BMWが本拠地のドイツ・ミュンヘンで“NEXT Gen”なるイベントを開いた。GenはGeneration=世代の略だから、テーマは“次世代”と考えていい。
環境問題、資源問題、過密する大都市、依然として少なからぬ数の犠牲者を生み出す交通事故と、自動車を取り巻く環境には難題が山積している。しかも、交通事故を除けばいずれの問題も今後、より深刻な事態を招くと予想される。そういった課題にBMWがどうやって取り組んでいるのかを示すのが、このイベントの主旨である。
NEXT Genでは、新型「8シリーズ グランクーペ」や「M8」などが発表された。なるほど、自動運転技術や電動化など、このイベントでおこなわれた未来の自動車に対する技術的提案には興味深いものがあった。このうち自動運転技術に関しては後ほどくわしく説明するけれど、それ以外には未来のスーパースポーツカーに関するデザインを発表したり、「1シリーズ」、「X1」、「M8」、「8シリーズ グランクーペ」のワールドプレミアをおこなったりと、国際的な自動車ショーをしのぐほどの大ネタが数多く用意されていたのが印象的だった。
おかげで「こんなにたくさん新型車を発表しちゃって、2019年9月のフランクフルト・ショーは大丈夫?」なんて要らぬ心配をしたくなったが、BMW関係者は「大丈夫、心配にはおよびません」とどこ吹く風。もっとも、今年の東京モーターショについても話題になっているとおり、自動車メーカーのモーターショー離れは確実に進んでいて、それはフランクフルト・ショーもご多分に漏れないらしい。
新型8シリーズ グランクーペは、これまであった6シリーズ グランクーぺの後継モデル。駆動方式はFR(後輪駆動)ないしは電子制御式4WD「xDrive」から選べる。www.daniel-kraus.com8シリーズ グランクーペは、8シリーズ クーペの4ドア版。日本へは、2019年中に導入される。www.daniel-kraus.comインテリアは8シリーズ クーペとほぼおなじデザイン。メーターパネルはフルデジタルタイプ。ヘッドレスト一体型のリアシートは、2座独立タイプも選べる。かといって、“NEXT Gen”のようなメーカー独自のイベントがモーターショーに取って代わるかといえば、来場者数の規模からいってそれは難しそう。
ちなみに、“NEXT Gen”は3日間の予定で開催されたが、初日のメディア・デーに参加したのは200名程度。来場者数は合計でも1000名に満たないはずで、その点では数十万人の観客を集める国際自動車ショーには遠く及ばない。おそらく、今後自動車メーカーはモーターショーと独自イベントをうまくバランスさせながら発表の機会を探っていくことになるのだろう。
NEXT Genでは、ハイパフォーマンス・スポーツ・クーペのコンセプトカーも発表された。無人で動く7シリーズに乗る話をBMWの自動運転技術に戻したい。今回、彼らが行なったのは、自動運転技術のテスト用に開発した「7シリーズ」を使った一種のデモンストレーションで、タイトルは“A DRIVERLESS RIDE”。無理やり和訳すれば「無人運転乗車」といったところだ。
次世代の自動運転技術を搭載した最新の7シリーズ。Gudrun Muschalla私が体験したデモンストレーションは、おおむね次のような内容だった。
まず、イベントの説明員が手持ちのスマートフォンを操作すると、数10m離れたところに停まっていた7シリーズが無人のまま、スルスルと移動し、目の前に停車。おなじスマートフォンでもう1度操作すると、それまでロックされていたドアが解錠され、私たちが乗り込めるようになる。ドアがロックされたままやってくるのは、見知らぬ誰かにクルマを乗っ取られるのを防ぐ措置だという。
スマートフォンを使い、無人の7シリーズを呼び出せる。Gudrun Muschallaここで説明員は助手席に陣取り、私はリアシートに腰掛けるよう促される。つまり、引き続き運転席は無人のままである。ここで説明員が目的地を入力すると、7シリーズは再びスルスルと動き始めた。
この日の試乗コースは、“BMW WELT”と呼ぶ、BMWブランド・センターの敷地内に設定されたもので、一般公道ではない。つまり、道の形状はあらかじめ正確に把握できているうえ、コース上の交通状況はあらかじめプログラミングしておくことが可能。無人運転のデモンストレーションとしては、決して難易度は高くないといえる。
自動運転で進む7シリーズのリアシート。走行中の軌跡や、周囲の状況は、リアシート用のモニターで確認出来る。Gudrun Muschallaそれでもドライバーなしで走るクルマに乗っている感覚は新鮮というか不思議なものだった。7シリーズは10km/hほどのゆっくりしたペースで曲がりくねったコースを器用に通り抜け、横断歩道を歩行者が渡り始めるとその手前で停車。
歩行者が路上でグズグズしても、彼女が歩みすぎてゆくのを粘り強く待った。これらはすべて仕込まれた内容ではあったけれど、7シリーズの試作車はプログラムどおりにていねいに走り、曲がり、停まって、再び走り始めたのである。
横断歩行者を検知し、自動で停まる7シリーズ。Gudrun Muschalla最後、目的地に到着してわれわれは降車。例のスマートフォンで指示を受けた7シリーズは、再びもとの待機所に移動してデモンストレーションは終了した。
ちなみに試作車には9基のレーダー、5基のレーザースキャナー、8基のカメラが搭載されていた。もちろんこれはあくまでも試作車で、BMWの自動運転車がこのとおりの仕様になるとは限らない。なお、BMWは同様の試作車を合計で160台ほど製作し、自動運転技術の研究に励んでいるという。
BMWは「これがレベル4の自動運転に関するデモンストレーションである」と、説明した。レベル4は「限定された地域での完全自動運転」を意味するので、まさにそのとおり。自動運転はこの上に「どんな道でも完全に自動運転を遂行」するレベル5が存在するけれど、レベル4も限りなく完璧に近い自動運転技術といって間違いない。
なぜ、“自動運転”にこだわるのか?では、どうして自動車メーカーは自動運転技術をかくも熱心に開発しているのか?
理由はいくつかある。
そのなかでもっとも重要なのは交通事故の防止だろう。現在、起きている自動車事故の多くはドライバーの判断ミス、操作ミスが原因とされる。人間は必ずミスをする。だったら、それを機械に置き換えれば事故は減るだろうというのが、この考え方の基本にある。もちろん、それは理論上可能だ。
自動運転技術の進化に伴い、IT関連の技術も進化している。たとえば、スマートフォンがキー代わりになるシステムも開発されている。Enes Kucevicただし、事故が起きそうになったとき、ハンドルを右に切るのが正しいのか、それとも左が正しいのか? アクセルを踏むのがいいのか、それともブレーキを踏んだほうがいいのかは、意外と簡単には判断できない。そこで、地球上で起こりうる自動車事故のパターンをすべてコンピューター上でシミュレーションし、それぞれについて判定を下す作業が、いくつかの自動車メーカーやパーツサプライヤーなどの手でおこなわれている。
一説によると、コンピューター上のシミュレーションとはいえ、延べ20億kmの走行データがこの判定には必要という。なんとも気の遠くなるような作業だ。
「自動運転こそは究極のラグジュアリー」という発想からその技術開発に取り組む自動車メーカーもある。ロールス・ロイスはその典型だろう。しかも、オーナーの気分が乗ったら、いつでも手動運転に切り替えられる。いわば便利機能、ぜいたく装備としての自動運転である。
自動運転技術搭載の7シリーズは、目的地があらかじめ設定されていたゆえ、リアシートの専用モニターをタッチするだけで、自動で動いた。Gudrun Muschalla省力化も自動運転の重要なテーマだ。現在、バス会社やタクシー会社は運転手の人手不足に苦しんでいる。いっぽう、「ウーバー」や「リフト」といった自動車配車システムが欧米で人気を博しているものの、両社とも人件費がかさんで赤字に陥っている。無人運転が開発されれば事業の黒字化が見込まれるかもしれない。
いずれにせよ、各自動車メーカーは積極的に自動運転技術の開発に取り組んでいる。ちなみに本格的な自動運転の第一歩とされるレベル3(基本的にシステムがすべての運転操作を請け負うが、状況によっては人間が運転操作を引き継がなければいけない自動運転技術)のクルマは、早ければ2021年にも市販化される見通し。
これが登場するまでは、どんな便利機能であっても事故が起きたときの最終責任はすべて人間であるドライバーが追わなければならないことを肝に銘じておいていただきたい。
文・大谷達也
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