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もはや反則レベルの「溝なしタイヤ」! 今話題の「フージャータイヤ」がサーキット最強の理由とは

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もはや反則レベルの「溝なしタイヤ」! 今話題の「フージャータイヤ」がサーキット最強の理由とは

世界でも数少ないアメリカ生まれのレーシングタイヤ専門メーカー

 ハガキ1枚分の面積でクルマを支えるタイヤ。世界には数多くのメーカーがあるのはご存じのことかと思う。皆さんになじみのあるメーカーといえば、日本ならブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、トーヨー。欧州ではミシュランやピレリ、コンチネンタル、アメリカだとグッドイヤーといったところだろうか。最近はアジア系のタイヤも数多く日本に導入され、知らないメーカーも数多い。そんな枚挙にいとまがないなかで、数少ないレーシングタイヤ専門メーカーが「フージャー」だ。

意外と知らない「ハイグリップタイヤ」って一体何? あえて選ぶメリットとは

ドラッグレース用タイヤとして日本上陸し、マーケットでの定番に!

 フージャーの正式名はHOOSIER RACING TIREで、1957年にインディアナ州に誕生したアメリカ生まれ、アメリカ育ちのメーカー。2016年にはドイツのコンチネンタルタイヤの傘下となったが、現在もレースタイヤ専門メーカーとしては世界最大であり、「チャンピオンのためのタイヤを作る」をモットーにオーバルレースやドラッグレースにタイヤを今なお供給。アメリカのレースファンなら知らない人はいないほどメジャーブランドだ。また、多くの他メーカーが生産拠点を海外に持つなか、今なおすべてのタイヤをアメリカ国内で生産する生粋のブランドであることも高く評価されている。

 日本でもっとも愛好家が多いのは、0-1/4マイル(日本だとゼロヨン)を駆け抜ける競技であるドラッグレース。本場アメリカのNHRA(北米のドラッグレ―ス競技団体)レースでフージャータイヤが使われていたこと、そして、1989年以降のドラッグレースブームの波に乗り、グッドイヤーやミッキートンプソンらのライバルメーカーとともにアメリカから数多くが持ち込まれた。

 とくにトップクラスで使用されるドラッグスリックと呼ばれるスリックタイヤがメインで、コンパウンドが圧倒的に柔らかく、空気圧も極端に低く、タイヤがたわむことでグリップを稼ぐ特殊な構造。クルマのリヤに通常ではありえないファットなタイヤを履き、タイヤを空転させて白煙が上がるシーン(発熱を与えてタイヤの駆動力を高めるためのもの)を動画や雑誌で見たことがある人もいると思うが、フージャーはそうした特殊なフィールドで使うタイヤとしてドラッグレースの世界今なお高い支持を集めている。

日本には設定のない315や335の幅広サイズでサーキットへ殴り込み

 長年、ドラッグレース用タイヤとして日本で一定の認知を得てきたフ―ジャーだが、最近はトラックフィールドでも装着率が増えている。もともと、本国アメリカではドラッグレ―ス以外にもナスカー(オーバルを中心としたストックカーレース)を筆頭に、サーキット競技にも多数使われているなど実績は十分だった。だが、日本では国産各社からSタイヤと呼ばれるセミレーシングタイヤが数多くラインアップされていたこともあり、わざわざ並行輸入で海外製を導入するメリットはないと判断していたのかもしれない。

 ではなぜ今、フージャーがサーキットに持ち込まれるようになったかといえば、チューンドカーの高性能化が上げられる。とくにR35GT-Rを筆頭としたハイパフォーマンス&ヘビーウェイトクラスのマシンや、サーキットにおけるタイムアタック車両は度重なるハイパフォーマンス化で、国産メーカーの最大幅であった295mm(当時)ではその性能を活かしきれなくなっていた。

 そこで注目されたのが、315mmや335mmといった極太サイズがラインアップされるフージャーというわけだ。そして、装着マシンが結果を残したことでじわじわと浸透。さらに、近年日本総代理店ができたことで、サーキットに持ち込まれる機会が増えたのも拡大の理由のひとつだろう。

 現在、富士スピードウェイを筆頭に全国サーキットでチューニングカーのコースレコードを塗り替え続けている、レコードブレーカーの筆頭「エスコートエボ9(ランサーエボリューション)」もフージャーを選ぶなど、その実力は本物であるといえよう。

性能を引き出すために「キャンバー角3度以上」をメーカーが推奨

 トラックフィールドに用意されているのは「スポーツカーDOTラジアルA7&R7」。トレッド表面には小さな溝がいくつかあるだけで、見た目はほぼスリックタイヤという印象だが、アメリカのDOT(規格米国交通運輸局)の認定を受けているので(溝がほとんどないので雨の日の事故覚悟なら)公道走行も可能。つまり、日本でいうSタイヤ(セミスリックタイヤ)の枠に属するのだ。

 ふたつのタイヤの違いはコンパウンドで、A7がジムカーナやタイムアタック用、R7がスプリントレース用と棲み分けされている。また、仕様書には「キャンバー3度以上付けること」と指示があり、このような部分からもモータースポーツユースに特化したタイヤであることがうかがい知れる。

 さらに2019年からは走り始めから熱が入りやすい(すぐに高いグリップ力が得られる)、日本専用のスーパーコンパウンドを採用したH7も投入。タイムアタックシーンで圧倒的な装着率を誇るヨコハマのアドバンA050から、さらにシェアを奪おうと矢継ぎ早にタマを投入している。

 最近では4輪のレースだけでなく、2輪のオフロード競技であるモトクロッサーのマーケットにも参入している。アメリカのレースでは各クラスを制覇するなど、日本を含めて今なお新たなモータースポーツフィールドへチャレンジし続けるフージャー。一般的にはかなりマイナーな存在であるが、極限の領域で必要不可欠なタイヤとして今後も愛され続けられることは間違いない。世界にはこのような特殊なタイヤメーカーがあることを覚えていてほしい。

文:Auto Messe Web 『Auto Messe Web編集部』
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