ロー&ワイドなフォルムにシザーズドア
MGの創業は1924年に遡るが、2005年以降は中国資本へ変わり、MG TFの生産終了後はスポーツカーと縁遠いブランドになっていた。しかし、100周年を節目に2シーターのロードスターが復活した。電動パワートレインを積み、比較的お手頃な価格で。
【画像】ロー&ワイドなボディにシザーズドア MGサイバースター 内燃エンジンのロードスターと比較 MG 4も 全126枚
サイバースターの着想は、2017年。ロンドンのデザインチームが、MG Bの現代的な姿を描いたことがキッカケだった。当初は自主的なプロジェクトで、COVID-19の流行により、開発中止へ追い込まれそうな危機もあったという。
ところが、上海モーターショーへ出展されたコンセプトカーの反響を知り、MGを傘下にするSAICモーターの会長は即座に量産化を決断したとか。市民が声をあげることは、重要なのだ。
スタイリングを担ったのは、カール・ゴッサム氏。クラシックなスポーツカーのプロポーションでありつつ、明確な電気自動車としてのメッセージを表現することが目指された。
全長は、マツダMX-5(ロードスター)より500mm以上長い、4535mm。全幅は1913mmもあるが、デザイナーの狙いは成功したように見える。フォルムはロー&ワイド。バッテリーEVにありがちな、腰高感は回避できている。
これを叶えたのが、厚みが110mmしかない駆動用バッテリー。ホイールベース間に収まり、オーバーハングも短い。
実際、現代版のMG Bには見えないとしても、電動スーパーカーのようには映るはず。シザーズドアを備え、リアは大きなディフューザーで持ち上げられている。矢印に光るウインカーも悪くない。
ベースグレードは後輪駆動で339ps 四駆は510ps
英国価格は、約5万5000ポンド(約1100万円)から。高コストなバッテリーEVで、この値段を叶えたことへ驚かずにいられないが、既存技術が巧みに流用されている。
プラットフォームは、同じMGのクロスオーバー、4 EVと共有。駆動用モーターも同一だという。ステアリング・システムはボッシュ社、ブレーキはブレンボ社とコンチネンタル社による共同開発。タイヤは、バッテリーEV用のピレリPゼロを履く。
開発テストは、グレートブリテン島でも積極的に実施された。パワートレインや運転支援システムだけでなく、乗り心地や操縦性も、しっかり煮詰められたようだ。
英国の技術者は、低いシートポジションに調整可能なランバーサポート、ワンペダルドライブ・モードの必要性、ウインドディフレクターの有効性、ゴルフクラブが入る荷室の重要性を提案。それらが盛り込まれた。
それでも着座位置は高めで、駆動用バッテリーの上に乗っている感じは否めない。180cm以上の身長では、走行時に風の巻き込みをかなり感じるようでもある。
ベースグレードとなるサイバースター・トロフィーは、後輪駆動のシングルモーター。最高出力は339ps、最大トルクは48.3kg-mを発揮し、価格で並ぶポルシェ718ボクスターより僅かに力強い。
5000ポンド(約100万円)ほどお高いサイバースターGTは、フロント側にも駆動用モーターが追加される四輪駆動で、510psと73.8kg-mへ上昇。0-100km/h加速は3.2秒で、動力性能も電動スーパーカーと呼べる水準にある。
全開時は一瞬混乱するほど強力なGT
インテリアの洗練度は高く、センターコンソールには、車両の設定やエアコンを操作するタッチモニター。ドライバー正面にはメーター用モニターがあり、その両脇にも小さなタッチモニターが並ぶ。
左側はナビやオーデイオ用で、右側はそれ以外の車載機能用。ただし、ステアリングホイールの角度を調整しても、両脇のタッチモニターは大部分がリムに隠れてしまう。
市場の好みに合わせ、モニターへ表示されるグラフィックは、過度なアニメーションが省かれた。インフォテインメントの使いやすさは改善され、歩行者への近接警告音も落ち着いたものになった。
シートには合成皮革が張られ、座り心地は称賛したいレベル。傷んだ公道を4時間ほど運転したが、身体がこることはなかった。
公道へ出てみれば、サイバースター GTの運転のしやすさへ感心する。1984kgある車重から想像する以上に。試乗したグレートブリテン島北部のハイランド地方へ広がる公道を、素晴らしく安定して駆け回ってみせた。
コンフォート・モードでは、息が詰まるような加速の鋭さは抑えられる。スーパースポーツ・モードを選ぶと、全パワーが召喚される。このモードは、右側のパドルで切り替え可能。左側のパドルでは、回生ブレーキの強さを3段階から選べる。
1つ下のスポーツ・モードでも、一瞬混乱してしまうほどパワフル。トラック・モードはそれ以上で、公道での選択は慎重に判断した方がいい。
アウディのように安定 後輪駆動は一層秀逸
サスペンションは、フロントがダブルウィッシュボーン式で、リアが5リンク式。しなやかにタイヤは上下動し、柔らかすぎず硬すぎない。高速でコーナーへ侵入しても、ボディロールは最小限。舗装の剥がれた穴も、気に留める必要はなかった。
重心位置が低く、四輪駆動で、有能なタイヤを履くサイバースターGTはピタリと安定。カーブへ積極的に飛び込み、一気にパワーを展開しても、まったく動ぜず素早く旋回していく。脱出加速も極めて鋭い。
足取りが安定していて、旋回時のバランスはニュートラル。スポーツカーというより、グランドツアラー的ともいえる。前後の重量配分は、50:50だ。アウディTTSの印象にも近いとも感じたが、乗り心地はこちらの方がいい。
ステアリングホイールへ伝わる感触は薄いが、反応は正確。パワートレインはコンフォート、ステアリングはスポーツという組み合わせが筆者好みだった。また、4気筒エンジンと宇宙船のノイズを融合したような人工音も再生でき、意外と好印象だった。
そして、後輪駆動のサイバースター・トロフィーはさらに秀逸。車重は100kg軽く、一層機敏で、後輪駆動らしい自由度がある。コーナーでは荷重の変化や、リアタイヤが僅かにスライドする様子を感じ取れる。とにかく楽しい。
今回の電費は、積極的に運転したこともあり、平均で4.0km/kWh。それでも、320km程度の航続距離は得られる計算。丁寧に運転すれば、400km以上は1度の充電で走れるだろう。
これからも運転を楽しめると確信
サイバースターがスポーツカーの新基準を打ち立てた、とまではいえないとしても、運転体験の優れたバッテリーEVであることは間違いない。しばらくロードスターを作っていなかったMGとして、感動モノの仕上がりといえる。
爽快な走りでは、MX-5(ロードスター)に届いていない。洗練度では、718ボクスターに届いていない。しかし、正確な操縦性で現実的な価格の電動スポーツカーが、遂に誕生した。
ゲームチェンジャーではなくても、バッテリーEVとして、新たなランドマークであることは明らか。スポーツカーを愛するクルマ好きへ、これからも運転を楽しめると確信させてくれる1台だ。
◯:正確で安定した操縦性 グランドツアラーのように上質な乗り心地 後輪駆動はエンターテイメント性が高い 四輪駆動はスーパーカー級に速い
△:ロードスターへイメージするほどの軽快感はない 大きめのボディサイズ インフォテインメントと運転支援システムは運転の気を散らせる
MGサイバースター GT(英国仕様)のスペック
英国価格:5万9995ポンド(約1200万円)
全長:4535mm
全幅:1912mm
全高:1329mm
最高速度:201km/h
0-100km/h加速:3.2秒
航続距離:444km
電費:5.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1984kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:74.4kWh(実容量)
急速充電能力:144kW
最高出力:510ps
最大トルク:73.8kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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