ジャン・トッドの後任として、2021年末にFIA会長に就任したモハメド・ベン・スレイエムは、その当初から最大の頭痛の種は、FIAが抱えている財政的な問題にあると語ってきた。これについてトッド前会長は反論。自身が退任した時にも収入が増加していたはずだと語った。
ベン・スレイエム会長は2022年、FIA会長に就任した当初の問題について、次のように語っていた。
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「前から、財政面での問題があった。私はそれを知らなかったんだ。パンデミック以前から赤字があったんだが、それを解消できて嬉しく思っている」
ベン・スレイエム会長は、その赤字額について「2000万ドル(約30億円)以上」であったことを示唆している。さらにベン・スレイエム会長は、会長職に就任した当初はヘイローの特許に関する法廷闘争にも悩まされ、それも当初は明らかにされていなかったと主張した。
トッド前会長はこれらの指摘について沈黙を守ってきたが、この度『レキップ』誌に掲載されたインタビューの中で、ベン・スレイエム会長が語っている内容について、全く感銘を受けていないことを明らかにした。
トッド曰く、FIAが2021年に計上した赤字は新型コロナウイルス危機のためであり、FIAとF1の両方を存続させるために、懸命に働かなければいけなかったと語った。そして、自身が退任する時のFIAの財政的な基盤は、十分に強固だったはずだと主張している。
「私が去った時、2億5000万ユーロ(約360億円)以上の蓄えがあったはずだ」
そうトッド前会長は語る。
「私が2009年にFIA会長に就任した時、わずか4000万ユーロ(約60億円)しかなかったが。その数年前に、FIAはF1の100年に及ぶ商業権を譲渡したばかりだった」
「私はそれは赤字だとは思わない。私が辞めた時には、フォーミュラEや世界耐久選手権(WEC)、ラリーレイドなど、新しい競技会や収入源が加わり、予算はほぼ3倍となった」
トッド代表は、ヘイローに関する訴訟問題があったことは認めつつも、それは隠蔽されていたわけではなかったという。
「私が退任した時、ヘイローに関する裁判がひとつ未完了のまま残されたというのは事実だ。そかしそれは隠蔽されていたわけではない。十分に文書化されていたし、しっかりと監視できていた。私が退任する前には世界モータースポーツ評議会などにも提出され、現会長もこのプレゼンテーションに出席していた」
「これは、アメリカ国内でのみ有効で、しかも短期間のみ有効な特許を所有する技術者によって、テキサス州で起こされた訴訟だった。私が退任した時、秘密なことはなにもなかった。そして現在進行形の事件もひとつだけだった」
「しかし私は驚かなかった。私の後継者が誰であるのかは知っていたからね。その人物像も知っていた」
ベン・スレイエム会長が、トッド体制時の首脳陣を批判してきたことについて苛立たしく思っているかと尋ねると、トッド前会長は次のように語った。
「いや、私には関係ないことだ。それは煙のようなモノだ」
そうトッド前代表は語った。
「私は、ある章が終われば次の章が始まる、そしてその前の章のことを攻撃することは許さないという原則を持っている。プジョーを辞めた時も、フェラーリを辞めた時も、そしてFIAを辞めた時も、私は決して悪口を言わなかった。特にそれが虚偽のモノであった場合、疑惑を持ち出すことに意味はない」
「現実は、私が今あなたに話した通りだ。FIAの収入に関して付け加えると、リバティ・メディアがFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)のオーナーになる前に、FIAとF1の間のおける100年協定、そしてコンコルド協定の再交渉が、私が会長だった時代に行なわれた」
「詳細については話さないが、FIAが受け取る収入は、以前に比べて明らかに増加していると言える。そしてF1の統治における地位も回復した。現在では投票のうち1/3の票を手にしているんだ」
「誰かが批判したり、反対するのを止めることはできない。しかし私が会長だった時代に行なったことは全て、上院や世界評議会によって承認された」
トッド前会長は、ベン・スレイエム会長が就任したことにより、FIAの体制は全く異なる方向に進み始めたと感じているという。そしてベン・スレイエム会長の問題への対処方法をめぐっては、F1の複数の関係者からの批判に晒されている。
「私の任期中に整備されたものは、すべてひっくり返されてしまった」
トッド前代表はそう語った。
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