■慣らし運転とはいったいなに?
バイクの慣らし運転については、販売店のスタッフから説明を受ける場合もありますが、バイクの特徴や操作方法をメインに説明され、慣らし運転には触れられずに納車されるケースもあるようです。「初めて乗る車種だから慣れるまでゆっくり丁寧に乗る」といった認識をしている人もいるようですが、慣らし運転はただ安全に走行すれば良いだけではありません。
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慣らし運転は、ライダーがバイクに慣れるのではなく、バイクのポテンシャルを最大限に引き出すための準備運動のようなものです。バイクの取扱説明書にも記載されており、多くのバイクメーカーが推奨している運転方法となります。
カワサキによる慣らし運転については「最初の1000kmを走行するまでは、下表のエンジン回転速度以下でならし運転をしてください。慣らし運転を行うと車の性能を維持し寿命を延ばします。」とアナウンスされており、399cc以下のエンジンでは走行距離0~200kmまで4000rpm。200~350kmは6,000rpm。350~1,000kmは控えめな運転が必要とされています。また、必要に応じては決められた回転数を一時的に超えることは問題ありませんが、不要な空吹かし、急加速、急減速はしないようにとされています。
ホンダの場合は「現在の車は、エンジンやその他の部品精度が向上しているため、慣らし運転を行う必要はありません。しかし、エンジンや駆動系の保護の為には、以下の期間中は急発進や急加速を避け、控えめな運転をしてください。」とされており、50ccのスクーター(ジャイロ含む)は走行距離100km、その他のバイク(50cc含む)は走行距離500kmまでは控えめに運転するようにアナウンスされています。
■慣らし運転にはどのような効果があるの?
慣らし運転にはおもに3つの役割があり、最も重要視されているのはエンジン内部で使用されている金属部品同士を馴染ませることです。エンジンに無理なく負荷をかけて金属同士を適度に擦り合わせることで、部品同士のあたり面を最適な状態に仕上げていきます。その際に発生する微細な削りカスやバリなどはオイルでキャッチし、初めてのオイル交換で回収することでエンジン内部に傷を付けないといった効果も生まれます。
2つ目の役割は、ネジの初期緩みを確認することです。製造段階で適正トルクによって締められたはずのネジであっても、走行時の振動によって緩んでしまうことがまれにあります。言い換えると、一定の距離を走行しても緩まないネジは、その後も緩む可能性が少ないと言えるでしょう。ネジの初期緩みは新車購入時からの初回点検の項目にも含まれているため、通常はこの点検で確認作業が行われています。
3つ目の役割には、タイヤと制動部品の慣らし作業となります。タイヤに関しては「皮むき」と呼ばれ、新品タイヤが路面になじむように接地面を一皮むくといった作業が必要となります。製造過程でタイヤを型から取り出しやすくするために薬品が使用されており、本来のグリップを発揮するためにはその薬品を落とす必要があります。薬品を落とすためには慣らし走行が不可欠となり、もし皮むきをせずに走行してしまうとタイヤがスリップしやすく、転倒のリスクが高まってしまうのです。
また、ブレーキ関係に関してはパッドとローターのあたり面を馴染ませることで、本来の制動力を発揮させる効果があります。
※ ※ ※
一般的に行われている慣らし運転の方法をまとめると、走行距離が1,000kmまでは決められた回転数以下で抑え、急加速や急発進はせずに徐々に回転数を上げていくことがポイントとなります。しかしながら、技術が進化した近年のエンジンには慣らし運転は必要ないといった考えがあるもの事実で、慣らし運転の必要性を記載していないメーカーもあるようです。
また、欧米などでは回転数のアップダウンを繰り返し、減速時はアクセルを全閉にしてエンジンブレーキを使用し、エンジンに負荷をかけるといったハードな慣らし運転も存在しています。日本では、慣らし運転はしないよりはした方がいいと考えが根付いてはいるものの、実際のところバイクの性能や寿命に違いが生まれるのか、ライダーが実感できるのは難しいのかもしれません。
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