寒冷地仕様車 知ってるようで……
text:Kouichi Kobuna(小鮒康一)
【画像】「ちょっと特殊な」トヨタ車 たくさん存在【内外装ディテール】 全283枚
11月7日の立冬を過ぎ、暦の上では冬となった現在、朝晩はすっかり冷え込むようになった。クルマが暖まるまでの時間が気になる季節となってきた。今年の冬は暖冬とはならないらしく、首都圏でも雪の可能性もありそうだ。
そんな寒い地域でクルマを購入する場合、気になるのが「寒冷地仕様」というメーカーオプションだ。
カタログでは大々的にアピールされていることが少ない装備だけに、詳細を知らないという人もいるのではないだろうか。
寒冷地仕様とは、その名の通り寒冷地=寒い地域でクルマを使用する上で、あると嬉しい装備を追加した仕様、ということになる。
といってもメーカーオプションであるから温暖な地域のユーザーが選択できないということはなく、逆に寒冷地のユーザーが選択しないということも可能だ(ただし北海道で新車販売されるトヨタ車は寒冷地仕様が標準装備となっており、車両価格もその分高くなっている)。
また、ホンダやスバル、マツダの車種(一部を除く)は寒冷地仕様の設定がないが、これは標準状態で寒冷地での使用を考慮した設計になっているからとのこと。
わざわざ選ぶ必要がないととるか、必要ないものが付いてくるととるかは人それぞれだろう。
寒冷地仕様 何が追加されるのか?
それでは、寒冷地仕様を選択するとどんな装備がプラスされるのだろうか?
実は一口に寒冷地仕様といっても、1万円以下のものから数万円のものまで、車種によってプラスされる装備は異なってくる。そのため、まずは代表的なものをご紹介しよう。
多くの寒冷地仕様車に備わるものとして、大容量のバッテリーやオルタネーター(発電機)、濃度が挙げられた冷却水、強力になった暖房(ヒーター性能の向上やリアヒーターダクト、シートヒーターなど)などが挙げられる。
このほか、ワイパーブレードの凍結防止のためにフロントウインドウのワイパー停止位置に熱線が入るワイパーデアイサーや、着雪時にもワイパーが稼働できるように大型化されたワイパーモーター、吹雪のときに後続車からの視認性を向上させるリアフォグランプなども比較的メジャーな寒冷地仕様の装備だろう。
最近一般的となってきたハイブリッド車は、暖房の熱源としてエンジンの余熱を使うことが多いため、暖房を使うとエンジンの始動時間が長くなり、燃費が悪化するという弱点がある。
そのため、寒冷地仕様を選ぶと電熱器を用いたPTCヒーターを備え、エンジンの始動する時間を短くしたり、排気熱を利用して冷却水を温める排気熱回収機を備える車種も存在している。
また、古い車種ではラジエータの冷えすぎを防ぐためにカバーが備わるものや、エンジンオイルを低粘度とするといった違いも存在していた。
なかでもハイエースは「プロ仕様」
前述したように北海道地区へは寒冷地仕様を標準装備するなど、寒冷地仕様に力を入れているトヨタは、車種によって特別な装備がプラスされることがある。
例えばスポーツカーである86には、フロントフェンダーとボディの隙間をシールしてドアヒンジ部の凍結防止に配慮する「フロントフェンダサイドパネルプロテクタ」が追加される。
そしてプリウスには飛び石や氷の塊によるボディへのキズを防ぐ「耐チップテープ」がリアドア下に装着される。
商用車のプロボックスでは立ち往生したときのために、リア側にも牽引フックが備わる充実ぶりだ。
極めつけは働くクルマとして高い評価と信頼を勝ち取っているハイエースだ。
まず、ボディカラーのコート数を増やすことで粉塵がボディに刺さってもサビにくくする処置がされている。
実は北海道など厳寒地域の一部では現在でもスパイクタイヤの仕様が認められており、粉塵が発生する可能性もゼロではないのである。
さらに車室内に砂やホコリが入るのを防ぐためにコーキングによってボディの隙間を埋める防塵処理や、アイドリング回転数を上げることで暖房効果を高める「マニュアルアイドルアップ」(ディーゼル車のみ)など、多くの専用装備がプラスされるのだ(最大15アイテム)。
ハイエースの場合、これだけの専用装備が追加されながら価格アップは3万円弱~(グレードによって異なる)なのだから、寒冷地以外のユーザーでも選択する価値はある。
逆に車種によっては、ほとんど特別な装備がプラスされないものも存在するので、新車を検討する際は寒冷地仕様を選ぶとどんな装備がプラスされるか聞いてみるのが得策だろう。
一口に寒冷地仕様といっても、非常に奥が深いのだ。
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