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生産終了したBMW i8の魅力とは? ロードスター試乗記

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生産終了したBMW i8の魅力とは? ロードスター試乗記

2020年6月に生産終了したBMW初の電動スポーツカー「i8ロードスター」に小川フミオが試乗した。

後継モデルは予定ナシ

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BMW「i8ロードスター」のおもしろさは、1.5リッターのスポーツモデルという点だ。高価な炭素樹脂と軽合金をふんだんに使ったぜいたくな車体構造も魅力である。在庫がまだあれば、いま手に入れておいたほうがいいかもしれない希少性がある。

2018年9月に日本でもデリバリーが始まったi8ロードスターは、プラグインハイブリッド・スポーツだ。ふたり乗りのキャビンと、電動ソフトトップによるフルオープンボディが特徴。

スムーズな走りと、なににも似ていないスタイリングは、ベースになったi8クーペが2013年に発表されていらい、いまでも変わらない魅力であると思う。

ショートノーズでロングデッキのミドシップ・スポーツカーのプロポーションを採用し、フロントフェンダーが前にまで回り込んだスタイルも独自だ。また、ブラックのボディに、アウター・パネルをよろいのように貼り込んだテーマはいまも斬新だ。「ストリームフロー」と呼ばれるドライバー背後のパネルは、空気の流れを表現しているようで、新しいスポーツカー像の創出に成功していると思う。

i8ロードスターは、従来のi8クーペよりパワーをアップ。搭載されているリチウムイオンバッテリーの容量を13Ah(アンペア)拡大し、33Ahにした。

バッテリーの容量があがったため、EVモードでの走行距離はロードスターで53km。モーターの出力は9kW(12ps)向上し、システム全体の出力は275kW(374ps)に達する。

エンジンが320Nm、加えてモーターが250Nmの最大トルクを持つ。クーペより車重が60kg増しではあるものの、加速はとうぜん悪くなくて、メーカー発表の0-100km/hまで加速時間は4.6秒だ。

特徴的だなぁ、と、思ったのは、加速が暴力的ではなく、あくまでも滑らかな点。ステアリングもクイックすぎず、万人向けのコントロール性のよさに重きを置いている。

BMWのセダンを例にとれば、「M3」でなく、「Mスポーツ」的だ。私の印象では、ピュアなスポーツカーというより、”スポーツカー性”が高いクルマ、である。

クーペとちがいリアのシートはない。そのかわり、室内のシート背後には100リッターの容量を有する荷物置き場が確保されている。大きなボストンバッグは無理でも、ハンドバッグなどの収納には問題ない。ツアラーとしての要件を満たしているといえる。

ロングツアラーとして最適

複雑な形状のボディパネルを組み合わせたユニークなスタイリングに対抗できるのは、英国のハイパースポーツカー、マクラーレンぐらいではないか?

ドアもマクラーレンの「ディヒドラルドア」を思わせる、前ヒンジで上にはねあがる形式で、なんとも派手である。ただし、マクラーレンと異なり、ドア下のサイドシルが高い。乗り降りのときに苦労しそうだ。

乗り心地は意外なほど快適で、足まわりの設定は硬すぎず、路面のショックをていねいに吸収する。ソフトトップは50km/hまでなら走行中もごく短時間で開閉可能で、風の巻き込みは少ない。少ないけれど、それでもオープンでの爽快感はたっぷりある。少し後ろを振りかえると、クーペとは違いフェアリングが視界に入る。これがとても魅力的に思える。

乗員がおさまるカーボンファイバー製のパセンジャーセルを「ライフモジュール」、メカニズムを収めている軽合金のシャシーを「ドライブモジュール」とした凝ったつくりは、コストがかかるらしい。こうした事情もあって、i8は生産終了になってしまったのかもしれない。しかも、後継モデルは今のところないから、将来、超希少モデルになっている可能性も十分ある。

このなんともみごとな造形美を持つロードスターとは別れがたい。2234万円の価格はけっして安くないが、“アートピース”と考えたら、お金を出す価値は十分にありそうだ。

文・小川フミオ 写真・安井宏充

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