日産の横浜工場で製造されたエンジン総数が2023年6月に累計4000万基を超えた。それに伴い、「エクストレイル e-POWER」等に搭載するVC-ターボの製造工程を公開。さらに、横浜工場の次世代化について方向性を示した。
1933年創業からDNAを継承
[THE視点]現役エンジニアが見抜いた「日産サクラ」JNCAPファイブスター獲得の要因
京浜工業地帯の一角にある、日産自動車横浜工場は、1933年に日産(当時:自動車製造株式会社)が創業した地である。1935年には、日本初の自動車一貫製造工場として稼働した。生産したのは、ダットサン14型だった。
その後、1965年に神奈川県内の座間工場完成に伴い、横浜工場はエンジンやサスペンション等のユニット生産工場に特化し、現在に至っている。2010年には、「リーフ」対応の電気モーター、また2019年にはe-POWER用モーターの生産も開始した。
日産横浜工場長の和田民世氏は「ここは、生産技術開発部門と協働し、圧倒的なものづくり力で量産条件をグローバルで展開する、グローバルパイロットプラントだ」と、日産にとっての横浜工場の立ち位置を表現する。
VC-ターボの生産技術詳細を初公開
日産は今回、横浜工場での生産累計4000万基突破に伴い、量産エンジンとして世界初となる圧縮比を可変できるターボチャージャー付エンジン「バリアブル・コンプレッション・レシオ・ターボ(略称VC-ターボ)の生産技術をメディア向けに初公開した。
理論上、ガソリンエンジンにおいて、圧縮比を上げるほど理論熱効率も比例して上がる。だが、あまりに高い圧縮比では、シリンダー内で混合気が自然着火するノッキングなどが発生する。そうしたガソリンエンジンの基本特性を踏まえた上で、エンジンの運転中に圧縮比を可変することがガソリンエンジンの理想の形であると、長年に渡り言われてきた。
実際、「(一時期、日産と技術連携していた)メルセデス・ベンツも、圧縮比が可変するエンジンを試作したが量産が難しく実現していない」(日産エンジニア)という。日産では、こうした技術難関を、高強度部品の製造技術、高精度部品の加工技術、高精度部品のバラツキをコントロールする組立技術、さらに新材料と新工法にチャレンジすることで実現した。
技術的には、ピストンの上下運動を、U(アッパー)リンク、Lリンク(ローワーリンク)、Cリンク(コントロールリンク)の3部品の動きを、VCRアクチュエーターを介して作動させることで、圧縮比の可変を行っている。
そうした設計図の上での理論を、横浜工場における「匠」の技術を自動化した生産技術によって、リアルワールドでのパワートレインとして量産しているのだ。
次世代横浜工場はどうなる?
今回のプレゼンテーションで興味深かったのは、横浜工場がこれから目指す方向性を紹介した部分だ。そこには「技術開発機能を有した量産技術開発工場へ」とある。
さらに「電動化戦略を支える技術」として、軽量化、高効率化、コスト最適化(アルミ車体鋳物、モーター、磁石など)とした。ここでいう、「アルミ車体鋳物」とは、トヨタが「トヨタテクニカルワークショップ2023」で示した「ギガキャスト」に近い考え方であろう。
その詳細については、今回は明らかにならなったが、「(次世代)BEVのコスト最適化の選択肢のひとつとして、我々がまさに(今)取り組んでいるところ」と言うにとどめた。
その他、2024年から実施する全固体電池のパイロットラインについても記者からの質問に対して回答があった。
「(試作製造を)展開する場所を空けること、また工程設備を入れるためのエリアを整えることをすでに着手して(試作製造に向けて)進めている段階」としたほか、日産の総合研究所に横浜工場の関係者が全固体電池製造に関する協議も進めていることを明らかにした。
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