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初試乗 ポールスター1プロトタイプ 4気筒+ツインチャージャー+ツインモーター 608ps

掲載 更新
初試乗 ポールスター1プロトタイプ 4気筒+ツインチャージャー+ツインモーター 608ps

もくじ

どんなクルマ?
ー ガソリンエンジンにツインチャージャーのプラグインハイブリッド
ー 生産予定台数は1500台
ー スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ(SPA)を採用
どんな感じ?
ー ライバルが少なくないラグジュアリー・クーペのカテゴリー
ー コンチネンタルGTレベルで突進も可能
ー 意外なほどに運転が楽しい
「買い」か?
ー プロトタイプですら相当に興味深い
スペック
ー ポールスター1プロトタイプのスペック

VWの第3章の幕開け 初試乗 フォルクスワーゲンID 3プロトタイプ 58kWh

どんなクルマ?

ガソリンエンジンにツインチャージャーのプラグインハイブリッド

読者はすべてのクルマに訪れるであろう、電動化をどの様に受け止めているだろうか。少し心配している向きには朗報がある。608psを発生させるプラグイン・ハイブリッドを搭載したポールスター1という存在だ。2.0ℓの4気筒ガソリンエンジンは、スーパーチャージャーとターボチャージャーによって過給され、さらにスタータージェネレーターを備える。

2基の電動モーターを搭載し、シャシーはスチールとカーボンファイバーとが適材適所で用いられている。大きなボンネットはカーボンファイバー製。リアには新開発のリーフスプリングが横置きされている。ラグジュアリーなクーペボディをまとい、価格は13万9000ポンド(1890万円)なり。

ラグジュアリーではあるが、ボンネットを開けたり、リアタイヤの後ろを調べたり、ジャッキアップしたりして隅々まで観察する必要がある。オーリンズ製のダンパーは22段階の調整式。困惑するほど新しい、ポールスター1を歓迎しよう。かつてBMW i8が興味深く受け止められている時代があったが、2019年の今は間違いなくこのポールスター1だ。

成り立ち自体からして面白い。そもそもポールスターはメーカーとは独立した、ボルボのクルマを使用したレースチームでありチューニングメーカーだった。後にボルボによって買収され、他のメーカーがそうするように、ボルボの高性能モデルに与えられるブランドとなった。そして現在は、独立した高性能な電動化モデルブランドであり、ボルボと中国のジーリーホールディングによって所有されている。ジーリーホールディングは中国の複合企業、いわゆるコングロマリットであり、ボルボを所有する会社でもある。

生産予定台数は1500台

少し複雑だが、この支配関係は重要な要素。ポールスターはボルボからは独自した研究開発部門を持ち、独自に利益を求める体勢だということ。英国コベントリーに技術センターの支部を設けることも可能なのだ。つまりボルボとは関係なく、「1」とは異なるハイテク満載の奇妙なクルマをボスに提案して、「量産してみよう」という回答を得ることも不可能ではないということ。

ポールスター1のオリジナルが登場したのは、2013年。その時はまだボルボ・コンセプト・クーペという名前だった。XC90を筆頭にすべてのモデルへと展開された、新しいボルボ流のデザイン言語を打ち出したクルマでもあった。

発表当時、ボルボはコンセプト・クーペの量産化に関しては言及しなかった。しかしそのデザイナーだったトーマス・インゲンラスは、ポールスター・モデルとしての可能性を見出すことになる。トーマス・インゲンラスはポールスター社のCEOとなっている。

今回ご紹介するポールスター1の方は、極めて高次元のパフォーマンスとラグジュアリーさを兼ね備え、贅沢品といえる価格を下げつつ、128kmの距離を電気の力だけで走行が可能。環境意識は充分に高い。

アナウンスによれば、ポールスター1の生産予定台数は1500台。すべてが左ハンドルとなり、英国を含む9カ国のみで販売される予定だ。クルマは中国で製造される。ポールスター1に限ってはプラグイン・ハイブリッドだが、それ以降のクルマは純EVとなる見込み。そちらのクルマはより多くの国で購入が可能となり、システムも単純化され、価格も手の届きやすいものになるだろう。

スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ(SPA)を採用

プラットフォームは、ボルボのスケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ(SPA)が採用されている。ボルボ60シリーズ以上のモデルに用いられている実力派だ。全長はわずか、というべきか、4.5mで、SPAを採用するモデルの中では小さい部類に入る。さらにホイールベース間の重量物は取り除かれ、カーボンファイバー製の部品によって置き換えられてある。

ボディ構造も、ルーフやピラー周りはカーボンファイバーが用いられる。すべてのボディパネルやバンパーはプラスティック素材が採用され、修復費用の軽減につなげている。コンポジット素材は効果で扱いも難しいが、造形の自由度は高く、まるでかつてのボルボP1800クーペを彷彿とさせるようなシャープなリアフェンダー周りに活かされている。デザイナーのマックス・ミッソーニは「レトロではありません」 と説明する。

さらにコンポジット素材は剛性確保が用意で軽量化にもつながるところが重要。ポールスター1の場合、ボディ全体で見るとスチール製のものよりも軽量なうえに、40%ほど剛性は高いという。

2基のモーターはリアにマウントされ、ツイン・チャージャーで加給されモーターでのアシストも加わるエンジンと、34kWhのバッテリーなどはクルマの中央下部と後席背面にレイアウト。2070mmも全幅のあるクーペボディだが、リアシートは+2と呼べる小ささに留まる。また軽量化に努めていながら、車重はクロスオーバーでもないのに2350kgに達している。しかし、608psと101.8kg-mという豪腕が、クルマの運動神経を支える。

予習が長くなったが、プロトタイプの味見と行こう。

どんな感じ?

ライバルが少なくないラグジュアリー・クーペのカテゴリー

走行パフォーマンスと価格との組合せだけで見ると、ポールスター1には多くのライバルが存在することがわかる。メルセデス・ベンツSLやメルセデス-AMG GT、ベントレー・コンチネンタルGTやポルシェ911ターボなど個性豊かなモデルが揃う。

面白いことにそのすべてがオリジナリティあふれる存在だ。ポールスター1のドライブトレインより単純だったり、複雑だったり、スペック的に勝っていたり劣っていたり。見事に、あえて意図的に、ハイパフォーマンス・クーペとして違う仕上がりが与えられている。

「1」の内側から見てみよう。ポールスターは独立したブランドではあるが、インテリアの構造自体はボルボ。むしろ良いことずくめかもしれない。ボルボのインテリアを度ここまで豪奢に仕立てることができるのか疑問にも感じていた。しかし、カーボンファイバー製の化粧パネルがあしらわれ、今まで以上に上質なレザーで、丁寧に覆われている。13万9000ポンド(1890万円)という価格に、富裕層も納得できるだろう。

なお、この試乗車はまだあくまでもプロトタイプ。まだ用いられている部材の完成度や組み立て精度は完璧というわけではない。量産に至るまでにこれから一層の改善が図られて、本来の姿になるはず。しかし現段階でも仕上がりで劣る量産車すら思い浮かぶほど、水準は高いと思う。

コンチネンタルGTレベルで突進も可能

車内空間の雰囲気は、高級感が漂う。フロントシートのサイズは大きく、ドライビングポジションも快適。リアシートは+2をうたっているだけあって小さい。ラゲッジスペースも上質に仕立てられているが、ちょうどリアシートの背もたれ背面内に配されたコネクターや配線が、透明のパネル越しに見えるようになっている。バック・トゥ・ザ・フューチャーのフレックスキャパシターのようだ。

よって、リアシートの背もたれは可倒式ではなく、実用性はクーペの中でベストクラス、とはいえないだろう。だが、パーソナルクーペと呼べるクルマだし、考え方はオーナー次第だとは思う。

ボルボ・ライクなスタートボタンを回し目覚めさせる。クルマの走行モードは複数用意され、フルEVから、エンジンも常時起動状態の4輪駆動モードまで、スクロールで選べる。エグゾースト・パイプから排気ガスが出ないモードであっても、高速道路を活発に走行するには充分な動力を備えている。エンジンの力も存分に発揮させれば、コンチネンタルGTレベルの速さで突進も可能だ。

乗り心地とハンドリングの設定には幅が設けてある。工場の出荷時では、22段階に調整できるオーリンズ製のデュアルフロー・バルブを備えたダンパーの減衰力は、フロントが9、リアが10に設定されるそうだ。恐らくこの状態で殆のユーザーは不満を感じないだろう。特注のピレリ製タイヤは扁平率30で、21インチと攻めたサイズだが、充分に柔軟な乗り心地を提供してくれる。

意外なほどに運転が楽しい

標準のままでも、小さな起伏などはエアスプリングの共振を生むことなく、極めてスムーズにいなす能力さえ備えている。加えて驚かされるのが、ボディロールの少なさと車重を感じさせない巧妙なボディコントロール性。並外れた脚さばきだ。このまま量産されれば、EVやPHEVシステムを採用したクルマの中で、最も優れたドライバーズカーと呼べるだろう。

アダプティブ・ダンパーではなく、このオーリンズ製のダンパーを採用したという点は、いかにもポールスターらしいチョイスともいえる。少しマニアっぽくもあり、高価なアイテムだ。ステアリングの設定は変えられない。スピード域を問わず適度な重さがあり、安定性の高い中立付近から切り込んでいくに連れて、軽さが増していく。

これらのメカニズムのセットアップは、エンジニアの好みによって設定された印象が強い。リスナーのリクエストを受け付けない、洋楽ロック専門のFMラジオ番組的とでもいえようか。

クルマの仕上がりはあくまでも一般道にフォーカスが合わされている。リアタイヤに作用するトルクベクタリング機能は、穏やかにコーナリングしている時でも手助けをしてくれ、外側のタイヤに駆動力を欠けることで機敏性を高めている。

エンジニアによれば、トルクベクタリングの効きはほとんど観取できない、と話してはいたが、仮に機能していなければ、ドライバーはきっと気づくだろう。ここまでの車重を持ちながら、これほど俊敏な身のこなしをするクルマは、極めて限られている。すべてがハイレベルで統合されており、意外なほどに運転の楽しさを享受できるクルマだ。

「買い」か?

プロトタイプですら相当に興味深い

ポールスター1は、まだ完成した量産モデルではないから、まだ具体的な評価を与えるのは尚早ではある。ラグジュアリーなハイパフォーマンス・クーペという括りで見れば、選択肢として並ぶモデルは少なくはない。しかし、ここまで複雑なドライブトレインを持ち、走る楽しさを備え、徹底的な仕上がりを獲得しているクルマは少ない。

興味を持つひとがいても、持たないひとがいても、それは受け止め方次第ではある。しかし、わたしは相当に強い興味を抱いたことは、間違いない。

ポールスター1プロトタイプのスペック

■価格 13万9000ポンド(1890万円)
■全長×全幅×全高 4585✕1935✕1352mm
■最高速度 249km/h
0-100km/h加速 4.0秒
■燃費 ー
■CO2排出量 ー
■乾燥重量 2350kg
■パワートレイン 直列4気筒1969ccターボチャージャー+スーパーチャージャー+ツインモーター+ISG
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 608ps
■最大トルク 101.8kg-m
■ギアボックス 8速オートマティック

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