設計は主に要求の高い欧州で
ホンダの定番ハッチバック、シビックが11代目へモデルチェンジした。英国では2022年10月から納車が始まる予定だが、今回はひと足先に、この地で試乗させてもらうことができた。
【画像】低いフォルムが生むメリット多数 新型ホンダ・シビック 競合ハッチバックと写真で比較 全131枚
11代目になっても、世界各国で販売されるグローバルモデルではある。だが、設計は専ら要求の高い欧州で進められており、英国の一般道との愛称も良いと考えられる。
英国価格は、2万9595ポンド(約488万円)から3万2995ポンド(約544万円)。トリムグレードは3種類が用意されている。ボディサイズは、全長が4550mmありCセグメントでは最長。全高は1415mmで、Cセグメントのなかで最も低い。
近年はクロスオーバーやSUVへ多くの市民が流れており、フォードにフォーカスのモデルチェンジを考えさせるほど。シビックのフォルムが従来的に感じられることは確かだ。
英国へ導入されるのは、ガソリンエンジンにe:HEVと呼ばれる電動化技術が組み合わされたハイブリッドのみ。CVTなどのトランスミッションは、驚くことに搭載されていない。高性能なタイプRがやって来るまで、このパワートレイン1本で販売される。
速度上昇とともにエンジンの回転数が上下
主力としてシビックを走らせるのは、183psを発揮する駆動用モーター。143psを発生するガソリンエンジンは2.0Lの自然吸気で、基本的には発電が主な役割となる。
システムとしてはホンダ・ジャズ(フィット)やHR-Vのハイブリッドと同じだが、シビックの場合は駆動用モーターが遥かにパワフルで、エンジンが走行へ直接関わる機会は少ない。日常的な条件で走っている限り、フロントタイヤへはパワーを伝えない。
ガソリンエンジンが発電から駆動へ役目を切り替えるのは、高速走行などの高負荷時。クラッチが繋がり、固定レシオのギアへパワーが伝えられる。
エンジンが発電に徹している条件では、スピードなどと関係なく静かに始動。加速時はATが変速を繰り返すように、速度の上昇とともにエンジンの回転数を上下させる制御が働き、サウンドも響いてくる。やや反応が遅れ気味だが。
一方で、ステアリングホイール裏のパドルを引くと、回生ブレーキの強さが変化する。メーターパネルにはレブカウンターが付いていて、スポーツモードも選べる。この組み合わせに、不自然な印象がないわけではない。
駆動用バッテリーは、ケーブルをつないで充電することはできない。しかし、バッテリーEV(BEV)に乗り慣れていない限り不満は感じないだろう。燃費はすこぶる良く、気張らずに21km/L以上の結果が得られる。
BEVのように滑らかな加速 広く好印象な車内
通常なら駆動用モーターだけで発進するため、とても滑らかに加速する。いつエンジンが介入して走りをアシストするのか、タイミングを理解することはできなかった。少なくともインフォテイメント用のモニターには、稼働状態がグラフィックで表示される。
市街地では、BEVのように滑らか。数字以上に速く感じられ、0-100km/h加速はトリムグレードに応じて7.8秒から8.1秒がうたわれる。
新しいモデルとして、ダッシュボード中央には例によって大きなタッチモニターが据えられる。実際に押せるハードボタンも多くレイアウトされ、ライバルより遥かに扱いやすい。
エアコンの操作時は、タッチモニターへ触れる必要はない。パーキングセンサーやメーターの調光ダイヤルにも、実際に押せるスイッチが採用されている。
インフォテイメント・システム自体は、ライバルより操作性で劣る。だが、スマートフォンとのミラーリングは簡単だから、充分に補える。
フロントシートはサイズが大きくゆったり座れる。丁度いいドライビングポジションも探しやすい。リアシート側の空間にもゆとりがある。荷室容量は820Lから1220Lと、こちらも広い。
荷室のトノカバーは、奥から手前に引き出すのではなく、左右に展開するのが新しい。リアシート側まで腕を伸ばす必要がなく、コンパクトで、ホンダらしいアイテムといえる。リアワイパーもちゃんとある。
SUVの流行に疑問を抱かせる仕上がり
シンプルで車高の低いハッチバックは魅力的だ。シビックはとても運転しやすい。ステアリングホイールの操作へ、正確で滑らかに反応するし、重み付けも丁度いい。
乗り心地も素晴らしいといって良いだろう。鋭い隆起部分を通過しても、しなやかに入力を丸め込んでくれる。高速でワダチを横切っても、ボディを大きく揺さぶることなく振動を沈めていた。
Cセグメントのハッチバックのなかで、新型シビックはドライバーとの親和性が高いモデルに加えられる。最近試乗した、キア・シードやシトロエンC5 Xでの優れた印象を呼び起こさせるものでもあった。
全高の低いプロポーションには、運動神経や燃費など多くのメリットがあることを証明している。全高が高くなると空気抵抗も増え、それだけで優れた燃費は得にくい。SUVの流行に疑問を抱かせる仕上がりだと思う。
ホンダ・シビック e:HEV アドバンス(英国仕様)のスペック
英国価格:3万2995ポンド(約544万円)
全長:4550mm
全幅:1800mm
全高:1415mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:8.1秒
燃費:20.0km/L
CO2排出量:114g/km
車両重量:1533kg
パワートレイン:直列4気筒1993cc自然吸気+ツイン電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:183ps(システム総合)
最大トルク:32.0kg-m(システム総合)
ギアボックス:シングルスピード
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