を抑えることで十分な性能が確保できるよう、ダクトの形状などはかなり検討しております。それに合わせるようにFIのリセッティングを行い、スロットル開け始めのレスポンスをよりロードスポーツらしく手直しし、結果的に(実質的なベース車の)NT1100よりも軽いレスポンスや、リニアリティが実現できたと思います。

吉田さん:エアクリーナーボックス容量が減っても、最高出力や最大トルクの絶対値が変わることはありませんでした。むしろ吸気抵抗の低減など細かな積み重ねによって、エンジンは軽く扱いやすいフィーリングになっています。

──そういった意味では、音や振動も心なしかCRF1100LアフリカツインやNT1100より柔らかい感じがしました。

斎藤さん:ロケットカウル採用でハンドルより前の空間が空いていて、ライダーに吸気音がダイレクトに聞こえるようになっています。そこで、クルーズの時は主に排気音が聞こえ、加速の時は吸気音がクローズアップされるよう意識していました。ここがサウンド関係でこだわった部分です。
振動面では基本的にNT1100同様ですが、ハンドルのバーウェイトや、シートのラバー、ステップブラケットなどを適宜変えることによって、なるべく低回転では振動を抑え、開けたら振動がスムーズに立ち上がるよう意識しました。そのあたりで、NT1100よりもマイルドに感じるかもしれません。

ホーク11の車体「フレームの角度とサスペンションでロードスポーツらしさを出す」

──エンジンがCRF1100LアフリカツインやNT1100よりやや軽快なフィーリングなのは、エンジン関係の細かいセッティング変更や手直しが効いているのですね。そして、最も肝心な乗り味に関してですが、そもそもヘッドパイプ位置が高いオフロード用フレームを巧みにロードスポーツへとアジャストしている点は大きなポイントです。

大和さん:ロードスポーツとしては最大限にバランスを取ることを意識しました。CRF1100Lアフリカツインより約2.5度ほど前傾させることによって、ロードスポーツの諸元に近いものになっています。加えて、重心位置やライダーの前傾度合の部分で、動的な後輪荷重をかけやすい性格に仕上げました。

──気になるのは、フレームの対地角も2.5度の前傾している点です。デメリットはなかったのでしょうか?

大和さん:一般的に、対地角はスタンディングで乗った時に、ライダーがマシンとの一体感を感じるような部分に最も影響があって、もちろん各々モデルでライダーとの最適なバランスがあります。ホーク11の場合は、フレームと一緒に「ライダーも前傾する」という点でバランスが取れていますので、特に問題はないと考えています。

──NT1100ベースのフロントサスペンションですが、そのダンパーセッティングは独自のものとし、ストロークも増加しています。さらにホーク11は車重もNT1100より軽くなっているので(NT1100:248kg、ホーク11:214kg)、凹凸に対する収斂性も向上し、コーナーリング中でもフロントブレーキが使いやすく感じました。実は前後のサスペンションの味付けの変更が、適度に軽快な運動性の実現に効いているように思えます。

大和さん:フロントフォークに関しても、セッティングを変更してロードスポーツにマッチした特性にしています。特に伸び側減衰力を充実させたことで無駄なピッチングを抑制できました。リヤクッションでは、特に最初の倒し込みにおけるリヤ周りの落ち着きを意識してセッティングしています。急に硬くするとロールの動き(倒れ込み)が早くなるので、そこは少しだけ粘りを持たせ、フロントを優先させた旋回になるよう味付けしました。
今回エンジンとフレームをCRF1100Lアフリカツインと最大限に共通化するというところから開発がスタートしており、ヘッドパイプ位置、サスペンションのセッティングでアジャストさせています。エンジンハンガーなどの調整で操縦性のコントロールをする領域までは踏み込んではいませんが、ロードスポーツとしての個性や軽快さはかなり実現できたと思っています。

レポート●関谷守正 写真●柴田直行/ホンダ 編集●上野茂岐

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