「所得上がらない」を検証
最近は新型車が登場すると「所得は上がらないのに、クルマは値上げされている。買えるワケがないでしょ」というコメントを見かける。
<span>【画像】いまの売れ筋コンパクト【ノート/フィット/ヤリス/アクアを比較】 全194枚</span>
本当だろうか? 具体的に検証してみたい。
まずは所得について考える。
今まで日本の平均所得が最も高かった時期は、1990年代の前半から中盤だ。
バブル経済は1990年代の初頭に崩壊したが、所得は維持されて、1994年には約664万円のピークを迎えた。
この後、1990年代の終盤になると急速に下がり始め、2010年代の前半は500万円少々まで落ち込んだ。
約10年間で、約150万円(比率に換算すると20%以上)もの所得減少になっている。
この背景には、2008年に発生したリーマンショックによる世界的な景気悪化もあった。
その後は平均所得はプラスに転じたが、2018年の時点で550万円少々だ。
ピークだった1994年に比べると、依然として100万円以上も少ない。比率に換算すると約17%の減少が続いている。
このような所得推移に伴って、クルマの売れ行きも下がった。1990年に国内の新車販売台数は778万台のピークに達したが、2010年には496万台に減り、2020年はコロナ禍の影響も受けて460万台であった。30年前の59%にとどまる。
このように「所得は上がらない」どころか、27年前に比べると大幅に下がった。
それに伴ってクルマの売れ行きも伸び悩んでいる。
クルマの値上げされている?
平均所得がピークを迎えた1994年の日本車の価格を見ると、初代ワゴンR RXは108万3000円であった。
現行ワゴンRハイブリッドFXは128万400円だから、比率に換算すると今は約18%上乗せされた。
初代セレナFXリミテッドは、1994年の時点で226万3000円であった。
今の売れ筋グレードになる標準ボディのXVは273万6800円だから、現行型の価格は約20%値上げされた。
初代オデッセイのSは、205万5000円であった。
現行型は最も安価なアブソルートの8人乗りが349万5000円だから、価格は70%も高まっている。
1994年に販売されていた初代RAV4は、直列4気筒2Lエンジンを搭載するコンパクトなSUVで、価格は189万8000円であった。
現行型もノーマルエンジンは2Lだが、ボディは大幅に拡大されて3ナンバー車になり、最も安いXの価格は274万3000円だ。比率に換算すると45%値上げされた。
レガシィツーリングは、1994年には2代目が売られていた。
2000GTの価格は286万6000円だ。この後継車種とされるレヴォーグは、価格が最も安いGTならば310万2000円だ。値上げ幅は8%に収まっている。
このように車種によって違いはあるが、売れ筋のワゴンRやセレナで、販売の主力になるグレードの価格は約20%の上乗せだ。
27年前の1.2倍に増えている。
その一方で平均所得は20%少々減ったから「所得は上がらないのに、クルマは値上げされている」となるわけだ。ネットの書き込みを裏付けた。
なお値上げされた背景には、消費増税もある。
1994年頃の消費税率は3%で、しかも価格には含まれなかった。
今は10%の消費税を含めて価格を表示しているから、ますます割高になってしまう。
クルマは値上げ なぜ?
クルマが値上げされた1番の理由は、安全面を中心に機能や装備が充実したことだ。
1994年頃の日本車をみると、現在の乗用車の大半に装着される衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能は、まったく実用化されていない。
装着が義務付けられている横滑り防止装置も、日本車で最初に採用したのは1995年に発売された2代目クラウン・マジェスタだから、1994年の時点で装着車は存在しなかった。
そうなると実用化されていた安全装備は、四輪ABSとエアバッグ程度だ。
しかも当時の安全装備は価格が高く、1989年に発売されたアコード・インスパイア&ビーガーのオプション価格は、エアバッグ(運転席のみ)が17万1000円、四輪ABS+トラクションコントロールは19万8000円だった。
今では常識的に装着されるこの2つの安全装備が、両方ともにオプション装着すると、合計額は約37万円に達していた。
このような事情を考慮すると、今のクルマは当時に比べて価格を1.2倍以上に値上げしたが、機能と価格のバランスでは、むしろ割安になっている。
先に挙げたアコード・インスパイア&ビーガーの要領で安全装備の価格を上乗せしたら、横滑り防止装置、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能まで加えると、それだけで総額は100万円に達する。
またこのアコード・インスパイア&ビガーの10・15モード燃費は、直列5気筒2Lエンジンを搭載する4速AT車が9.3km/Lだった。
今のWLTCモード燃費に置き換えると7km/L前後だ。
一方、今のセダンのWLTCモード燃費は、直列4気筒2Lターボを搭載した動力性能の高いクラウンRSでも12.4km/Lだ。
環境技術と燃費性能の向上も考慮すると、今のクルマはさらに割安になる。
今のクルマは買い得?
クルマにとって交通事故は最も重大な欠点だから、今日の安全装備の充実は好ましい。
新しいクルマに乗り替えることで得られる1番のメリットも、安全性の向上だ。
古いクルマにも独特の味わいがあるが、安全性の向上はそれを上まわる。
しかも先に述べたとおり、設計の新しい今日のクルマは、安全装備を割安に装着している。
今のクルマは明らかに買い得になった。
ただし買い得になっても、安全装備の充実でクルマの価格が20%以上高まり、その一方で平均所得は20%少々減ると、ユーザーにとっては辛い。
今も昔も、クルマを買うときには、価格を200万円前後と考えることが多い。
とくに子供が就学年齢に達しているファミリーユーザーにはこの傾向が強く、かつてのミニバンの特別仕様車は、価格を200万円弱に設定していた。
マークII(生産を終えたマークXの前身)も、価格が200万円弱の特別仕様車を用意することが多かった。
それが今は値上げによって状況が変わり、200万円以下で購入できるのは、ヤリス1.5 Z(197万1000円)、フィット1.3ホーム(176万7700円)、ルーミー・カスタムG(191万4000円)、ヤリス・クロス1.5X(189万6000円)といったコンパクトカーやコンパクトSUV、あるいは軽自動車が中心だ。
ダウンサイジングする切実な事情
クルマの価格が高まり、所得が減れば、ユーザーとしては愛車を乗り替えるときにサイズを小さくするしかない。
「ダウンサイジング」という言葉には、賢い印象もあるが、実際はユーザーの切実な事情の上に成り立っている。
岸田文雄首相が賃上げに意欲を見せるが、実際に平均所得が高まるか否かは不透明だ。
そうなると今後もコンパクトカーやコンパクトSUV、軽自動車が好調に売られ続ける。
そしてクルマの値上げと所得の減少が続けば、仕方なく古いクルマに乗り続けるユーザーも増える。
初度登録(軽自動車は届け出)から13年を超えたクルマの増税は、直ちに廃止すべきだ。
これ以上、税金でユーザーを困らせるのはやめてもらいたい。
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みんなのコメント
まさにニッポン、ダメだこりゃ、って感じ。
そもそも、軽自動車だろうがカローラだろうが、四半世紀前やましてや昭和時代と同じ額面価格のままな訳ないじゃん!
一方、その間アンタの給料が上がってないのだとしたら、それは自分の選択・自分の責任なんで、それを他責するのはお門違いでしょう。
いい加減、文句ばかり垂れてないで、テメエの給料上げたり資産増やす方法考えて実行しろよな!!
ボーナスなし、40代独身おっさんばかりのヤフコメ、carviewあるあるですね